京大で宗教と雑誌を問う学術ワークショップ 2019年2月11日

 学術ワークショップ「余白の宗教雑誌:宗教と宗教ならざるものの間」が1月26日、京都大学にて開催。「日本新宗教史像の再構築:アーカイブと研究者ネットワーク整備による基盤形成」、「雑誌メディアによる戦後日本の秘教運動の宗教史的研究」による共同開催。研究者のみならず一般からの参加者も含め約30人が集った。

 第1部 「戦前の事例:宗門と宗門ならざるもの」では、武井謙悟氏(駒澤大学大学院)が「近代禅雑誌の変遷と居士の多様化」と題して、「禅」を扱う雑誌の登場から修養ブーム、多様化の経緯を発表。大澤絢子氏(龍谷大学世界仏教文化研究センター)は「量産される「私の親鸞」――大正期親鸞ブームとメディア」と題し、山中峯太郎が「イエスと親鸞」の間で悩みながら膨大な信仰的文章を流通させた意義を指摘した。

 キリスト教関連では、赤江達也氏(関西学院大学)=写真=が「無教会と個人雑誌の複層――塚本虎二『聖書知識』とその周辺」と題し、無教会と教養主義をつなぐ人物として、塚本の重要性を紹介。とくに、塚本が「25万の教会員に嫌はれても、教会の外なる人がまだ、6975万人ある。お得意には困らない」と、教会外に広がる読者市場への意識を持っていたことを指摘した。

 コメンテーターの永岡崇氏(大阪大学)は、当時の雑誌におけるジェンダー観から発表者へ質問し、「女性の経験した近代」を浮き彫りにした。司会は、碧海寿広氏(龍谷大学アジア仏教文化研究センター)が務めた。フロアからは、吉永進一氏(舞鶴工業高等専門学校)が近代日本における宗教雑誌を「先生と私」という関係概念から総括できる可能性を指摘した。

 第2部「戦後の事例:宗教と宗教ならざるもの」として、大道晴香氏(國學院大學)が「〈秘境〉の時代――「オカルトブーム」前夜としての60年代」について発表。戦後のオカルト史を消費形態の観点から指摘。質疑応答ではフロアの声にも応じた。司会は平野直子氏(早稲田大学)が務めた。

 また番外セッション「限界宗教雑誌バトル:書棚のすきまから」では、著名な古書蒐集家「神保町のオタ」(ハンドルネーム)氏と、宗教学者の岩本道人氏(筆名)が、参加者が持ち寄ったさまざまな稀覯本についてコメントするという斬新な企画を開催。ヤニス・ガイタニディス氏(千葉大学)が司会を務め、広く一般も楽しめる工夫をなした、人文学の楽しみを凝縮したワークショップとなった。

 近代日本における宗教とその媒体としての雑誌の機能、効果、共同体、影響の研究は、日本宗教史を精緻に描くためには必須の基礎作業となる。信仰と経済活動、宗教と戦争、外来思想と日本という多様な問題の接点ともなり得る、学際的かつ開かれた分野といえる。

 なお前回は、「1968年と宗教――全共闘以後の「革命」のゆくえ」と題し、昨年12月に京都で開催。未曽有の出版不況、インターネットが全面的にインフラ化した現代の宗教系出版社にとって、また宗教が混淆する日本の思想と文化にとって、これらの研究のさらなる進展は有意義かつ重要な意味を持つことになる。

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