三浦綾子生誕100年に向け記念文学館に新たな「案内人」 没後20年で多彩な取り組み 2019年8月1日

 『氷点』『塩狩峠』など数々の作品を生み出し、キリスト教文学に大きな功績を残した三浦綾子さん(1922~1999年)が亡くなって20年。北海道旭川市の三浦綾子記念文学館が、より幅広い層に関心を持ってもらおうと始めた試みが話題を集めている。同館の展示をオリジナルキャラクターの「レイ」がAR(拡張現実)で案内する4カ国語対応のアプリ「三浦綾子AR」や、実在する同館スタッフやボランティアをキャラクター化したカード「綾コレカード」など、文学関連の施設ではあまり例を見ない奇抜な発想。98年の開館以来、年間1~2万人の来館者を維持してきたが、2022年の三浦さん生誕100年に向けて、若者や外国人観光客など新たなファン層を広げようと多彩な記念事業を計画している。

文学館スタッフのカードも作成
〝三浦文学を知るきっかけに〟

 「三浦文学の世界を満喫できる魅力たっぷりのアプリ」として開発した「三浦綾子AR」は、館内の展示室で写真にスマートフォンやタブレット端末をかざすと、バーチャル案内人の「レイ」が音声で解説してくれる(日本語、英語、中国語=繁体字、韓国語に対応)ほか、「オーディオライブラリー」にも接続でき、三浦綾子の小説やエッセイの朗読、作品解説や朗読劇などを音声で聴くことができる。同館事務局長の難波真実(まさちか)さんとレイが、三浦作品の力について語る「ギャラリートーク」も、企画展「ハッとして、ホッとする愛のことば展」に合わせて収録された。

 アニメ風のイラストで描かれた「レイ」は、旭川市出身の大学生(19歳)という設定。同館のボランティアガイドを務めながら学芸員を目指して勉強中など、利用者が愛着を覚えられるよう細かな人物像まで入念に作り込まれている。作画は、旭川工業高等専門学校を卒業した大学生の斎藤くるめさん。声は、声優の七瀬真結さんが務めた。「三浦綾子AR」には、レイと一緒に写真を撮れるフォトフレーム機能も付いており、記念撮影ができるというサービスまで。

 「綾コレカード」は、館長の田中綾さん(北海学園大学教授)をはじめ同館を運営する三浦綾子記念文化財団理事長の石川千賀男さん、特別研究員の森下辰衛さん(三浦綾子読者会代表)、連携協定を結ぶ後藤純男美術館館長の後藤洋子さん、ボランティアスタッフなどゆかりある人々を似顔絵入りのカードにしたもの。同館のイベントで配布されるものや、本人と出会うことでもらえるものがあり、「収集して楽しんでほしい」「文学館とその活動を身近に感じてほしい」「三浦綾子の作品を知るきっかけにしてほしい」との願いが込められている。初回発行の20種に続けて、断続的に種類を増やしていく予定だ。

 三浦文学を知らない若い世代が増える中、同館のスタッフらが知恵を出し合い、新たなファン層を開拓するためのコンテンツをそろえた。これらの新しい試みについて抵抗を覚える意見もあるかと思いきや、旧来の利用者からもおおむね好評だという。

 館長の田中さんは、「文学館がこうしたオリジナルキャラクターを作るという企画は他に先駆けた試み。むしろ新しいチャレンジに対する期待の方が大きい。若者の間では、文学自体にとっつきにくいイメージがあるが、少しでもすそ野を広げて気軽に楽しんでもらえれば」と語る。

 同館は6月3日にオープンした野外喫茶で、約100平方メートルの木製デッキにテーブル4卓(16席)を新設。館内の喫茶室で提供していたコーヒーなどに加え、「野菜と果物のスムージー」「にんじんジュース」の販売も始めた(午前9時半~午後4時)。難波さんは、「昨年秋に北海道遺産にも選定された、小説『氷点』の舞台・外国樹種見本林と共に、作品世界の雰囲気と森林浴を味わってほしい」と期待を込める。

 他にも生誕100年記念事業として、2022年までに自伝小説4部作(『道ありき』を中心に)のドラマ化、『泥流地帯』『続泥流地帯』の映画化、三浦光世70年日記の研究と出版、三浦綾子文学テーマの合唱曲化、『氷点』の舞台化などを計画している。

 三浦綾子記念文学館は6月1日から9月30日まで毎日開館(午前9時~午後5時)。入館料は大人700円、学生300円(小中高生、賛助会員、旭川大学・短期大学部学生は無料)。問い合わせは事務局(Tel 0166-69-2626)まで。

 今年10月19日(土)には午前10時から御茶の水キリストの教会(東京都千代田区)8階礼拝堂で、三浦綾子読書会主催(記念文学館後援)による「三浦綾子召天20周年記念特別集会」も開催され(開場9時半、入場無料、申込不要)、『泥流地帯』をめぐり近藤弘子さん(三浦綾子記念文学館三浦文学案内人)、日吉成人さん(三浦綾子読書会運営委員)による講演などが予定されている。催しに関する問い合わせは土屋(formlad[アットマーク]ninus.ocn.ne.jp)まで。

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