31年ぶりの新翻訳 『聖書協会共同訳』発売 読者からの反響続々 2018年12月25日

 カトリックとプロテスタント諸教会の協力による『新共同訳』以来、31年ぶりとなる新しい共同訳聖書『聖書 聖書協会共同訳』(以下、『聖書協会共同訳』)がいよいよ12月にお披露目となった。世界最大の聖書翻訳ネットワーク・聖書協会世界連盟(UBS)による最新の研究成果と、国内の聖書学者、日本語の専門家ら延べ148人の委員により、8年の歳月をかけて翻訳作業が行われた。さっそく発売と同時に買い求めた信徒、教職者らの間では「日本語としても読みやすい」「ずっと楽しみにしていた」「地図が豪華」などの反響が聞かれている。

 発行元である日本聖書協会は12月3日、日本基督教団銀座教会(東京都中央区)で記者会見を開き、同協会総主事の渡部信(まこと)氏、翻訳部主事補の島先克臣(かつおみ)氏が翻訳作業の過程や特長などについて改めて説明した。

 島先氏は、UBSと聖書翻訳のための非営利団体である国際SILが共同開発した翻訳支援ソフト「パラテキスト」の機能を紹介。遠隔地にいる複数の担当者が、原文と訳文、各種言語の翻訳を同一章節ごとに表示しながら同時に翻訳作業を進めることができるため、18年の歳月を要した『新共同訳』に比べ大幅に効率化することができたという。

 翻訳については、同協会の要請に応えた18の諸教派、団体による諮問会議が、「礼拝で用いることを主要な目的とする」「格調高く美しい日本語訳を目指す」「原典に忠実な翻訳を目指す」などを明記した「翻訳方針前文」を採択。オランダ語訳聖書の翻訳作業と、それが依拠した「スコポス理論」を参考に、読者対象と目的(ギリシア語で「スコポス」)に合わせて翻訳するという方針を採用したことが説明された。

「重い皮膚病」は「規定の病」へ
女性委員の意見も反映

 『聖書協会共同訳』の特長として、聖書協会訳の聖書としては初めて聖書全体に引照と注を付した点、固有名詞や書名は『新共同訳』に準拠した点(15語のみ変更)、巻末付録として、カラー聖書地図12葉、143語の用語解説を付した点などが挙げられている。

 特に聖書理解の助けとなるよう、並行記事、相似するテーマや教え、語句、説明などが載った聖書の他の部分を書名章節で示した引照は4万3333、底本を離れる場合の「異読」、他の翻訳聖書と解釈が大きく異なる場合の「別訳」、また、「言葉遊び」などを解説した注の数は4411に上る。

 他にも、『新共同訳』では90人の委員のうちわずか3人だった女性の比率が、今回は148人中34人と増加し、その意見を反映して「はしため」が「仕え女」に変更され、頻出していた「お前」も限定的に使用するなどの成果が上がっている。

 適切な訳語をめぐって「らい病」から「重い皮膚病」へと改訳されてきたヘブライ語「ツァラアト」(ギリシア語では「レプラ」)については、特定の病を指す差別的なニュアンスを避け、「律法で規定された病」との意味合いで「規定の病」と訳すことにした。また、「キリストへの信仰」と「キリストの真実」のいずれにも翻訳可能なギリシア語「ピスティス・クリストゥ」は、限定した部分に限って主格的属格の意味で訳すことを承認し、「キリストの真実」としつつ、「キリストへの信仰」との別訳が可能であることを欄外に注記した。

 会見当日の質疑では、「標準訳」という仮称について、他の翻訳を排除するかのような誤解を招きかねないため、「標準」を掲げることを避けたこと、『新共同訳』については需要がある限り、継続して出版活動を続けることなどが示された。

 渡部氏は「実際に読んでみると、文章が頭の中にスムーズに入ってくる。今後、皆さんの評価をいただきながら、さらに広く普及できれば」と期待を込めた。
今後、『聖書協会共同訳』の発行を記念する講演会・奉献式・感謝会を2月22日に日本基督教団銀座教会、コートヤード・マリオット銀座東武ホテルで、公開講演会「今を生きる私たちと神の言葉――なぜ聖書を翻訳し続けるのか」を2月23日、上智大学四谷キャンパスで開催する。いずれも、オランダから「スコポス理論」の主唱者でもあるローレンス・デ・ヴリース氏(アムステルダム自由大学教授)を講師に招く。

 また、2019年9月にA6判(小型)、B6判(中型)の発行を予定。web版も10月末を目指して検討を進めているという。2005年の調査では7割の教会が「新共同訳」を使用している。信徒の高齢化、教会財政の逼迫が課題となる中、新しい翻訳聖書への移行、浸透をどこまで進められるかが課題となりそうだ。

*『聖書協会共同訳』巻末の用語解説より抜粋
■規定の病 旧約聖書のヘブライ語「ツァラアト」、新約聖書のギリシア語「レプラ」の訳語。七十人訳ギリシア語聖書が「ツァラアト」を「レプラ」と訳し、新約聖書は「レプラ」を踏襲している。「ツァラアト」はその語源も意味も明らかではない。「ツァラアト」は祭儀的な汚れという観点から人や物について書かれている。人について用いられている場合には、何らかの皮膚の疾患を指すが、病理学的にはいかなる病気であったか明瞭ではない。

*諮問会議に議員を派遣した18教派・団体
 ウェスレアン・ホーリネス教団、キリスト教学校教育同盟、沖縄バプテスト連盟、基督兄弟団、救世軍、在日大韓基督教会、聖イエス会、日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団、日本カトリック司教協議会、日本キリスト改革派教会、日本キリスト教会、日本ナザレン教団、日本バプテスト同盟、日本バプテスト連盟、日本ルーテル教団、日本基督教団、日本聖公会、日本福音ルーテル教会。

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