【東アジアのリアル】 3・1運動100周年を目前にして 李 恵源 2018年12月1日

 来年2019年は、独立を訴え行われた3・1運動が起こって100年目にあたる。3・1運動は韓国の近現代史において非常に大きな意味をもつものであることから、現在韓国の各界各層においてその100周年記念行事の計画、準備が進められている。キリスト教界も例外ではない。

 1919年3月1日に始まった3・1運動は、朝鮮の自主独立を宣言した独立宣言書を発表し、その独立への意志を世界に知らしめるために朝鮮および中国や北米、ハワイ、沿海州などで展開された平和的デモ運動であった。50人以上が参加したデモだけでも1500回以上を数え、参加人数は約202万人であったと推計されている。当時の朝鮮の総人口は2000万人だったので、10%以上もの人が参加したことになる。

 3・1運動においてキリスト教が果たした役割は、大きく分けて三つある。一つ目は、準備段階において理念を提供したことであり、二つ目は、実施段階において組織と指導者を提供したことであり、三つ目は、運動が終わった後、当局が参加者を処罰する過程で苦難に耐えたことである。

 独立宣言書を起草した崔南善(チェ・ナムソン)はキリスト者ではなかったが、宣言書の基本理念である自由・平和・正義・平等は聖書から採ったものであると後に述べている。現行憲法の前文では、韓国が3・1運動の精神を継承する国であることが明らかにされているが、3・1運動時の理念は、今でも韓国人のうちに生きた精神として受け継がれているのである。

 3・1独立運動に先行して同年2月8日に東京で朝鮮人留学生らによって実施された2・8独立宣言を支援したのもキリスト教界であり、3・1運動の独立宣言書に署名した代表33人のうち16人がキリスト者であった。3・1独立運動が全国的に広がっていく上で決定的な役割を果たしたのも教会組織であった。また、3・1運動後に当局によって検挙された者のうちの17.6%は、総人口の1.5%しか占めていなかったキリスト者であった。

 3・1運動100周年を来年に控え、さまざまな記念行事が計画されている。代表的なエキュメニカル機関である韓国基督教教会協議会(NCCK)は、合同礼拝の開催、文書による「3・1独立運動100周年韓国キリスト者の告白と誓い」の発表、3・1青少年歴史学校の開校などを計画している。韓国キリスト教史の代表的な研究機関である韓国キリスト教歴史研究所は、今年11月3日に「3・1独立運動の地域的な展開とキリスト教」をテーマに学術シンポジウムを開催したが、来年には同様のテーマで書籍を出版する予定である。個教会レベルでも学術集会やフィールドワークなどが計画されている。

 日本においても在日本韓国YMCAが、2・8独立宣言や3・1運動に関する公開セミナーを昨年より連続開催し、来年2月には東京と大阪で2・8独立宣言100周年記念シンポジウムを開催する予定である。

 このような諸行事が一過性のものとして終わることなく、韓国のキリスト教が3・1精神、すなわち自由・平和・正義・平等の理念を真に継承し、それを韓国内外に広め続ける契機となればと願うものである。

 い・へうぉん 1980年、ドイツ生まれ。延世大学韓国基督教文化研究所専門研究員、上海大学宗教と中国社会研究所客員研究員。延世大学神学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院博士課程修了。神学博士(教会史)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。

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