【信教の自由を守る日】 憲法学者 笹川紀勝氏が講演 差別と蔑視の再生産に危機感 2019年2月11日

天皇の代替わり前に各地で集会
日本キリスト教会東京告白教会

 各地で催される「信教の自由を守る日」関連集会に先立ち、日本キリスト教会東京告白教会が主催する講演会が2月5日、烏山区民センター(東京都世田谷区)で開かれ、キリスト者で憲法学者の笹川紀勝氏(国際基督教大学名誉教授)が「天皇の代替わりと憲法――私たちの平和的生存権が脅かされている」と題して講演した。

 笹川氏は、日本国憲法によって象徴天皇制と国民主権が規定されるまでの過程を、関係者の発言などを記した歴史的資料から検証した上で、「国民主権の天皇制に対する歴史的緊張関係こそ天皇制護持に由来する象徴天皇制の運用の前提に置かれるべき」と主張。天皇の生前退位や自民党の会見草案など、今日的課題についても言及し、差別と蔑視が再生産される社会状況に危機感を示した。約50人の参加者が耳を傾けた。

「デモクラシーとは何か」の議論必要
国民主権と天皇制は相容れない

 笹川氏は、「日本国国民の自由に表明せる意思」によって政府が樹立されるというポツダム宣言(第12項)が「政体選択の自由」を明記した1941年の大西洋憲章に由来することを明らかにし、同憲章から天皇制を考察する有用性を説いた上で、日本国憲法の制定過程において国民主権がどのように受け止められたかを歴史的に概観した。

 また、戦前の天皇制から戦後の「大衆天皇制」への移行を論じた松下圭一に対し、新憲法のもとで天皇制とデモクラシーとは相容れないと指摘した横田喜三郎が、「大衆天皇制」によって国民主権との緊張関係を失うことを懸念したことを紹介し、それこそが天皇制の「アキレス腱」であると述べた。

 憲法と皇室の関係については「憲法尊重の視点から徹底して天皇のあり方を見直すことは難しい」として、平成天皇による生前退位の意向を受けて内閣と国会が退位特例法を成立させたことを例に、「憲法第4条が禁じる天皇の『政治的活動』を野党も含めて議会が認めてしまったことになる。象徴天皇制について『国民の総意に基づく』という条項がありながら、『国民とは誰か』『国民が意思表示をするための手続きは』『総意をどう汲み取るか』という議論はまるで成されていない」と指摘。天皇が「国民に寄り添う」ことは倫理の問題であり、また高齢化に伴う国事行為についても、憲法5条に摂政の制度が規定されているため、いずれも特例法を必要とする口実にはならないと加えた。

 さらに、天皇の代替わりについては昭和天皇が死去した際の重苦しい自粛ムードを回顧しつつ、「大喪の礼・即位の礼・大嘗祭」という一連の儀式が内包する憲法問題にも触れた。「一人の人間が死ぬことは厳粛なものであるが、天皇の死だけ公的なものというのはおかしい」

 アメリカの大統領が就任する際には憲法への忠誠を宣誓する。日本では99条で憲法尊重擁護の義務が規定されているにもかかわらず、天皇が生前退位の意思を表明し、一つの憲法解釈を示したことは「政治活動であり憲法に抵触する」と笹川氏。「大嘗祭は内廷費で行うべき」という秋篠宮による発言についても歓迎される向きがあるが、皇族も天皇や公務員と同様に、「生活費の支給を受けながら政治活動をすることはできないはず。もし発言したいなら皇族を辞して国民と対等になるしかない」とし、その理由を「国民が有する思想信条の自由や各種人権は、特権階級に抗して保証され獲得された権利だから」と述べた。

 最後に、「マスコミを通し天皇とその家族の情報の伝播によって、国民と天皇皇族の一体感を形成する情緒的な思想動員」が行われていることへの警戒感を示し、国民一般と天皇皇族の間で生まれによる差別があり、本質的に平等ではないことや、国民間の差別も曖昧にされていることを危惧。とりわけ、劣悪な労働環境、異質な文化的環境で、平等な人間ではなく利用価値のあるモノとして非人格的に扱われる外国人労働者への差別と蔑視を再生産してはならないとし、「デモクラシーとは何か」という根本的な議論の必要性を強調した。

 「差別と蔑視の根本が天皇制にあるとしても、現実の社会にある差別と蔑視の改善は進められなければならない。まさに憲法は『全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する』といって屈服することなく人々の生きる希望を語っている」

 講演資料には「まことに、あなたは弱い者の砦/苦難に遭う貧しい者の砦/豪雨を逃れる避け所/暑さを避ける陰となられる」(イザヤ25:4)を引用し、「聖書のこの言葉を知る者として、私たちは、過去と今の時代の人々の生きる実情を見続け、正義と公平の実現に向けて歩まなければなりません。その歩みを支える人々の信仰が曇りなくこの世界を捉えるその自由を大切にしたい」と記した。

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