伊藤詩織さん裁判 「支える会」が教会で報告集会 「死ななくてよかった」 2019年12月18日

 性暴力被害を訴えたジャーナリスト・伊藤詩織さんの民事裁判を支える会「Open the Black Box」は12月18日、東京地裁の判決を受けた報告集会を日本キリスト教会柏木教会(東京都新宿区)で開いた。原告の伊藤詩織さん、支援者、報道陣を含め約200人が参加した。

 この裁判は、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして、慰謝料など1100万円の損害賠償を求めて訴えたもの。伊藤さんが被害届を提出した2015年4月、一度逮捕状が出たものの直前で取りやめとなり、翌年7月に嫌疑不十分で不起訴とされ、検察審査会への不服申し立ても退けられたため、民事訴訟で争うことになった。鈴木昭洋裁判長は判決で、山口さんの「不法行為」を認定し、慰謝料など330万円の支払いを命じた。

 報告集会で村田智子弁護士は、判決が性暴力被害者の心理に寄り添っている点、被告による名誉棄損の主張を退けた理由として「原告が事実を公表したのは公益目的である」と明示した点を評価。「同様の裁判で闘う被害者や弁護士にとっても心強いもの」と加えた。

 礼拝堂に拍手で迎えられた伊藤さんは「一人結婚式みたい」と苦笑い。2017年の提訴後、「#MeToo」運動をはじめ、性暴力被害者が声を上げ始めたこの間の動きを振り返り、「見えている景色がまったく違う」と感慨深げに語った。今年4月には裁判での尋問を前に、ふいに襲い掛かるトラウマから自殺未遂をしていたことも打ち明け、「自分でも理解できなかった。同じように孤独で苦しむ被害者がたくさんいるが、誰も悪くない。提訴してから2年間、死ななくて本当によかった」と言葉をつまらせた。

 実名での告発に踏み切ったことでネットを介した陰湿な誹謗中傷にさらされたが、面と向かって非難してくる人はおらず、オフラインではむしろポジティブな励ましの声をたくさんかけてもらえるようになったという。伊藤さんは支援者と共に、被害者として「#Me Too」と声を上げるリスクを考慮し、「誰も被害者に、加害者に、傍観者にさせない」という意味を込めて「#We Too」を提唱してきた。

 集会には「#Ku Too」運動で職場でのパンプス強制に異を唱えた石川優実さんや、性暴力根絶を目指すフラワーデモを提唱した北原みのりさんも駆けつけ、ネットでの中傷やセカンドレイプの問題、被害の訴えにくさを改めて指摘し、「この希望を絶やさないように社会を変えていこう」と訴えた。

 「Open the Black Box」は2019年4月10日に発足。伊藤さんが刑事告訴の際にぶつかった「ブラックボックス」を開けたい、不起訴にされたことで明らかにできなかったことを明らかにしたいとの思いで裁判に臨んだことを受けて名付けられた。「性暴力被害者だけの問題でもなく、社会にある『ブラックボックス』を一つひとつ開いていく端緒にしたい」との思いも込められている。

 山口さんは判決について「納得できない」「法に触れる行為はしていない」として控訴する方針。

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