「道徳の教科化」で比企敦子氏が講演 内面への介入と誘導を危惧 2018年12月1日

 日本基督教団神奈川教区婦人委員会と性差別問題特別委員会の共催による講演会が10月30日、同教団紅葉坂教会(横浜市西区)で開催された。川浦弥生氏(林間つきみ野教会)の開会礼拝説教「わたしの父は農夫である」に続き、比企敦子氏(日本キリスト教協議会=NCC=教育部総主事)が「道徳の教科化を問う――教会教育の歩みの検証と共に」と題して講演した。

 2018年4月から小学校で、来年は中学校で「特別の教科道徳」が評価を伴う正式な教科となる。1958年に道徳の時間が設置されたが、教科書はなく読み物としての教材を使用していた。戦後初めて道徳の検定教科書が出現したことになる。講演では、道徳の教科化の何が問題なのか、道徳教育の変遷とその背景、天皇制下での教会教育の歩みの検証がなされた。道徳の教科書には、文部科学省が決めた自由と規律、節度礼儀、公徳心、愛国心など22の徳目を盛り込まなければならず、「元気でがんばる良い子」「わがままを言わず決まりを守り、社会に奉仕する」子どもの理想像、家族愛や理想の家族像が提示されている。

 比企氏は具体的な教材内容を紹介。主な問題点として、「国家が子どもたちのこころの内面に介入し一定の方向へと誘導する点」「人権意識・ジェンダー平等や批判的視点が欠如している点」「道徳という教科を数値や文章で評価する点」を挙げた。特に問題を含む教科書会社(日本教科書、教育出版)は育鵬社と同系列にあり、「ヘイト本」なども出しているという。全国的に採択拒否の声が上がった結果、3地域のみの採択結果となった。現場の教員だけでなく市民の関心も高い。

 「道徳」の前身は戦前の「教育勅語」に立脚した「修身」だが、1948年に衆参両院で停止決議がなされている。10月2日、柴山昌彦文科相の「教育勅語を現代的にアレンジして教えていくことは検討に値する」という問題発言があったが、「教育勅語」を教育の場で用いることを容認した2017年3月の閣議決定と同一線上にあると言える。背景には「美しい日本をとりもどす」とする「新しい歴史教科書をつくる会」「日本会議」と現政権との親和性があるという。

 さらに、明治期からの教会教育の検証として、NCC教育部平和教育資料センターの歴史資料も紹介。天皇制に従順な日曜学校運動が大政翼賛体制に組み入れられ、戦争協力の道をたどる過程について、「明治期から政財界や宮内省による支援を受けて発展し、教育勅語によって教育された臣民の姿があった」と説明し、「日中戦争支持、日本基督教団号(戦闘機)奉納、皇室を基とする『愛国の精神』の称揚、『戦捷(せんしょう)建国記念母の運動』など、軍国少年少女を育てるために『母』が利用された。誰の『いのち』も軽んじられず、また捧げさせられたりしない『いのちを選ぶ教育』が求められる」と結んだ。(報告・沖田忠子=横浜港南台教会員)

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