米最高裁で揺れる「性」と「宗教」の自由 2020年6月16日

  アメリカ連邦最高裁判所は6月15日、「性別を根拠にした雇用差別禁止」に関する連邦法が「アイデンティティの問題にも適用可能である」との判断を下した。ニール・ゴーサッチ判事が「同性愛者、トランスジェンダーであることだけを理由に個人を解雇することは連邦法違反である」と判決。現地の報道各社、またクリスチャニティ・トゥデイなど宗教専門紙が今後の分水嶺ともなる判決を報じている。

  ジョン・ロバーツ首席判事=写真=は語る。「どのようにすれば、政府はゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーの雇用と職場環境を守れるのでしょうか。同時に、宗教団体等が、性別、性的指向、ジェンダーに関して信念を同じくする人々を雇用する権利を守るためには、どうすれば良いのでしょうか」。「性」に関する議論において「宗教」の問題を提起し、それぞれの法的自由について問いかけた一幕だ。

  現在、連邦最高裁では「同性愛を理由に解雇された」問題が係争中。ジョージア州、ニューヨーク州、ミシガン州における3件の訴訟は「不当解雇であり、1964年の公民権法によって保護されるべき」と主張していた。「例えば、ビルという男性2人について考えてください。一方は男性と結婚したら解雇され、他方が女性と結婚すれば祝福され休暇を得るのです。これは差別になりませんか」。ジョージア州の訴訟を担当する弁護士の指摘は鋭い。

  一方で、「1964年の公民権法が想定していない事態」として反対する声も大きい。「法」を解釈によって、融通無碍なものとすることへの懸念もある。「法解釈の変更」よりは、新たに法制化すべき、つまり問題は「司法」ではなく「立法」の段階に移行したという見方もある。

  例えば「福音派」が構成する米福音同盟(NAE)、ビリー・グラハム伝道協会、また「性と宗教の自由」両立について慎重に取り組んできたキリスト教大学評議会(CCCU)などは、性的マイノリティの権利保護を目的とした法律には賛成。しかし、公民権法と「性」の拡大解釈は、教会など関係諸団体で問題となり、かえって社会的対立を深めることにるだろう、とする。

  「性」に関する差別撤廃は、宗教関係者を例外扱いすることで、すでに半数近い州によって可決・施行されている。しかし、それゆえ空文化と形骸化が指摘されている。一方で、性的マイノリティの当事者から「法制化によって個々人の判断の柔軟性が失われる」という声もある。連邦最高裁を二分する事柄でもある今回の判例は、トランプ政権下で保守化が進み、「黒人差別問題」で揺れる、現在の米国社会に大きな波紋を広げると見られる。

http://www.supremecourthistory.org/history-of-the-court/the-current-court/chief-justice-john-roberts-jr/

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