【特集】 台風被害と被災者支援――その時、教会は? 福島県いわき市で支援・五十嵐義隆さん 2019年12月25日

 今年10月、関東・甲信越地方及び東北地方など広範囲にわたり甚大な被害をもたらした台風19号。記録的な豪雨により各地で水害が発生。床上、床下浸水などの被害により、ただちにボランティアなどの人手が各地で必要となった。しかし、災害救助法の適用が2011年に起きた東日本大震災を超え、14都県390市区町村に上り、人の手が思うように集まらないという事態が各地で起きた。市内五つの川が氾濫し、大きな被害を受けた福島県いわき市もその一つ。いわき市内で救援、救護活動を行っている一般社団法人日中同・草・路センター代表理事の五十嵐義隆さんに話を聞いた。

 2005年、アメリカ南東部を襲ったハリケーンカトリーナなど海外の台風で被災した地域での支援活動経験のある五十嵐さんは、今回の台風19号が日本に近づく前から、「これは、もしかしたら今までに経験したことがないくらい大きな台風なのかもしれない」と予期していたという。妻の実家に身を寄せていた五十嵐さん一家だったが、そこも危険だと判断。高台にある知り合いの教会へ避難した。

 知人に避難を促すも「大丈夫だ。このくらいの雨で冠水するわけがない」と一蹴された。しかし、知人らの態度が一転したのは夜8時を過ぎたころ。見る見る自宅やその周辺が冠水を始め、あっという間に大人の腰の高さまで水が上がってきた。

 日付が変わり、午前3時には知人の一人が、床上浸水で身動きが取れないと助けを求めてきた。五十嵐さんは、避難先から車で知人の家の近くまで行くと、安全な所に車をとめ、腰まで水につかりながら救助にあたった。

 翌日もSNSなどを通して、情報を発信しながら、市内を回った。いわき市内にあるアンバサダーキリスト教会も1.3mもの床上浸水の被害にあい、断水は約2週間に及んだ。五十嵐さんは、「この教会の被害を知り、まずはここの支援を始めようと思いました。そして、この教会がある程度片付いた後、ここを拠点に支援活動ができるようになったのです」と話す。

 東日本大震災を経験している福島県だが、水害の復興支援は勝手が違う。長野県や他県の被害が報道されているのに比べ、福島県の報道は少なく、ボランティアも思うように集まらなかった。県内でボランティアを募るも、被害が広範囲に及び、なかなか集まらなかったという。

 しかし、東日本大震災当時、小学生だった青年らが「あの時は、自分たちは子どもで何も地域のためにできなかったが、今は少し大きくなり、体力もある。今度こそ、地元のために役に立ちたい」と、高校生らが中心となってボランティアチームを立ち上げた。

 「彼らの動きは、私たち大人にもよい刺激になった。彼らが動いてくれたことで、民間の力がさらに大きくなっていくのを感じた」と五十嵐さん。ボランティアの輪は、以前、同じく水害で被災した岡山県真備町にも広がった。岡山県から福島県までボランティアに来たのだった。

 また、クリスチャン政治家のネットワーク「オリーブの会」のメンバーでもある五十嵐さんは、政治家や行政への働きかけも大事な役割だと考えていた。

 「公平さを保とうとするが故の行政の対応の遅さは、東日本大震災の時と同様、今回も否めなかった。しかし、そこは民間が補うことができるということを学んでいたので、積極的に動くことができた。民間と行政の間に教会も入ることでさらに手厚い支援ができると思う」と話す。

 今回、被災した地域の中には生活困窮者が多く住む地域も含まれていたという。彼らの多くは、今も自宅に戻れないまま避難所生活を送っている。周りに身寄りがいなく、頼れる友人もいない人たちの中には、「助けて」と言いたくても、言う相手さえもいない人もいる。五十嵐さんはこう話す。

 「教会ができるのは、こうした人々から本音を聞き出し、その人たちに寄り添うことではないか。イエス様が一匹の羊さえも逃さず手を差し伸べたように、私たちはどんな境遇の人であっても、助けを求めている人たちがいるなら、そこに行って、支援をしたいと思っている。まさに『毛細血管』のような役割が必要。経済的な支援も必要だが、すべては備えられると信じている」

 ボランティア、支援金共に受付窓口はEメール=ikarashiyoshitaka@gmail.com(五十嵐)まで。支援金は大東銀行平支店(普)3012565「一般社団法人 日中同・草・路センター」まで。

(ライター 黒岩さおり)

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