【訃報】 ハンス・キュンクさん(カトリック神学者、司祭) 2021年4月6日

 スイス出身の司祭、神学者、作家のハンス・キュンク神父が4月6日、ドイツ南西部チュービンゲンの自宅で死去した。93歳。同神父が創設し、会長・名誉会長を務めた「グローバル・エシック・ファウンデーション」がフェイスブックで明らかにした。死因は伝えられていない。晩年はパーキンソン病で公の場に姿を見せることはなかった。ロンドンに本拠を置く「独立カトリック・ニュース」(ICN)の報道などを紹介する。

 1928年3月19日にスイスのズールゼーで生まれたキュンク神父は、教皇ヨハネ・パウロ2世や教皇ベネディクト16世を最も鋭く批判した人物の1人。声明や著書の中で、司祭の独身義務、女性司祭の禁止、改革への抵抗、秘密主義、透明性の欠如、女性蔑視など、バチカン批判を展開した。

 1960年代にチュービンゲンで教皇ベネディクト16世、当時のジョセフ・ラッツィンガー神父と一緒に働き、学んだ経験がある。ラッツィンガー神父とともに、1962年から65年にかけて開催された第2バチカン公会議では、司教団に助言を与える最年少の神学専門家の1人であったが、公会議後間もなく、教皇の無謬性についての見解を示し、物議をかもした。

 そのため、1979年にバチカンからカトリック神学教授の免許資格「ミッシオ・カノニカ」を取り消され、カトリック大学でカトリック神学者として教えることができなくなった。以後、チュービンゲン大学でエキュメニカル(キリスト教一致運動)神学の教授を務め、1996年に退職した。

 ラッツィンガー枢機卿がローマ教皇に着座した数カ月後の2005年、ラッツィンガー枢機卿とキュンク神父は、ローマ郊外カステル・ガンドルフォで数時間一緒に過ごしたという。バチカン報道官によると、教皇とキュンク神父は「この会談の場では、教義上の問題について議論することは意味がないということで合意した」という。その代わりに、キュンク神父の最近の研究テーマである、すべての宗教的伝統を取り入れた「グローバルな倫理」を発展させる可能性と、キリスト教信仰と科学の間の対話の二つに焦点を当てた。

 2011年に引退した後、チュービンゲン大学に「グローバル・エシック・ファウンデーション」を設立し、「宗教間の平和がなければ、国家間の平和もない」という確信を示した。

 2019年、資格免許「ミッシオ・カノニカ」取り消し40周年を迎えたキュンク神父は、ドイツのカトリック・メディアに、教皇フランシスコと手紙のやりとりをして、教会法上は非公式に回復されたと感じている、と語った。

 邦訳書に『公会議に現われた教会』(1966年、エンデルレ書店)、『ゆるぎなき権威』(1973年、新教出版社)、『教会論』上・下(1976・77年、新教出版社)、『フロイトと神』(1987年、教文館)、『世界諸宗教の道――平和をもとめて』(2001年、世界聖典刊行協会)、『キリスト教思想の形成者たち』(2014年、新教出版社)、『キリスト教は女性をどう見てきたか』(2016年)などがある。

【書評】 『キリスト教:本質と歴史』 ハンス・キュンク 著/福田誠二 訳

Muesse - 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6078647による

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