【夕暮れに、なお光あり】 我々は「年寄り」だから 島 しづ子 2020年3月1日

 2001年4月のこと。フランスのラルシュ・ホーム(ラルシュ共同体)を訪ねた際に、受け入れてくれたOさん(60代)が「せっかくだからテゼに行きましょうか?」と言ってくれた。Oさんは長年ラルシュ・ホームで働いてきた方である。私(50代)とKさん(30代男性)、Yさん(50代女性)は物珍しさにつられてテゼまでTGV(高速鉄道)、バス、徒歩で向かった。パリ北駅構内で財布を手に持って移動すると、Oさんに「それは危険です。仕舞ってください」。自分の荷物を網棚に上げようとすると「島さん、我々は年寄りなんですから、そんなことすると、男性であるKさんになぜ任せないのかと周囲の人が見ます。Kさん、私たちの荷物を網棚にお願いします」。

 こんな感じで旅が続いた。目的地に着いて「我々年寄り組みは、テントでは寒すぎますから、小屋を取りましょう。それと2泊する予定ですが、ここは1日の間に夏や冬が来るような場所です。4月ですが、寒すぎて耐えられない時は1泊で帰りましょう」と言った。

 翌朝、雪が降り、寒い中、水のシャワーに並ぶ人もいたりしてびっくりした。テゼでは世界中から来た若者たちが静かに祈り、共に賛美していてすばらしい経験をした。ブラザー・ロジェやブラザーたちが子どもたちと並んで座って祈っている姿もまぶしかった。

 が、同行していたYさんが怒り出した。「Oさん、年寄り、年寄りって言いすぎよ」。60代に入ろうとするYさん、それより少し年上のOさん。困惑した私は「Oさん、『年寄り』って言うのやめてくれませんか。Yさんが怒っていますし、私も気分はよくないです」。

 Oさんは「分かった、言わないようにする。でも我々は年寄りなのよ。若い人たちと働いていると、自分から『私は年寄りなんだ』と言わないと、理解してもらえず、無理しちゃうことがあるのよ。我々はずっと働いてきたんだから、堂々と若者の世話になっていいのよ」と言った。その時に私自身が歳を取ることをマイナスと考えていたことが分かった。

 Oさんの考え方は、ラルシュ・ホームで弱さを隠すことなく堂々と生きる仲間の姿から導かれてきた思いなのだろう。その考え方を教えてもらったおかげで、20年間老いて失敗ばかりする自分を笑い飛ばしてこられた。

「それどころか、体の中でほかよりも弱く見える部分が、かえって必要なのです」(コリントの信徒への手紙一12:22)

 しま・しづこ 1948年長野県生まれ。農村伝道神学校卒業。2009年度愛知県弁護士会人権賞受賞。日本基督教団名古屋堀川伝道所牧師。NPO愛実の会(障がい者通所施設)理事長。(社)さふらん会理事長。著書に『あたたかいまなざし――イエスに出会った女性達』『イエスのまなざし――福音は地の果てまで』『尊敬のまなざし』(いずれも燦葉出版社)。

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