世界最古のベツレヘム聖誕教会 壁画発見と修復の軌跡をたどる展示会 2018年12月25日

 現在、古代オリエント博物館(東京都豊島区)で、「ベツレヘム聖誕教会モザイク壁画の発見――甦りし天使たち」が開催されている。

 現存する教会で最古といわれるベツレヘム聖誕教会。躯体(ルビ:くたい)崩落の危険性から、2012年に世界遺産と同時に危機遺産として登録され、伊フェッラーラ大学が調査研究を行い、その指導の下、同国ピアチェンティ社が保存修復を担当している。16年には漆喰の壁体の下から12世紀作と考えられる、天使やイエスの脇腹の傷に指を入れるトマス像などのモザイクが発見され話題を呼んだ。同展示会では保存修復作業や発見の様子を映像や写真パネルで紹介している。

 この企画を担当したキリスト教考古学が専門の江添誠氏(国士舘大学イラク古代文化研究所展示室学芸員)に話を聞いた。

 聖誕教会は339年にコンスタンティヌス帝により建立、529年にサマリア人の反乱で焼失後、531年にユスティニアヌス帝により再建されたと考えられている。今回発見された天使像を含む身廊上部のモザイク壁画はギリシア語銘文によって、12世紀中ごろの作であることが分かっている。十字軍のエルサレム王国の戴冠式が同教会で行われたことにより、教会内がこれらのモザイクによって豪華に飾られたと考えられると同氏は言う。現在はギリシア正教、フランシスコ修道会、アルメニア使徒教会によって共同管理されている。

 「暗い回廊の聖誕教会は、これまでイエスの生誕した場所という認識だけだった。この度のモザイクの発見と修復で、教会の価値が大きく変わる。壁面に続いて、床からは教会建立の350年代のモザイクが発見され、現在修復中で来年の夏に完了予定。その後これらのモザイクに関する研究が開始される」と同氏。

 さらに「実際の壁画は10メートルほどのところにあるので見上げるのが大変だが、展示会では原寸大のモザイク画カラー写真を目線の高さで見ることができる」と、見どころを語った。

 江添氏の所属する国士舘大学イラク古代文化研究所は、16年に設立40年を迎えた。これを機に国内外の文化遺産の修復活動に関する展示を行うこととなり、今年4月から8月にかけて同研究所で聖誕教会の修復事業の模様を展示した。担当した江添氏が古代オリエント博物館館長の月本昭男氏(上智大学特任教授)と親交のあったことから今回の展示会開催が実現した。またピアチェンティ社で修復作業に従事している佐々木愛子氏の仲介で同社の全面協力を得、修復途中の動画も会場で見ることができる。展示写真はすべて、写真家エジスト・ニノ・チェッカテッリ氏の厚意によって提供された。

 会期は2019年2月4日まで。入館料は大人600円、高校、大学生500円、小学、中学生200円。小学~高校生は土日無料。詳細は古代オリエント博物館(℡03-3989-3491)まで。2019年1月25日には、関連講座「パレスチナにおけるビザンツ期、十字軍期の教会堂遺構」(講師=杉本智俊氏、慶應義塾大学教授)が開催される。

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