『イスラーム映画祭4』主催者・藤本高之さんインタビュー 遊弋するイスラーム 2019年3月16日

 「映画を通じて、世界に広がるイスラームの文化を体験する、そこに暮らす人々の日常を知る」をテーマとしたイスラーム映画祭が今年も開催される。4度目の開催となる今回は、かつて「幸福のアラビア」と呼ばれたイエメンの光と影に焦点が当てられた構成で、ニューヨークやウィーンを舞台とする作品からインドネシアの天文台を描く作品まで、計12本が上映される。主催者・藤本高之さんに話を聞いた。

――今回イエメンの映画をメインに据えたことで、これまでと違う難しさや反応などはありましたか?

 内戦が続くイエメンの状況は、シリアやパレスチナ問題に比べると日本ではほとんど報じられません。またイエメンの文化についてもあまり知られていない。こうした中で「イエメンの映画をやりますよ」と言っても、お客さんに興味をもってもらえるか不安はありました。しかしこの映画祭も回を重ねてきたので、そろそろこうした限定的で重たいテーマを扱うべきだという気持ちが働きました。結果として、SNS上などでは予想外に多くの反響をいただいています。

――2015年暮れの第1回から今回までの間に限っても、日本社会における「イスラーム」のイメージはかなり変化してきたと思いますが、こうした変化について何か感じたことはありますか?

 初回はパリ同時多発テロ直後で、社会的な関心が沸騰した時期にあたりました。この意味では2回目以降いったん落ち着きましたが、代わりに外国人労働者や難民問題などを通じ、世間的にもこの数年でイスラームの存在がぐっと身近なものになりましたよね。それと並行して、ひと口では括ることのできない圧倒的な多様性がイスラームの内にも広がることへの感受性が育ってきたように思います。「宗教」や「イスラーム」に対する一般的なイメージも、前より柔軟になってきました。

『その手を離さないで』より

――これまで基本的に1人で運営を続けてこられましたが、年々規模を拡大する中で難しい局面も増えてきたのではと推察します。個人で運営を続ける理由と、今後の展望をお聞かせください。

 私自身はこの活動を、一般の大人がボランティア活動に参加したりデモへ行ったりというのと同じように考えています。個人がこういう形で貢献できる社会活動もあるのだと示したい。ですから周囲から「NPOを作れば?」と勧められることはありますし、運営を手伝いたいと言われることもあるのですが、現状ではお断りしています。そういう形でなければできない活動にしたくないんです。ただ、年齢的な問題から誰かに引き継ぐことは視野に入れています。

 今後については、まず5回目を来年開催予定です。次回は新しく南米の映画も扱おうと。「なぜ中東にこだわるの?」と尋ねられることもありますが、世界最大のイスラーム人口を抱える東南アジアの映画は毎回必ず入れていますし、今回もインドが舞台でアフリカのサッカー選手を描く作品(『ナイジェリアのスーダンさん』)や、ムスリマと正統派ユダヤ教徒の交友を描くブルックリンが舞台の作品(『幸せのアレンジ』)などを上映します。広がりを重視するこのスタンスは今後も変わらないと思います。上映後のトークゲストには幅広い方々をお招きしていますし、娯楽作から社会派作までバランスにも顧慮していますので、ぜひ多くの方にお楽しみいただきたいです。

(ライター 藤本徹)

ユーロスペース渋谷:3月16日~22日、名古屋シネマテーク:3月30日~4月5日、神戸・元町映画館:4月27日~5月3日

詳細は公式サイト(http://islamicff.com/)まで。

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