【宗教リテラシー向上委員会】 到来した「異端」の時代 川島堅二 2019年8月11日

 衝撃的なニュースが飛び込んできた。キリスト教福音宣教会(通称「摂理」、代表の鄭明析(チョン・ミョンソク)は強姦致傷罪で10年の服役歴あり)傘下の2教会、つくば始音(しおん)教会(茨城県つくば市)と大阪主愛(しゅあい)教会(大阪府守口市)が宗教法人格を取得していた。文化庁宗務課では包括団体であるキリスト教福音宣教会代表の犯罪歴は承知していたが、それぞれの個別団体で宗教法人としての要件を満たしている以上、認証を拒否することはできなかったという。

 かつては大学のサークルを活動拠点としていた「摂理」が、近年は各地で自前の建物を取得し、SNSでも「摂理」あるいは「キリスト教福音宣教会」という名称で積極的に広報活動をしていたので、遠からず法人化の予想はしていたが、ついにという思いである。

 つくば始音教会の法人登記簿の「目的等」の欄の記載は以下のようになっている。「本法人は、聖書の教義を正しく教え、キリストの福音を宣べ伝えるため、礼拝、儀式及び行事を行い、教会員を教化育成することを目的とし、その目的を達成するために必要な業務及び事業を行う」。また「包括団体の名称」の項目には「非宗教法人キリスト教福音宣教会」と記載されている。

 つくば始音教会のホームページを開いてみよう。洗練された美しいデザインのサイトではあるが、彼らが「先生」として慕う鄭明析の名はもちろんのこと、包括団体である「キリスト教福音宣教会」の記載さえ見当たらない。団体の沿革を説明すべき「Our Church」の欄には、この教会の牧師である小林和弘氏の簡単なあいさつと略歴があるのみだ。

 さらに所在地の記載のみで電話番号もメールアドレスも記されていない「Access」の欄、少しキリスト教に通じた人であれば、このホームページをチェックするだけで「怪しい」という印象を受けるだろうが、実際にこの教会に勧誘される若者たちは、大部分が宗教に無知である上、最初の接触はスポーツサークルや文化サークル、ボランティア活動であり、十分に親しくなってから少しずつ宗教団体であることが明かされていく。教会名やホームページの存在を知るのはさらにその後、十分にマインドコントロールされ「怪しい」という感覚を抱くことがなくなってからだ。

 法人化されたもう一つの大阪主愛教会のホームページの内容もほぼ同じであることから、キリスト教福音宣教会の各個教会は、包括団体名を隠して活動するというのが当面の方針のようだ。包括団体名で検索されるとすぐに「摂理」そして代表者の性犯罪歴が明らかになってしまうからだと推測される。

 法人化は、こうした正体隠しの責任を法的に問う対象が明確になったという意味では朗報と言える。キリスト者にとってさらなる課題は、この団体が「聖書の教義を正しく教え」と公に宣言していることだ。しかし、キリスト教福音宣教会の教えの本質は、「旧約」(イスラエル民族)と「新約」(ナザレのイエス)における救済使命の失敗と、これを完成する「成約」(鄭明析)の時代の到来という伝統的なキリスト教を著しく逸脱した教義である。もちろんこうした教えを説くことも信じることも自由だが、少なくともそういう教義を持った団体であることは公にすべきであろう。

 19世紀初頭に神学者シュライアマハーが予言した「異端」の時代がまさに到来している。「異端」に対するリテラシーの向上がいよいよ求められている。

川島堅二(東北学院大学教授)
 かわしま・けんじ 1958年東京生まれ。東京神学大学、東京大学大学院、ドイツ・キール大学で神学、宗教学を学ぶ。博士(文学)、日本基督教団正教師。10年間の牧会生活を経て、恵泉女学園大学教授・学長・法人理事、農村伝道神学校教師などを歴任。

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