「政教分離の侵害を監視する全国会議」 首相の伊勢神宮参拝に抗議 2019年1月11日

 「政教分離の侵害を監視する全国会議」(木村庸五、古賀正義代表幹事)は1月11日、4日に伊勢神宮参拝を行った安倍晋三首相に対して抗議文を送付した。抗議文は、「憲法尊重擁護義務を担う国政の代表者らが政教分離原則に違反する行為を常態化させていること」を憂い、「天照大神を祀り、戦前は靖国神社と共に国家神道を支える中核の役割を果たした」伊勢神宮への参拝を「非宗教」と主張することは、「全市民的な参拝を国の行事として推進させ、再び特定の宗教を信じない自由、参加しない自由を阻害すること」につながると危惧。「戦後において否定された記紀神話に基づく神権的な国体観念が憲法の上位にあるとの理念を実質的に復古実現しようとするもの」と指摘している。全文は以下の通り。 


「政教分離の侵害を監視する全国会議」の首相・閣僚の伊勢神宮参拝に対する抗議文

内閣総理大臣 安倍晋三殿

首相・閣僚の年頭の伊勢神宮参拝に抗議します

 安倍晋三首相、及び石田真敏総務相、山下貴司法相、吉川貴盛農相、岩屋毅防衛相、桜田義孝五輪相ら現職閣僚は、国政の代表としての立場にありながら2019年1月4日に伊勢神宮参拝を行いました。同時に同神宮司庁にて政府公式の年頭の記者会見を行い同神社の参拝が政府の公式行事であるかのように印象付けました。このようなことが毎年行われていることは重大な問題です。「政教分離の侵害を監視する全国会議」は、憲法尊重擁護義務を担う国政の代表者らが政教分離原則に違反する行為を常態化させていることに深く憂い、厳重に抗議します。

 伊勢神宮参拝は、日本国憲法第20条3項の政教分離原則において「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と明記されている宗教的活動であることは言うまでもありません。「私的参拝なので政教分離違反には当たらない」との主張は、大挙して参拝しマスコミによって報道され広く市民に知られる行為態様の性質上、公的な実態を伴うものであり、妥当性を欠くものです。

 伊勢神宮は、天照大神を祀り、戦前は靖国神社と共に国家神道を支える中核の役割を果たした神社であり、戦後も、宗教法人神社本庁の本宗として位置付けられています。そのような神社を、「日本の伝統」という名目で、あたかも宗教を越えたものであるかのように語ることは、戦前の国家神道体制において「神社は宗教を越えた国家の祭祀である」とした「神社非宗教論」と全く同じ理屈と思われます。「神社は宗教に非ず」と見做された結果、国民には、国の祭祀とされた儀式に参加しない自由はなくなり、参拝の強制が教育現場等で臣民の当然の義務として一律に行われました。

 今日においても政教分離原則違反を覆い隠す口実として「日本の伝統・文化」という言葉を用い、伊勢神宮参拝を「非宗教」と主張することは、全市民的な参拝を国の行事として推進させ、再び特定の宗教を信じない自由、参加しない自由を阻害することに繋がります。

 日本国憲法が1947年5月3日に施行されて以来、憲法は国の最高原理となり、戦前の「国体」のような憲法を越えた更なる上位にあるような原理はもはや存在しません。首相・閣僚という国政の代表者が年頭の伊勢神宮参拝を政教分離原則に違反して常習的に行うことは、戦後において否定された記紀神話に基づく神権的な国体観念が憲法の上位にあるとの理念を実質的に復古実現しようとするものであり、国の根幹にかかわる重大な違反行為といえます。

 以上の理由から、今般の首相・閣僚の年頭の伊勢神宮参拝に抗議するとともに、以後、首相・閣僚による年頭の伊勢神宮参拝を取りやめるよう強く求めます。

2019年1月11日
政教分離の侵害を監視する全国会議
代表幹事 木村庸五、古賀正義
事務局長 星出卓也

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