『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』ドイツ児童文学賞受賞 岩佐めぐみさん新刊発売 私の代わりに本が世界へ 2019年4月21日

 2001年に出版されて以来、多くの読者から愛され続け、世界8カ国語で翻訳された岩佐めぐみさんによる児童書『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』(偕成社)が、17年の時を経て昨年10月にドイツ児童文学賞を受賞=写真、右から2人目が岩佐さん。翻訳は、2003年に韓国で出版され、次いで台湾、中国、メキシコ、ブラジル、ニュージーランド、ドイツ、トルコなどに広がっていった。中国では数年前に、子どもの本のベストセラー4位を獲得。この夏にはシリーズ最新刊『ぼくは気の小さいサメ次郎といいます』の発売も控えている。受賞に至るまでの歩みには、岩佐さんと亡き夫・鉄男さんをめぐる数奇な出会いと導きがあった。

あの日見た夢の話…が十数年の時を経て
「書いた私の方が教えられ新鮮な気持ち」

 『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』の物語は、アフリカにすむ退屈なキリンが、まだ見ぬ友人に出会うため「地平線のむこうでさいしょにあった動物にわたしてほしい」と郵便配達のペリカンに手紙を託すところから始まる。ペリカンは最初に出会ったアザラシの配達員に手紙を渡し、最終的にペンギンがその手紙を受け取る。違いを尊重し合い、それぞれの立場で想像力をふくらませ、互いを思いやるという心温まるストーリー。

 実はこの話、岩佐さんが1986年1月に見た不思議な夢が元になっている。「もともと変な夢は結構見るんですよ。だからそのたびに、こんな夢を見たと人には話していました。ただ、『ペンギンのまねをするキリン』という書名の本を出したというあの夢は、短くてクリアでした」。その時期は、長く離れていた教会に再び足を向け始めたころとちょうど重なる。

 岩佐さんの祖父母はクリスチャン。母の伯父も賀川豊彦と一緒に活動しているなど、キリスト教とは近しい環境で育ち、「めぐみ」という名前も聖書に由来する。両親は信仰生活を送っていたわけではなかったが、晩年には洗礼を受けることになる。

 自身が教会に足を踏み入れたのは、高校1年の時に友人に誘われたことがきっかけ。洗礼も受けたが、その後ほどなくして教会を離れ、多摩美術大学を卒業してノンクリスチャンの夫と結婚するまでキリスト教とは無縁の生活を送ることになる。たまたま借りた新居の隣に住んでいたのが、日本人宣教師夫妻。住み始めた当初は教会に誘われるたびに断っていたが、夫から「教会ぐらい行ってもいいのでは」と言われ、結局、教会ではなく自宅でビデオを観ることになった。その内容が、「放蕩息子」の話だった。

 「私が神様のもとに戻ったら、神様はこんなに喜ぶのかなと思いました。続けて誘われた聖書の勉強会で読んだ箇所が、神様を受け入れるかというところでした。もはや断る理由が見つからず、『受け入れます』と言ったら涙があふれてきて……。そこからようやく教会に戻りました」

 夢を見たのは、その数カ月前の出来事。しかし、それが童話として世に出るまでには、さらに十数年の歳月を要する。「ファッションデザイナーになりたいとか、グラフィックデザインをしたいとか思っていたことはありましたが、自身が童話を書くということは想像もしていませんでした」と振り返る。「もし、神様がこの話を書いてほしいとお考えなら、いつか絶対書く機会が訪れると思ったんです。それで、夢の話を思い出しては『神様、今ですか?』と聞き続けましたが答えは返ってきませんでした」

 転機は突然訪れた。この話に「ぴったりのイメージ」と思える高畠純さんの『おとうさんのえほん』を見つけ、以来、岩佐さんの中では高畠さんの描くキリンが脳裏に焼きつくことになる。さらに、今まで無反応だった神様がどことなく微笑みかけてくれたような気がして、その夜、子どもたちへの読み聞かせで未完だった「夢の話」を試しに読んでみた。

 「もちろん、全部書いていないから途中で終わってしまうわけですが、『続きは?』と聞かれて、書いていないと言うと、『明日から書きなよ』と背中を押してくれました」

 本腰を入れて「夢の話」を書き始めた直後、子どもたちが通う小学校での朗読会に、あの高畠さん本人がゲストとして目の前に現れる。あまりの偶然に驚きながらも、「実はお話を書いている」と伝えると「がんばってください」と応援してもらえた。

 その後、「アドバイスできることがあるかもしれないから作品を送ってほしい」と言われ、完成させたキリンの話を送ると、高畠さんから「どこかの出版社に見せてもいいですか」「出版される際は僕が絵を描いてもいいですか」という申し出と、キリンとペンギンのイラストが届く。不思議なことに、岩佐さんの話を読む前から、すでに高畠さんは自作のカレンダーに、手紙をやり取りするキリンとペンギンのイラストを描いていたのだ。

*全文は紙面で。

ドイツ人学校で開かれた朗読会

岩佐めぐみ
 いわさ・めぐみ 1958年、東京都に生まれる。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、1986年まで同大学学科研究室に勤務。作品に『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』のほか、『わたしはクジラ岬にすむクジラといいます』『オットッ島のせいちゃんげんきですか?』『おいらはコンブ林にすむプカプカといいます』『バッファローおじさんのおくりもの』『カンガルーおばさんのおかいもの』がある。

高畠 純
 たかばたけ・じゅん 1948年、愛知県に生まれる。愛知教育大学美術科卒業。東海学院大学特任教授。絵本『だれのじてんしゃ』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞。作品は『もしもし…』「白狐魔記」シリーズ、『ピースランド』『おどります』『らくちんらくちん』『わんわんわんわん』『十二支のはやくちことばえほん』、「クジラ海のお話」シリーズなど多数。

ドイツ児童文学賞
 1956年に設立され、「児童と青少年のための優れた図書」に授与されるドイツで最も権威ある児童文学賞。毎年、前年度に出版された図書(翻訳作品を含む)の中から、各部門それぞれ6冊がノミネートされ、10月に受賞作品が発表される。日本の作品が受賞するのは、創立以来初。

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