【東アジアのリアル】 米朝首脳会談を歓迎 金喜中大主教のメッセージ 2019年7月11日

 6月30日、米国のドナルド・トランプ大統領、北朝鮮の金正恩労働党委員長、韓国の文在寅大統領が板門店に集まった。トランプ大統領のパフォーマンスという指摘もあるだろうが、朝鮮戦争休戦から66年目の6月25日を経て、「歴史的な出会い」であったことは間違いない。米朝首脳会談が朝鮮半島内で、しかも板門店で行われたのである。

 一方、日本の首相はいまだに北朝鮮との公的な会談を行わないばかりか、G20でも韓国の文在寅大統領とさえ首脳会談を行わなかった。なぜ日本の首相は、隣国との持続的な対話ができないのか、といら立ちを覚える。トランプ大統領が積極的に非核化に向けた会談を行う一方で、日本は平和構築において取り残され、孤立していくのではないかと不安が募る。

 このような米朝首脳会談についてさまざまな評価が下されている中、今回は韓国カトリック界の声明を紹介したい。この米朝韓の「歴史的な出会い」に、いかなる眼差しを向けているだろうか。30日の米朝、米韓首脳会談を受けて、韓国カトリック教会の金喜中(キム・フィジュン)大主教(日本語では大司教)は、喜びのメッセージを発表した。その一部を抜粋してみよう。

 「米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、文在寅大統領と共に朝鮮半島の分断の象徴である板門店において、停戦宣言66年ぶりに初の米朝首脳間の出会いを持ち、平和の握手を分かち合いました。去る2月、ハノイでの米朝首脳会談が決裂して、4カ月ぶりに開かれた今日の出会いは、絶え間ない対話を通して朝鮮半島の非核化と恒久平和と全世界の平和の定着を構想することにおいて、朝鮮半島だけの平和ではなく、東北アジアの平和と全世界の平和のための歴史的で、重要な足場を築く機会になりました。このような機会をつくった文在寅大統領とトランプ大統領、金正恩国務委員長の決断と勇気に感謝を申し上げます」

 同じ民族が争った血みどろの戦争、兄弟が互いに銃口を向け合った戦争が朝鮮戦争である。来年で開戦から70年を迎えようとしているが、300万から400万とも言われるいのちが犠牲となった戦争の後遺症は、朝鮮半島の大きな傷跡になっている。これにはもちろん、日本の植民地支配の影響が色濃く反映していることは言うまでもない。

 しかし、このような痛みの中において、金大主教は朝鮮半島の人々、また東アジアの人々、また全世界に向けて、希望を持って平和の呼びかけを行っている。「平和を実現する人々は、幸いである」(マタイによる福音書5:9)との福音を実現する時である、というメッセージだ。

 「私たちは朝鮮戦争勃発70年である2020年が、民族に分断の痛みから抜け出し、終戦協定と平和協定を締結させ、新たな一致と平和の時代に備える恩寵の時代を開く恩寵元年になることを祈願しました」

 今や朝鮮半島南北をめぐる終戦、非核化をめぐる課題は、東アジア、世界におけるキリスト教会の宣教的課題であるというメッセージである。

 この平和をめぐる対話に、日本のリーダーたちが参与する姿勢を示すことを祈ると共に、日本のキリスト教会もまたさらなる関心を寄せ、祈りの課題として認識し、隣国間の絶え間ない宣教的な連帯が実現するようにと願っている。

松山健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪生まれ。関西学院大学神学部卒業、同大学院博士前期課程、ウイリアムス神学館、韓国延世大学神学科博士課程修了。現在、日本聖公会京都教区聖光教会勤務、同幼稚園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版)編集長、明治学院大学キリスト教研究所協力研究員など。専門は日韓キリスト教関係史。

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