【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 「平和のみどりご」はどこに キョウカイバイオレット 2018年11月11日

 今回からメンバーの一員として参戦することになった。が、基本的に誰かの指図は受けない主義。群れるのもキライだからわたしはわたしのやり方で勝手にやらせてもらう。以後お見知りおきを……。

 ほとんどの商売には「かき入れ時」がある。夏のアイスクリーム屋さん、冬のおでん屋さん、バレンタインデーのチョコレート屋さんなど。かき入れ時は商品を大量に並べ、店員さんをやたら増やし、営業時間を拡大して、とにかく売りまくる。そういうのが毎年毎年繰り返される。よく店員さんたちがストライキを起こさないものだと感心する。わたしが店員だったら繁盛期を狙って休んでやるのだが……。

 さて、教会の「かき入れ時」はいつだろうか。断然クリスマスだろう。イースターもペンテコステもまだまだ知名度が低い。「一般人」はクリスマスと言えば教会を連想するのではないだろうか。キャンドルとかノエルとか聖歌隊のガウンとか……。その意味で、教会の敷居がちょっとだけ下がる、特別な時期がクリスマスなのかもしれない。

 クリスマスの時期になると、おそらくどの教会も、何らかのイベントを企画する。伝道集会とか、コンサートとか、パーティとか。教会を挙げてみんなでいろいろ準備する。結果、いつもより忙しくなる。知り合いの教会は、毎年クリスマスにミュージカルをやっている。夏のうちからオーディションを始めるという、本格的なものだ。11月に入ると練習が毎日になり、12月には合宿までする。衣装も小道具も力が入っていて、教会はまさにミュージカル一色になるのだ。

 でもそれで本番に未信者がどれくらい集まるかというと、ほとんど来ない。出演者の家族や友人が見に来るくらいで、あとは教会の関係者だけ。いったい何のためにやっているのか、と聞きたくなるが、そういう声は内部からは上がらないようだ。「かき入れ時」らしく忙しくはするが、「かき入れることができない」という残念な結果に終わっていることは、あまり重要ではないと。

 一方で、そこまで大したことができない(しない)教会もある。みんなで集まって、キャロルを一つか二つ歌って、牧師がクリスマスにちなんだメッセージを短くして、終わり。教会員の手作りケーキをみんなで食べて、メリークリスマスとあいさつして、帰路につく。

 わたしがよく覚えていて、また行きたいなと思うのは、後者のクリスマス。何もなかったけれど、温かかった。冬の夜の寒さを、ほんの少しだけ暖かく感じた。大掛かりなことは何もなかったけれど、少なくとも信徒は平和だった。クリスマスだから未信者をたくさん導こう、そのために何か大きなことをしよう、信徒が忙しくなって疲弊しても、それは仕方のない犠牲だ、などと安易に考えていないだろうか。

 クリスマスは「平和のみどりご」の誕生を祝うためのもの。その主体である教会の中に、果たして平和はあるだろうか。「平和のみどりご」は、そこにいるだろうか。そういうことを教会のみんなで考えながら、ケーキでもゆっくり食べる、のんびりしたクリスマスがあったらいいなとわたしは思う。

キョウカイバイオレット
 紫乃森ゲール(しのもり・げーる) 医療現場で傷つき病める人々を支え、代弁者として立つ看護系はぐれキリスト者。あらゆる差別、無理解、誤解と日々戦う。冷静と情熱の中間くらい。ツンデレ。武器:痛くない注射/必殺技:ナイチンゲール型四の字固め/弱点:パクチー

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