核燃サイクル事業は「憲法違反」 宗教者「倫理性に反する」と提訴 2020年3月14日

 仏教やキリスト教など宗派の違いを超えた宗教者が3月9日、「原発、原子力法制は主権者の権利を保障する憲法に違反していること」「使用済み核燃料・放射性廃棄物を後世に残すことは、宗教者、信仰者としての倫理性に反すること」などを掲げ、使用済み核燃料サイクル施設(青森県六ケ所村)の運転差し止めを求めて東京地方裁判所に提訴した(略称「宗教者核燃裁判」)。被告は、全国の原発で発生した使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクル事業を行う日本原燃株式会社(本社・青森県六ヶ所村)。原告団には「原子力行政を問い直す宗教者の会」のメンバーら211人(キリスト教109人、仏教96人、神道1人、無所属5人)が名を連ねている。

 同会は昨年10月、全国の宗教者に向けて「私たち宗教者、信仰者には、人間の歴史において築き上げられた叡智を過去から受け継ぎ、未来に生きる人々に手渡す責務があります。同時に、核がもたらした悲劇を未来において繰り返させない責務もあります」「今こそ、宗教者、信仰者の実存が問われています。ドイツが倫理を尊重して政策の見直しをしたように、私たちは単なる科学技術論だけではなく、宗教倫理からも政策の転換を訴えます」と原告団への参加を呼び掛けていた。

 原告団の共同代表である岩田雅一(まさかず)氏(日本基督教団八戸北伝道所牧師)は、「再処理工場が操業し、放射能を環境に放出すれば、八戸の基幹産業であり世界有数の漁場である水産業が壊滅的打撃を被る」と危惧する。原燃のサイクル施設をめぐっては、すでに青森地裁で再処理工場の事業許可取り消しを求める「核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団」が国と係争中。同じく共同代表の中嶌哲演(てつえん)氏(真言宗御室派明通寺=福井県小浜市=住職)は、「この問題は全国の誰もが無縁ではない。大都市圏の繁栄のために原発が例外なく過疎地に押し付けられてきた。裁判では、原発が生み出した最終的なツケを青森に押し付けるというあり様を徹底的に解明したい。遅ればせながら青森の皆様と連帯し、核燃サイクルを阻止するまで共にがんばりたい」と訴えた。

 河合弘之弁護士は本裁判の意義について、「原発稼働の倫理性を問い、核といのちは共存できないとの立場から憲法判断を求める画期的で重要な裁判」と強調した上で、「宗教者には現世の幸せだけでなく、後世の人々の幸せも祈り実現させる義務がある」と語った。


宗教者核燃裁判の原告を募ります

 2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウン・爆発事故からこれまでの日々、私たちはどれほど多くの涙を見てきたことでしょう。それは、過去・現在・未来にわたって安心して生きる権利を奪われた人々の怒りの涙です。これまでの日々、私たちはどれほど多くの涙を流してきたことでしょう。それは、核の領域に踏み込んだ人間の愚かさと傲慢さに打ちのめされ、そして次の世代に手渡すのは、放射能に汚染された世界だと気づいた時に流した自責の涙です。私たちはこのような事態にまで至らせたことを大いに悔いています。では、この国や電力事業者はこの無数の涙を誠実に受けとめ、自らの責任を取る選択と覚悟を私たちに示してきたでしょうか。答えは否です。

 福島の事故が物語るように、原子力政策は多くの犠牲を生み出し、人として守るべき倫理に極めて大きく反し、平和に生きる権利を脅かすものです。私たち宗教者、信仰者には、人間の歴史において築き上げられた叡智を過去から受け継ぎ、未来に生きる人々に手渡す責務があります。同時に、核がもたらした悲劇を未来において繰り返させない責務もあります。今を生きる子どもたちに被ばくを強要し、これ以上、次世代に核のゴミを押しつけるわけにはいきません。

 今こそ、宗教者、信仰者の実存が問われています。ドイツが倫理を尊重して政策の見直しをしたように、私たちは単なる科学技術論だけではなく、宗教倫理からも政策の転換を訴えます。そして、最も環境汚染の避けられない再処理工場を始めとする核燃料サイクル(プルトニウム利用)事業の廃止を求め、日本原燃株式会社を被告とする裁判を東京地方裁判所に提訴します。

 私たちは自分の信仰を賭して、共に立ち上がり、司法の扉を叩きましょう。

2019年10月20日
原子力行政を問い直す宗教者の会

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