賀川豊彦関係団体が「貧困」問う 藤田孝典氏、佐々木炎氏が講演 2019年12月12日

 キリスト教社会事業の先駆者である賀川豊彦の志と事績に学び、今日の貧困・格差の是正に向けた活動実践から、共に社会課題の解決法を模索する講演会「岐路に立つ未来――閉塞化する『貧困』の解決に向けて」が11月16日、早稲田大学(東京都新宿区)で開かれ、学生や関係団体関係者ら約100人が参加した(賀川豊彦関係団体・協同組合連絡協議会主催、早稲田大学先端社会科学研究所後援)。昨年、賀川豊彦の生誕130周年を記念し、全国の賀川豊彦記念館をはじめ、賀川とゆかりのある関係諸団体による実行委員会が企画した催しに続くもの。

 前回の香山リカ氏(精神科医)に続き今回は、福祉の現場でさまざまな実践に取り組む藤田孝典(ほっとプラス代表理事)、佐々木炎(ホッとスペース中原代表)の両氏が講師として招かれ、それぞれ「現代日本の貧困と格差――分かち合いと連帯の時代にするために」「隣人愛――生きづらさを抱える人にできること」との主題で講演した。

 藤田氏は、ワーキングプア、母子家庭、障がい者、高齢者、外国人労働者などの置かれた実態と賀川豊彦が活動していた時代との比較から、「見えにくくなってはいるものの、状況はほとんど改善されておらず、むしろ悪化している」と指摘。これまでの経験から、「現場の支援だけでは、資本主義下の構造的な暴力を温存することになる。その構造にブレーキをかけるのが共助の役割」「排除された人々をどう包摂していけるか考えなければ、日本全体が沈んでいくという危機感がある」とし、労働基準法や憲法の理念が形骸化する中で、「分かち合い」「連帯」からより踏み込んだ具体的な政策提言や権利擁護のための交渉の必要性を説いた。また、医療、教育、介護、保育、住宅などの人間にとって必要な「ベーシックニーズ」を無償化、あるいは低負担で利用できるよう社会のシステムを変えることが貧困・格差の是正に有効と訴えた。

 佐々木氏は、自身の施設で働く元受刑者の少年と共に登壇。彼は幼いころに父が失踪し、母の病気、貧困、虐待、いじめ、自傷行為などを経験し、中学2年で児童養護施設に入所。その後、傷害事件で少年院に入り、現在は保護観察中の身。退院時の所持金は8千円だったという。佐々木氏と出会い、デイサービスのスタッフとして働くまで「生まれてから19年間、一度たりとも人に必要とされてこなかった」という彼が、利用者に感謝され、人との関わりの中で生きている実感を取り戻した過程を紹介。佐々木氏自身も貧困家庭で育ち、非行グループのリーダー格となった後、重度心身障がい者との出会いを経て福祉を志したという生い立ちを打ち明け、経済的貧困だけでなく、社会(人間)関係の貧困を解消するために必要な視点を提示した。

 講演後、来場者を交え、それぞれの現場で求められている課題などについて意見を交わした。(本紙・クリスチャンプレス共同取材)

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