イスラエルとUAEが国交正常化 パレスチナ自治政府は合意を「強く拒否」 2020年8月16日

 イスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)が国交正常化合意に漕ぎつけた。ホワイトハウスは8月13日、イスラエル、UAEとの共同声明を発表した。イスラエルが歴史的に対立してきたアラブ諸国と国交を結ぶことを、声明は「歴史的な外交上の成果」だと強調。イスラエルがヨルダン川西岸の一部入植地の併合計画を停止することで米国の仲介を受け合意したもの。数週間以内に投資や安全保障、それに大使館の設置など、さまざまな分野で2国間の合意に調印する。

 イスラエルは1948年の建国以来、アラブ諸国と対立関係にあり、これまで、隣国のエジプトとヨルダンを除いて国交がなかった。ただ最近は、影響力を増すイランへの対抗という共通の利益のもと、イスラエルとUAEの関係が接近していた。

 共同声明は、「歴史的な外交上の成果」だと強調していて、今回の合意がイスラエルとアラブ諸国全体の関係に変化を及ぼす可能性もある。ドナルド・トランプ大統領は記者会見で、「合意はより平和で安全な中東への大きな一歩だ。氷が溶け始めたことで他のアラブ諸国やイスラム教の国がイスラエルと国交を正常化することを期待する」と述べ、中東の緊張緩和につながることに期待を示した。

 トランプ大統領は今回の合意が米国の仲介で実現したことを強調することで、秋の大統領選挙を前に外交成果をアピールするねらいもあると見られている。

 この合意についてイランの主要通信社「タスニム」は、「恥ずべき合意」と批判的に伝えた。イランは、アラブ諸国との間では同じイスラム教の国家として一定の関係を維持してきたが、アラブ諸国で中心的な役割を担うサウジアラビアとの間では、4年前、国交を断絶した。

 米国のトランプ政権が、同盟国のイスラエルと共に「イラン包囲網」とも呼べる状態を作る中で、イランは、アラブ諸国が包囲網に加わることで、地域での孤立化が進むことに警戒感を強めている、と見られている。

 パレスチナ暫定自治政府は8月13日、この合意について「強く拒否する。UAEを含め、第三者がパレスチナ人を代表して口を出す権利はない。我々はアラブ諸国やイスラム諸国に対し、緊急の会合を求めたい」との声明を発表した。

 ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの報道官は、「この合意は、少しもパレスチナの目標に貢献するものではなく、むしろイスラエルの立場に貢献するものだ。占領を続けさせ、パレスチナの人々の権利を否定し、人々への犯罪も続くことになる」と述べ激しく反発している。(CJC)

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