【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 委ねられた葬儀 キョウカイレッド 2019年3月11日

 牧師になった時に「できることなら子どもの葬儀だけは私にさせないでください」と神に祈った。その祈りは聞かれなかった。

 「ユウキが亡くなった。教会で葬儀をしてもらえないか」。深夜だったからか、人はショックが大きすぎると自己防衛本能が働くのか、耳に聞こえてくる言葉の意味を理解することがしばらくできなかった。ユウキくんが病気のためアメリカで亡くなった。

 体は小さかったが全身がバネのようでエネルギーに満ち溢れる子だった。シャーロック・ホームズを愛し、鹿撃ち帽がよく似合うかわいい子だった。日曜日の礼拝には来ていなかったが、友だちと一緒に教会学校の行事やバザーなどには家族で参加していた。8歳だった。

 連絡を受けてからユウキくんの遺体が帰国するまでしばらくの時間があった。辛く、厳しい時間だった。できるならやりたくない。どうやってご両親に会えばよいのか。重すぎる。気がつくとため息をついていた。キョウカイジャーの極秘連絡網に祈りの要請をしようと思った。しかし、2代目ゴールドの妊娠を祝うやり取りで盛り上がっている時だったので、何となく子どもの葬儀のことは切り出しづらく、悶々とする時間を過ごしていた。

 ブラックにだけ「心が重い。祈ってくれ」と伝えた。日ごろ「ぶっ壊せ」とか息巻いているブラックだが、繊細な精神の持ち主。こんな時にはそっと寄り添ってくれる優しさを持っている。すぐに電話をくれて「神はレッドなら担ってくれると願い、委ねたのだと思う」と励ましてくれた。嬉しかった。そのひと言で覚悟が決まった。神に委ねられたのなら、やるしかない。

 ユウキくんの話を聞くと、アメリカで教会生活を送っていたという。友だちと一緒にバイブルスタディに出席したり、クリスマスには聖歌隊として礼拝に参加していたようだ。ノートを見ると英語で聖句がいっぱい書かれ、その聖句をイメージした絵も書かれていた。英語で書かれた「神様への手紙」というのもあった。親もユウキくんが亡くなった後、彼の机の中にあったのを発見したらしい。

 「大好きな神様。神様、僕を愛してくれてありがとう! 僕に素敵な家族を与えてくれてありがとう! 僕は、もっといろんな国にいって、神さまが知っていることを知りたいです。質問:なんで世界には多くの神々がいるのですか? いま、神様は、すべてのこと、すべての子どもたちのことを知っているのですか? わたしはそれが知りたいです。 そして、わたしは、あなたの子になりたいです! あなたはどこからわたしのところにくるのですか?」

 神を身近に感じ、神を求めていたピュアな信仰にこちらが励まされ救われた。切なくて涙が溢れた。ユウキくんの母親がいくつかの動画を見せてくれた。詩編を英語で暗唱するユウキくんだった。「主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない」。詩編23編をすべて暗唱していた。特に「死の陰の谷を行くときも/わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる」。それが彼のお気に入りで、最後の最後までこの聖句に励まされていたと教えてくれた。

 葬儀は終わった。委ねられた務めを担ったというより、ユウキくんの信仰に俺が救われた葬儀だった。

キョウカイレッド
 赤星雄馬(あかほし・ゆうま) 常に筋トレを欠かさない体育会系アスリート牧師。その体の大きさから態度のデカい奴だと見られるのが悩みの種。大食漢。仁義に厚い。武器:黄金バット/必殺技:み言葉千本ノック/弱点:食欲

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