【京都・6月29日】シンポジウム 「タルグムの世界 ―聖書翻訳とユダヤの伝統―」

 京都ユダヤ思想学会が、第12回学術大会(6月29日、於:同志社大学)を開催する。今年度シンポジウムは、アラム語訳聖書「タルグム」に見られる翻訳の問題がテーマ。入場無料、事前申し込み不要、書籍の展示販売も行う。

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日時: 2019年6月29日(土) 13:30-17:00
会場: 同志社大学(烏丸キャンパス)志高館SK118教室

【シンポジウム】 

「タルグムの世界 ―聖書翻訳とユダヤの伝統―」

13:30−13:40   司会挨拶:加藤 哲平(日本学術振興会特別研究員PD)
13:40−14:40   基調講演:勝又 悦子(同志社大学)
(休憩:14:40-15:00)
15:00−16:00   コメント:阿部 望(獨協大学)、飯郷 友康(東京大学)
                大澤 耕史(中京大学)
16:00−17:00   質疑応答

<シンポジウム趣旨>
加藤 哲平(日本学術振興会特別研究員PD/シンポジウム企画担当)

 2017年には「新改訳2017」(新日本聖書刊行会)が、2018年には「聖書協会共同訳」(日本聖書協会)が刊行され、にわかに「聖書翻訳」への関心が高まっている。聖書というあまりにも人口に膾炙した宗教文学を、いかにして新しく翻訳することができるのか。これは困難かつチャレンジングな問いである。この問いに答えるために、たとえば「聖書協会共同訳」は、「スコポス理論」という新しい翻訳理論に基づいて翻訳するという方針を取った。つまり、意訳・逐語訳といった従来の二項対立にとらわれずに、読者対象と目的(=スコポス)に合わせた翻訳を作成することで、教会での礼拝にふさわしい聖書を目指したわけである。

 このように最新の翻訳理論を駆使するという方針は、もちろん有効である。しかしながら、聖書は古来よりさまざまな言語に翻訳されることで多くの読者を獲得してきた歴史がある。そうした伝統に目を向けることは、聖書翻訳に新たな視点を与えてくれるのではないだろうか。前3世紀にエルサレムから招聘された72人の長老たちがアレクサンドリアでわずか72日間でギリシア語に訳したとされる「七十人訳」、その七十人訳に飽き足らなくなったユダヤ人たちがよりヘブライ語テクストに近づけようとして作成したギリシア語訳の「アクィラ訳」「シュンマコス訳」「テオドティオン訳」、そしてベツレヘムの聖書学者ヒエロニュムスがギリシア教父やユダヤ賢者の解釈を学びながら16年かけてラテン語に訳した「ウルガータ」など、ヘブライ語聖書の古代語訳だけでもいくつもの伝統がある。

 これら古代語訳の中で、とりわけ重要であるにもかかわらず、わが国ではほとんど知られていないのがアラム語訳の「タルグム」である。ヘブライ語原典に寄り添い、ときに逸脱しながら聖書の意味を解き明かしてきたタルグムには、ラビ伝承によれば、書記エズラの律法朗読(ネヘミヤ記8章)以来の長い伝統があるとされている。しかもひとくちにタルグムといっても、公認版として比較的原文に忠実な「オンケロス」や「ヨナタン」から、ミドラッシュのように自由闊達にスピンオフを繰り返す「偽ヨナタン」まで多様性に富んでいる。また1956年にスペインの文献学者アレハンドロ・ディエズ・マチョがヴァチカン図書館で発見した「ネオフィティ」の衝撃は、まさに聖書学史上の一大事件だった。

 京都ユダヤ思想学会は、聖書翻訳への関心が高まっているまさに今このときに、タルグムというユダヤの豊穣な世界を多くの人に知っていただきたいと考える。このような問題意識に基づき、基調講演者としてタルグムとラビ文学をご専門とする勝又悦子氏(同志社大学)を、またコメンテーターとして阿部望氏(獨協大学)、飯郷友康氏(東京大学)、大澤耕史氏(中京大学)をお迎えする。聖書を翻訳するとはどのような行為なのか。聖書学やユダヤ学のみならず、宗教学、哲学、古典学、翻訳学といった広いフィールドに開かれたこの問いを、今こそ考えてみたい。

お問い合わせ:京都ユダヤ思想学会事務局 (hebraicaveritas@gmail.com)
詳細:HP(https://sites.google.com/site/kyotojewish/)

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