キリスト教葬儀の可能性を模索 終活イベントで島田裕巳氏ら登壇 2019年10月31日

 国内では初となるキリスト教に特化した終活イベント「ライフエンディングフェア2019」(クリスチャンライフエンディングネットワーク協会主催)が10月14日、大田区産業プラザPiO(東京都大田区)で開催された。終活に関心を寄せる信徒ら約150人が全国各地から参加した。

 会場にはキリスト教葬儀に関わる企業・団体が15のブースを連ね、遺品整理、相続コンサルタント、後見人制度などを専門とする行政書士、自分史作成企画、ペット葬儀案内、牧師派遣会社など、終活に関するさまざまな情報を提供した。

 主催者を代表してあいさつした野田和裕氏(株式会社創世 ライフワークス社社長)は、「人生の終わりを見据えた終活は前向きに生きていくこと」とし、この催しを通じて「明日へと生きることにつながる終活のあり方を見つけてほしい」と呼び掛けた。

 ステージでは宗教学者である島田裕巳氏(東京女子大学非常勤講師)が「2025年問題から考えるキリスト教葬儀の可能性」と題して特別講演。『戒名は、自分で決める』『葬式は、要らない』『0葬――あっさり死ぬ』などの著書を通して新しい葬儀のあり方を提唱してきた同氏は、日本を含む多くの先進国で進行する「宗教離れ」の現状を報告。その原因として、先進国の平均寿命が延びたこと、「いつまで生きられるか分からないから、とりあえず死ぬまで生きる」という死生観から「自分の人生の長さを想定できるようになり、そこから逆算して生きる」という考えに移行したことなどを挙げた。

 その過程で、かつて葬儀において重要な役割を果たしてきた宗教が不要になってきたと解説。一方、死後に家族と一緒になれるという安心感を求めてキリスト教に改宗した評論家の加藤周一氏の事例も紹介した上で、「長く生きることを前提とした社会では、どう生きるべきかということをそれぞれが考えなければならない。先々の不安だけが増していく現代で、宗教のあり方を再考しなければならない時期に来ているのではないか」と結んだ。

 続くパネルディスカッションでは、島田氏に加え、東京基督教大学教授の大和昌平氏、浄土真宗倶生山(ぐしょうさん)慈陽院(じよういん)住職の浦上哲也氏が登壇。本紙編集長の松谷信司氏による司会のもと、「変わりゆく葬送文化におけるキリスト教葬儀の意義」をテーマに、それぞれの立場から意見を交わした。

 大学では親鸞の『歎異抄』も教えているという大和氏は、自身で立ち上げた葬儀研究会の成果を振り返り、教会員以外に向けてキリスト教葬儀を勧める理由と方策について語った上で、「自分らしい葬儀をしたい」という時代の要請に応えられる可能性があると提起した。島田氏は、教会外で行われているキリスト教「風」の結婚式で司式する本物ではない牧師たちを、本物の関係者が許容している現状にくぎを刺した。

 13年前に開所した「なごみ庵」で、死を疑似体験できるワークショップ「死の体験旅行」を実践し、独自に終活のあり方を模索してきた浦上氏は、キリスト教式の葬儀に参列した体験にも触れつつ、お寺を地域に開く取り組みや、台湾の病院で僧侶がチャプレンとして活躍し、お寺が訪問看護ステーションの役割を果たしているという現状も紹介した。

 終了後には、それぞれの専門的な見地からのセミナーも行われた。(クリスチャン新聞、クリスチャンプレスと共同取材)

 

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