【東アジアのリアル】 危機にある韓国の神学大学 李 恵源 2019年11月21日

 ここ数年、韓国では「神学大学」危機説が提起されてきた。その危機とは、総人口および学齢人口の減少という外的な現象のほか、大学の理事会内の対立や不正など内的な問題に起因するものであった。

 韓国の合計特殊出生率は、2018年度「0.98」に低下したが、これにより韓国はOECD加盟国中唯一の「超低出生国」となるなど、総人口の減少が他国よりも急速に進行している。

 このような出生率の低下は、学齢人口の減少にもつながるが、さらにそのことは韓国のキリスト教人口の減少と結びつきながら、神学大学の存亡の危機につながっているのが現状である。統計庁の将来推計人口によれば、韓国では2017年からの10年間で学齢人口が190万人減少することが予測されている。また、教会員数も減っていることが調査で明らかとなっているが、大韓イエス教長老会統合派の場合、ここ10年間で30万人近くの信者が減っていることが報告されている。また基督教大韓監理会(メソジスト)の場合も同様に、ここ10年間で全信者数の5分の1にあたる30万人が減少したとの調査結果が出ている。

 このような減少傾向が、神学大学に入学する学生数にも反映している。2019年の調査によれば、全国神学大学協議会に加盟する大学40校のうち10校が定員を満たしていないことが明らかとなっている。地方にある神学大学の場合、多い場合には30%を超す割合に達する「晩学の徒」(40歳以上)の入学により何とか定員を満たすといったケースも増えているという。韓国では、大学の入学定員が高校の卒業者数を超える「大学入学逆転現象」が2020年から始まるとされており、神学大学の定員割れ状況は、今後さらに深刻化することが予測されている。

 もう一つの危機は、いくつかの神学大学で起こっている学内の対立や不正に起因するものである。ある神学大学では、総長が背任および贈賄容疑で起訴され裁判にかけられたが、学校側はむしろ定款を変更して総長を擁護し、それに異議を唱えて大学の建物に立てこもった学生らを「ゴロツキ」を雇って追い出すという事件が起こった。その過程で学生らが負傷するなどの事態となり、このことは社会的な問題にまでなった。

 また別のある神学大学では、理事会と総長間の対立が訴訟にまで発展している。このような不正や学内の争いは、神学大学だけに限られた問題ではないが、大学運営をめぐる関係者間の対立や分裂は、一般大学と比較して神学大学の方がより深刻であると見る人は多い。

 以上のような問題が社会的に注目されるたびに、プロテスタントおよび神学大学に対する社会的イメージが悪化し、それがプロテスタント信者数と神学大学への入学生数の減少へと帰結している。

 韓国の神学大学は危機に直面しているが、それは自省の機会でもある。韓国教会は今、外的な膨張よりも内的な省察を行うべき時期を迎えていると言えるであろう。

 い・へうぉん 1980年、ドイツ生まれ。延世大学韓国基督教文化研究所専門研究員、上海大学宗教と中国社会研究所客員研究員。延世大学神学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院博士課程修了。神学博士(教会史)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。

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