教会も電気料金見直す時代 持続可能な財政へ信徒の「寄付」も 2019年3月11日

「電力自由化」と教会つなぐ 岩瀬喜保さん×
取り組み始めた日本ナザレン教団小岩教会 稲葉基嗣さん

 高齢化が著しい日本の教会にとって、今後その経済基盤をどう維持するかは避けられない喫緊の課題となっている。とりわけ2011年の東日本大震災と原発事故以来、既存の企業、行政、システムへの不信感が広がる一方、教会には地域における社会資源としての存在意義がますます問われている。

 2016年4月の電力自由化により、大手ガス会社などさまざまな業態が新電力事業に乗り出す中、切り替えによって生み出される余剰分を「寄付」することで社会貢献に生かそうと差別化を図るのが、株式会社アイキューフォーメーションだ。2017年には「ささげる・ささえる・たくわえる」を合言葉に、キリスト新聞社と提携して進める教会向けのサービス「寄付電気」(神サポ電気)を開始し、すでに約50件の教会、団体が利用を始めている。

 昨年夏、新電力に切り替えた日本ナザレン教団小岩教会(東京都江戸川区)では、さっそく目に見える成果が表れたという。牧師の稲葉基嗣(もとつぐ)さんと、アイキューフォーメーション社長の岩瀬喜保(よしやす)さんに話を聞いた。

月額10%超す実績に手応え
「さらに節減できる部分ないか」

 アイキューフォーメーションは電気の使用量が大きな教会の使用状況に合わせて、土曜・日曜の電気代(従量単価)を下げることで全体の額を引き下げる料金体系を策定。月々の電気代が10~15%ほど安くなる。幼稚園などを併設し、平日の使用量が大きい教会でも、10%程度は下げられるという。

 閑静な住宅街に建つ小岩教会は、礼拝出席が平均25人という中規模の教会。2階に牧師館のある建物も老朽化しつつあり、役員会では新会堂のための積み立てについて話し合いを始めたばかり。電力の切り替えに踏み切ったのは昨年3月ごろ、稲葉さんがインターネット上で「寄付電気」のホームページを見たのがきっかけ。

アイキューフォーメーション社長の岩瀬さん(左)と牧師の稲葉さん

 「ちょうど教会も削減できるところは削減したいと思っていたので、本格的に検討を始めました。他にも営業の電話が頻繁にかかってきていましたが、相見積もりを取って安かったのでこちらに決めました。無理をせずに現在の会堂を維持しつつ、貯蓄できれば新会堂の費用に充てようという内容だったので、提案はしやすかったです」

 5カ月間の実績は計1万数千円。1年で3万円は安くなる見込みだ。また、新電力への切り替えで浮いた自宅の電気代4%を所属教会に献金できるというサービスも勧めたところ、2人の信徒が登録。4カ月で3千円の献金を充当することができた。面倒な工事や手続き、見積もりの負担も不要で、教会に持続可能な「ささげもの」ができるという仕組み。

 電気の送配電は従来の電力会社系列の送配電事業者に委託しているため、新電力が提供する電気の質(安定性、安全性)はまったく変わらない。誤解されることも多いが、新電力会社に不都合があっても電力の供給が止まることはない。電気代は時間単位で一律なので、販管費と電力会社の利益によって価格が変わる。間接コストが小さければ小さいほど安くなるという構図。

 「この4%は旧電力会社の莫大な利益のもと。それが原発などを含む設備への投資になり、巨大資本を作っていますが、本来はもっと広く、それぞれの考えや志向に合わせて還元されるべきお金です。月平均300~400円が集まれば、社会が変わるかもしれない。『電気を通じて寄付』というスタイルが社会に根付くことが目標です」と岩瀬さん。さまざまな教会のニーズに触れる中で、「信徒の方々がささげる献金は、いわゆる『浄財』ですから、用途をよくよく考える必要があるはず。教会の場合、まだまだ節減できるところはあると思います」と語る。

 「神サポ電気」という奇抜な名称にはやや抵抗もありながら、「キリスト新聞社との提携なら」と小岩教会では理解を得ることができた。今後の教会を維持するためには、抜本的な見直しも必要だと考える稲葉さん。「奏楽者のいない教会に、オルガンの弾ける音大生を派遣するような仲介業は需要があるかもしれません」と、これまでにない教会向けの新サービスにも期待を寄せる。

 アイキューフォーメーションの「寄付電気」は他にも、国境なき医師団やYMCA、動物愛護団体などと提携してさまざまなニーズに合わせた仕組みづくりに挑戦している。最近では、生活時の電気使用量を通して安否が確認できる高齢者の一人暮らし世帯対象の「見守り電気」も提案。高齢層の多い教会にとっても、新しい試みとして活用が広がりそうだ。

 「神サポ電気」の見積もりに必要な書類は、電気の明細1年分(通常はひと月1枚なので12枚)。見積もりの結果、現在の電気代よりも安くならなかった場合でも、費用は一切かからない。契約前の必要書類は、同社の申込書と最新の料金明細のみ。クレジットカードの支払いであれば、同社のホームページ(https://mydenki.com/kirishin/)から申し込み可能。銀行口座振替を希望する場合は、ホームページもしくはファクス(03‒5721‒5580)で申し込みできる。問い合わせはフリーダイヤル(0120-916-947)まで。

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