WCRP日本委 核廃絶に向け核軍縮・不拡散議員連盟と共同提言 2020年5月2日

 世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は4月27日、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本と参議院議員会館で会合を開き、核兵器廃絶に向けた共同提言文を採択した。この提言文は、当初開催予定だった核不拡散条約(NPT)再検討会議(米ニューヨーク・国連本部)に向けて、日本の国会議員と宗教者が合同で核兵器廃絶を呼びかけたもの。同会議は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となったものの、核兵器をめぐる国際情勢の深刻さを憂慮し、予定通り共同提言文を作成することとなった。両団体はこれまで、2015年、2019年にも共同提言文を発表している。

 会合にはWCRP/RfP日本委員会から、評議員の高見三明氏(カトリック長崎大司教区大司教)、核兵器禁止条約批准タスクフォース責任者の中村憲一郎氏(立正佼成会参務)、同タスクフォースメンバーの徳増公明氏(日本ムスリム協会会長)らを含め、国会議員や宗教者ら21人が「Zoom」を活用して一堂に会した。

 提言文では、被爆者の努力にもかかわらず、戦後75年を経てもなお地球上に多くの核兵器が現存していること、また国際社会において一部の国々に自国優先主義がはびこり、多国間における核軍縮交渉の枠組みが行き詰まりの様相を呈していることなどを指摘。一方で、ローマ教皇フランシスコによる長崎・広島への訪問や、第10回 WCRP/RfP 世界大会(ドイツ・リンダウ)の宣言文について、「核兵器廃絶への地球市民の共感を呼び起こし、世界の為政者に対しては、核兵器の存在が絶対悪であることを伝えるメッセージとなった」と評価。

 その上で、日本政府に対し、核抑止政策の信憑性について幅広い議論が行われることを要請し、「本当に人々の生命や生活を守るために必要な政策が一体何なのかについて検証されるべきである」と訴えた。また、核兵器禁止条約に関しても、「唯一の戦争被爆国である日本がこの条約を支持することを国際社会が期待していることに疑いの余地はない」とし、日本政府が「この条約が発効後1年以内に招集される『締約国会合』にオブザーバーとして出席すること」を強く求めた。全文は以下の通り。


WCRP日本委員会とPNND日本による核兵器廃絶に向けた共同提言文

 本年4月27日から5月22日にかけてニューヨークの国連本部で開催予定だった「核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議」が、新型コロナウィルス(COVID−19)の世界的流行の影響で延期され、「遅くとも2021年4月までに」開催されることになった。世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会と核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本は、「NPT運用検討会議は延期されたとしても、『核軍縮の努力』は延期されてはならない」との信念に基づいて、当初の予定通りに今回の共同提言文を発出することとした。

 NPT運用検討会議は、核兵器の拡散防止のみならず、核軍縮を進めるために至極重要な会合である。だからこそ、PNND日本とWCRP日本委員会は、核兵器廃絶に向けての政治・立法的アプローチと倫理・道義的アプローチからの協働の重要性を認識しつつ、2015年と2019年の過去2回にわたり共同提言文を発出してきた。我々は今回、昨今の核兵器に関わる国際情勢が、本年ほど危機的状況にある年はないとの共通認識のもとに、第3回目の「共同提言文」を公にするものである。

 広島、長崎に原爆が投下されてから、今年で75年を迎えた。原爆の投下によって数十万人が犠牲となり、今でも多くの被爆者の方々が後遺症に苦しんでいる現実が示すように、核兵器の使用によって起こる壊滅的な人道的結末は、過去の歴史ではなく現代の脅威なのである。しかしながら、「再び被爆者をつくらない」という信念で取り組まれる被爆者の方々の筆舌に尽くしがたいご努力にもかかわらず、依然として地球上には13,800発余りの核兵器が現存している。さらに、新たな核兵器開発の姿勢を示す国が存在している状況に憂慮の念を禁じえない。

 2020年1月に米科学誌が発表した「終末時計」の針が、午前零時(世界の終末)まで残り100秒となった。今回の時刻設定は、1947年の開始以降で最も終末に近く、人類の滅亡がまさに目前に迫っているとの危機感の表れである。昨年8月に、当時の米ソ首脳の政治的決断によって成立した中距離核戦力(INF)全廃条約が失効してしまったことや、2021年2月に有効期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長問題の先行きが見えないことなどが、その判断の要因として挙げられよう。中国を交えた新たな核軍縮の枠組みが模索されるものの、その提案に中国政府は関心を示していない。現在の国際社会においては一部の国々に自国優先主義がはびこり、多国間における核軍縮交渉の枠組みが行き詰まりの様相を呈しているのだ。

 一方、昨年11月のローマ教皇フランシスコの長崎と広島への訪問は、核兵器のない世界を創造するための希望のともし火となった。ローマ教皇は、武器の製造、改良、維持そして売却に多額の費用が使われていることは「天に対する絶え間ないテロ行為」、「核兵器を保有すること自体が倫理に反している」と語り、かつ、「戦争のために原子力を使用することは、現代において、犯罪以外の何ものでもない」と訴えた。また、ローマ教皇の長崎・広島訪問から3ヶ月ほど先んじた昨年8月、ドイツの地方都市リンダウで開催された第10回WCRP世界大会の宣言文で謳われた「他者と自己の幸福は本質的に共有されるものである」という哲理は、ローマ教皇の発言と同様に、核兵器廃絶への地球市民の共感を呼び起こし、世界の為政者に対しては、核兵器の存在が絶対悪であることを伝えるメッセージとなった。

 他方、核兵器のない世界を創造するという崇高な理想は、上記のような倫理的・道義的側面にとどまらない。今から約24年前に国際司法裁判所(ICJ)が、「核兵器による威嚇もしくはその使用は、武力紛争に適用される国際法の諸規則(中略)に一般的に違反する(後略)」との勧告的意見を発出したことからも明らかな通り、核兵器の廃絶は、法的な側面からも追求されなければならない課題である。だからこそ、核兵器の廃絶に向けて、宗教者と政治家が大きな役割を果たしていかなければならないのである。

 そうした決意のもと、我々は、日本政府に対して、以下の通り提言する。

信ぴょう性の再検証が求められる核抑止政策

 2019年の共同提言文でも謳われているが、核抑止政策についてすみやかに幅広い議論が行われることを、再度要請する。核兵器の「抑止力」を前提とする核抑止政策であるが、一方で、核兵器保有国間の相互不信の高まり、新たに核兵器の保有を目論む国や管理体制や透明性に問題がある国の存在、低出力の核弾頭の開発と配備によって核兵器使用の敷居が低くなりつつある可能性、さらには核の誤爆、盗難、事故の可能性の高まりなどの今日的状況を鑑みれば、本当に人々の生命や生活を守るために必要な政策が一体何なのかについて検証されるべきである。我々国会議員と宗教者は、率先して再検証のための対話の場をつくることに努めたい。また核抑止政策を再検証する際には、「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」が「困難な問題」として指摘した「国家が、(中略)生存を脅かされると結論づける場合、最後の手段として核兵器を使用することは合法的であるか、また適切であるか」との問題提起が留意されるべきであり、場合によっては、「3番目の被爆都市が生まれること」を許容する可能性がある非人道的な結果を招きかねないことを念頭におくべきであると強く主張したい。

「究極的な目標としての核廃絶」と核兵器禁止条約

 2017年に国連での会議で採択された核兵器禁止条約は、現在、世界の81カ国が署名、36カ国が批准し、近い将来の条約発効が見込まれている。昨年12月に日本放送協会(NHK)が実施した世論調査で、66%の国民が「参加すべき」と回答したという事実を日本政府は真摯に受け止め、核兵器禁止条約が、日本政府が標榜する「究極的な目標としての核廃絶」に有用であるかを含め検討すべきである。被爆者に対してもたらされた容認しがたい苦しみに留意し、かつ、被爆者の方々の努力を認識するこの条約が採択されたという背景から考えると、唯一の戦争被爆国である日本がこの条約を支持することを国際社会が期待していることに疑いの余地はない。日本の政治家と宗教者である我々は、日本政府が、本条約支持へと即座に方針転換できないまでも、この条約が発効後1年以内に招集される「締約国会合」にオブザーバーとして出席することを強く望みたい。本条約はNPTと対立・矛盾する条約ではなく、むしろNPT第6条の核軍縮義務を強化・補完するものであり、「究極的な目標としての核廃絶」を実現するために欠かせない法的枠組みである。「究極的な目標としての核廃絶」に向けた具体的な方策を講ずることを強く要求する。

取り組むべき喫緊の諸課題

 我々は、いわば最期の訴えとの覚悟で「ヒバクシャ国際署名」活動に奮闘されている被爆者の方々に敬意を表し、連帯をより強化するものである。また、いくつかの国で軍拡が続くなど政治的な不安定要因が多く存在する今日の北東アジア地域において、長年、PNND日本が取り組んできた「非核兵器地帯構想」の早期実現に向けて一層の努力を傾けていきたい。さらにAIロボット兵器の開発、宇宙空間の軍事利用、新たなミサイルの開発など、我々が理想とする世界に逆行している現状に対して警鐘を鳴らしたい。本来人々の幸福のためにあるべき科学技術が兵器開発などに利用されるという昨今の状況に対して、倫理的、人道的な責任を宗教者と国会議員は痛切に自覚し、これらの防止に向けた役割を果たすものである。

 有史以来これまで、人類は戦争の歴史をたどってきたという主張があるが、しかし一方、人類は、戦争を管理、規制、批判しながら「戦争の違法化」に挑み続け、ついには「非戦」の思想にたどり着いた。その過程は、平和な社会実現へのたゆまぬ希求と努力の積み重ねであった。我々は人類が紡いできたこの歴史の歩みを、さらに前進をさせるべく、「核兵器なき世界」の実現に力を尽くす決意を新たにする。

2020年4月27日
参議院会館にて合意

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