「国民主権」「政教分離」厳守を 代替わり前に諸教派・団体が会見で訴え 2019年4月30日

 日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題員会(星出卓也委員長)は4月30日、天皇の代替わりに先立ち、カトリック、NCC、日本福音同盟(JEA)、日本バプテスト連盟からそれぞれ関係者が登壇し、「違憲状態の天皇の代替わり儀式」に抗議する記者会見を日本基督教団信濃町教会(東京都新宿区)で開いた。

 登壇したのは=写真左から=上中栄(JEA社会委員長、日本ホーリネス教団旗の台キリスト教会牧師)、金性済(NCC総幹事)、光延一郎(イエズス会司祭、上智大学神学部教授、日本カトリック正義と平和協議会秘書)、加藤誠(日本バプテスト連盟理事長、同連盟大井バプテスト教会主任牧師)の4氏。

 会見では、それぞれの教派・団体が発表した声明に基づいて、国民主権、政教分離の原則に則り、信教の自由を守るため天皇の退位、即位に際して行われる「即位礼正殿の儀」「大嘗祭」など一連の神道儀式を、公的な国事行為として行わず、公費も支出しないことなどを求めた。また、昨年から今年にかけて公にされた13のキリスト教諸教派、諸団体による23の声明も紹介された。

 一方で4月27日には、日本民族総福音化運動協議会の会員ら有志が皇居周辺で「天皇に感謝するマーチ」を主催するなど、キリスト教界内の意識の差が浮き彫りになる形となった。

「国家神道」体制の再来を危惧
〝かつて思考停止に陥ったことへの反省から〟

 日本カトリック司教協議会はいち早く昨年2月、「天皇の退位と即位に関する一連の行事にあたって、日本国憲法が定める政教分離原則を遵守し、国事行為と皇室の私的宗教行事である皇室祭祀の区別を明確にすること」を求める要望書を安倍晋三首相宛に送付。

 光延氏は「カトリック教会内には保守的な立場も多い。さまざまな立場を含む大所帯として他教派のように細かな問題点の指摘が難しい」との現状を吐露しつつ、「キリシタン時代に踏み絵を踏まされた記憶や、戦中に上智大学の学生が靖国神社の参拝を拒否したことで圧力を受け存続を脅かされたという歴史も、今回の声明には反映している。司教団として努力し、原則的な問題に絞って指摘した」と説明した。

 金氏はNCCが発表した要請文をもとに、天皇の代替わり報道について「国民主権の立場に立って公正な報道をする」よう求め、「内奏」や「ことほぐ」などの「過度な敬語表現」が、「天皇を戦前・戦中のように再び主権者とし、すべての国民には服従を求める、という強制力になりかねない表現が……無批判に垂れ流されている」とし、「政府発表をそのままなぞるような姿勢を示していること」に深い憂慮を示し、「適切な報道」がなされることを要請。さらに、「仏教者も含め宗教者は信仰に依拠しつつ、正しいことは正しい、誤りは誤りと語り、時代に警告を発するべき立場。その根底にはかつてそれができなかったという罪の告白と悔い改めがある」と加えた。

 上中氏は「福音派」の立場からJEAの中にもさまざまな考えがあることに触れた上で、「皇室への関心の有無、天皇制への賛否や政治的立場は関係ない。ただ、一連の宗教行為に政府が関係することを問題視し、民主主義が静かに瓦解していくことを懸念している。戦時中に弾圧を受けたホーリネスに属する者として、かつて思考停止に陥ってしまったことへの反省から、単に政府への批判だけでなく自己批判を含め、より良い社会の実現のために奉仕したいという教会の思いの表れと理解してほしい」と呼び掛けた。

 加藤氏は、「教会内でも常に少数意見が大切にされるべきと思いつつ、戦争責任に関する事柄は曖昧にしてごまかしてしまうとキリストの福音が何であるかも曖昧になってしまう。教会としての責任を見据え、できるだけ教派として発言していこうと努力している」と述べ、日本バプテスト連盟内の各機関が発した声明を紹介した。

 30年前の「代替わり」との比較から星出氏は、「信徒の間にも歴史修正主義に傾倒した意見が増えたように感じるが、まだ教会の言葉として発せられることはない」とし、その背景には「国家神道的なものには異を唱えるというこれまでの活動の積み上げが確かにある」と指摘。

 金氏は「日本が高度経済成長で上りつめ、経済大国となったという自信に満ちていた80~90年代は、天皇を意識しないでいられた。資本主義社会の仕組みが崩れ、弱者を切り捨てていく中、漠然とした不安の中で拠りすがりたいものとして世界的にポピュリズムが広がってきた。排他的な感情が普遍的にあふれている状況が皇室ブームを下支えしている。天皇制の問題であれ立憲主義であれ、戦争を体験した生き証人が周りにいた時代と異なり、次の世代と話が通じにくい。日本人のみの市民運動では自己完結できない。一つの突破口は、国を超えて北東アジアで一緒に考え、対話すること。若い人々がそうした対話に踏み込めるような入口を作る仕事をしなければならないのではないか」と訴えた。

 声明を発表した教派・団体は以下の通り(順不同)。NCC、日本カトリック司教協議会、日本基督教団(石橋秀雄総会議長)、同教団東京教区北支区常任委員会、第41回日本基督教団総会、日本キリスト教会(冨永憲司大会議長、及び各中会議長)、同靖国神社問題特別委員会(古賀清敬委員長)、日本バプテスト連盟靖国神社問題特別委員会、同連盟理事会、同連盟性差別問題特別委員会、日本キリスト改革派教会(川杉安美大会議長)、日本キリスト者医科連盟第103回全国委員会(西脇洸議長)、日本聖公会主教会、同正義と平和委員会、カンバーランド長老教会日本中会(唐澤健太議長)、日本バプテスト同盟(久保親哉宣教部長)、日本同盟基督教団「教会と国家」委員会(柴田智悦委員長)、同理事会「教会と国家」委員会、同第70回教団総会、日本キリスト教婦人矯風会、日本福音ルーテル教会社会委員会(小泉基委員長)、同九州教区常議員会、靖国神社国営化反対月例デモ市民の会(植竹和弘代表)。

特集一覧ページへ

特集の最新記事一覧

TO TOP