日本聖公会「原発のない世界を求める国際協議会」 〝核の平和〟の欺瞞を問う 川上直哉(東北ヘルプ事務局長) 2019年6月21日

 日本聖公会(植松誠首座主教)は5月27~31日、「原発のない世界を求める国際協議会」を仙台市内で開催した。各教区司教をはじめ全国から日本聖公会関係者、韓国、台湾、米国、フィリピン、英国の聖公会関係者、さらに日本キリスト教協議会(NCC)から約70人が集まり熱心な議論を交わした。会議に先立ち福島県の原発災地現場をめぐるフィールドスタディも行われ、津波被災地の視察が行われた。基調講演はドイツの「脱核」政策策定・施行に直接携わるミランダ・シュラーズ氏(ミュンヘン工科大学教授)が担当し、日本基督教団、日本バプテスト連盟、保守バプテスト連盟などの牧師、信徒らも参加した。2日目の講演を担当し、〝核の平和〟という欺瞞に問いを投げかけた川上直哉氏(東北ヘルプ事務局長、日本基督教団石巻栄光教会牧師)に会議の報告を寄せてもらった。

被害者に寄り添う言葉を模索
「次へとつながる運動」に

 キリスト者の会議であることの特徴と強みは、祈りと礼拝に支えられているということにある。その開会礼拝はルカ福音書11章によって導かれた。すなわち「求めなさい。そうすれば、与えられる」とのことばを聞き、この会は始められた。「被ばく地フクシマ」の現場に立って、幾度となく期待を裏切られ、何度も絶望へといざなう声を聞いてきた私に、この開会礼拝は力を与えた。2回持たれた聖餐式は、主にあって私たちが一つの家族であることを体感させた。毎回祈られる「特祷」は、私たちの悔悟と神の赦しの力動へ参加者を招き入れた。この協議会は、確かに、教会の協議会であった。

 ミランダ教授の講演は堪能な日本語で行われた。すでに広く知られている通り、ドイツは「脱原発」の実践を進めている。また、再生可能エネルギーの技術革新は目覚ましく、人類は原発の代替手段を手にしたが、私たちの国はなお「脱原発」へと進み出すことができない。ミランダ教授の講演は、そのことを再確認させるものであった。それに加え、筆者は新しい知見を得た。ドイツは、確かに「脱原発」へ進みながら、しかし、「脱石炭」が進まない。つまり、気候変動を引き起こし続けるシステムを止めることに苦労している。また、フランスから「原発由来」の電気を輸入していると報道されるが、それは誤っていること。つまり、近年はフランスこそが「再エネ由来」の電気をドイツから輸入していることがミランダ教授から語られた。「ステレオタイプ」の議論から脱するために、とても大切な示唆が与えられた。

 筆者の講演は、「核の平和利用」をめぐる議論を主題とした。もし「平和」を「シャローム」と理解するならば、「核の平和利用」という言葉は成立しない。なぜなら「シャローム」とは「幸せが完全であること」を意味するからだ――このことを、世界教会協議会(WCC)が2014年7月に声明「核から解放された世界へ」を採択するまでの歩みをたどりつつ語った。WCCの声明は原発被災者の「声にならない声」に聴くことを求めている。原発事故の被災者、放射性廃棄物を引き受けさせられる未来世代、そしてウラン鉱山から廃棄物処理までの各段階で被ばくする労働者。そうした人々の犠牲を必要とする原発。そこには、「偽物の平和」しかない。その「核の平和」の欺瞞を一つひとつの現場で目撃し、その犠牲者と苦しみを共にしつつ証言者となること。今、福島県内の教会は、そのことを神からの使命と信じ、取り組んでいる。そこに希望がある。

 二つの講演を受けて、台湾・韓国・横浜から、三つの発題が行われた。また、朝夕の祈祷会においてフィリピンと韓国と大阪から説教者が立てられた。閉会礼拝では沖縄から説教者が立てられた。その一つひとつが、原発事故被災者と自らの現場との連帯を語るものであった。教会が持つ愛のつながりが、そこに確かに立ち現れていた。

 2度の分科会を経て、会議の声明文が検討され採択された。その議論は真摯で、あるいは危険なものでもあった。起草委員会は夜を徹して議論を重ねた。全国・全世界のキリスト者に伝わる言葉、そして、原子力災害の被害者に寄り添う言葉が求められた。形だけ取り繕った言葉では、到底採択されない。そして最終日、私たちの足りなさをも用いられる神のみ業が、そこに現れた。出席者は確かにそれを見た。

 WCCの会議に参加した中で、先達から厳しく聞かされたことを思い出す。国際会議が成功するかどうかを判定する二つの指標があるという。第一に、その会議に「出来事」が起こるかどうか。不思議な出来事が人為を超えて起こる時、その会議は「成功」とされる。そして第二に、その会議が次につながるかどうか。どんなに大きな会議であっても「打ち上げ花火」となって終わると、それは「失敗」と見なされてしまう。今回の国際協議会において、確かに「出来事」が起こった。それを「次」につなげることができるかどうか。参加した私たち一人ひとりが、できることを探し始めている。韓国からの参加者は次の具体的な会議の可能性を語っていた。「原発のない世界を求める国際協議会」は、その次へとつながる運動を開始したのだと思う。(かわかみ・なおや)

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