【東アジアのリアル】 中国の「台湾いじめ」を拒否! 「全民公投反併呑」デモ 高井ヘラー由紀 2018年11月11日

 周知のように「中華民国」台湾は1971年に国連を追放されて以来、国家承認の三要件(領土、国民、主権を保有すること)を完全に満たしているにもかかわらず、国際社会において国家として認められていない。かつて日本の植民地だった台湾は、1945年、日本の敗戦に伴って当時国際社会から中国を代表する政権として認められていた中国国民党政府に返還された。

 しかし国民党は間もなく中国本土における共産党との争いに敗れ、逃れた先の台湾を拠点として中国本土奪還をはかるも失敗、さらに国際社会における「唯一の中国正統政府」の座を中華人民共和国に奪われた。以来、台湾は実質的には国家でありながら国家として認められないという、宙ぶらりんの状態が続いてきた。

 台湾住民の意思にかかわらず台湾がこのように国際社会で翻弄されてきたことに対して、台湾生粋の教会である台湾基督長老教会は1970年代より抗議と批判の声を挙げてきた。1990年代に民主化を実現した台湾社会では言論の自由が確保され、「独立」を望む、あるいは少なくとも中国との「統一」を望まない台湾住民の意思が明らかになって久しい。

 そのような台湾の声に対して、中国は一貫して「台湾は中国の領土」であることを主張してきた。特に「中華民族の偉大な復興」を目指す習近平主席にとって、「中台統一」は相当重要視されている。2016年に民進党(独立志向)の蔡英文が台湾総統に就任してから台湾に対する締め付けは一層厳しくなり、中華民国(台湾)と国交を持つ世界の弱小国を次々に買収、また今年の夏には世界中の航空会社に対して、「台湾」の項目を「中国台湾(Taiwan, China)」表記に書き換えるよう圧力を加えた。目的を実現するためには戦争も辞さない構えであると見る専門家も少なくない。

 このような背景があって、台湾独立を志向する人々の間では中国による台湾侵略への危機感が強まっている。これまでも台湾の国連加盟を訴える団体は存在していたが、今年4月に改めて「喜樂島聯盟(「喜びの島」連盟)」が発足した。台湾が国際社会において正常な民主的国家として認められることを最終目標とし、独立の意思を問う国民投票、国連加盟の実現を目指している。

 この連盟の呼びかけで、去る10月20日、台北において「拒絕中國霸凌―全民公投反併呑(中国のいじめを拒絶し、併合を拒否する国民投票を)」をスローガンに大々的なデモが行われた。主催者側発表で13万人が参加したというこのデモは、2014年3月30日に行われた「ひまわり学生運動」の50万人デモに比べれば小規模かもしれない。しかし、学生による立法院占拠のような世間の注目をひく事件もなく行われたデモとしては、驚くべき動員力である。

2018年10月20日に台北で開催されたデモに参加する長老教会関係者(撮影=嘉義南門教会龍瑞華牧師)

 喜樂島聯盟の発起人は民間全民電視公司(フォルモサ・テレビ)理事長で、高雄市にある海埔長老教会(前回筆者が取り上げた教会)長老でもある郭倍宏、そして賛同人には李登輝元総統、陳水扁元総統、高俊明元そうそう長老教会総幹事など錚々たる顔ぶれが名を連ねる。この連盟は、長老教会が戒厳令時代の1977年に命がけで発表した「長老教会人権宣言」において述べられた「新而獨立的國家(新しい、そして独立した国家)」への願いと基本的にスタンスを同じくしている。長老教会も正式に賛同声明を出し、300名以上の長老教会牧師がデモに参加、「長老教会人権宣言」で述べられている「台湾の将来は台湾住民が決定すべき」との主張を再確認し、一同「要出頭天(台湾語:私たちは困難な状況を乗り越えて陽の目を見る、の意)」の歌を高らかに斉唱した。

高井ヘラー由紀
 たかい・ヘラー・ゆき 1969年ニューヨーク生まれ。国際基督教大学卒、同大学博士後期課程修了。ハーバード神学大学院ポスト・ドクトラル・フェロー、恵泉女学園大学非常勤講師、明治学院大学非常勤講師を経て、台湾南神神学院助理教授。日本基督教団信徒派遣宣教師。

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