【3・11特集】それぞれの10年 与えられた「出会い」これからも… 千葉正彦 2021年4月11日

 未曾有の大災害から10年。あの日以来、大切な家族・友人、住まい、生業を失い、今も不自由な避難生活を続ける人々がいる。被災支援ボランティアを機につながった教会と地域。その関係は、長い年月を経てなおも続いている。

仙台・笹屋敷と「エマオ」の仲間たち

千葉正彦(日本基督教団東北教区被災者支援センター「エマオ」元スタッフ)

 仙台市若林区に荒井笹屋敷という120世帯ほどの周囲を田畑に囲まれた小さな集落があります。海岸線から内陸に2キロほどに位置し、2011年3月11日の大津波で甚大な被害があった場所です。

 東日本大震災から3年が過ぎようとする2014年2月から2017年3月まで、日本基督教団東北教区被災者支援センター「エマオ」のスタッフをしていました。緊急支援から中長期支援への移行期で、津波被害の大きかった仙台市若林区荒井笹屋敷地区での営農再開支援として、農家の方々と農地の細かいガレキ拾いから草取り、植え付けの手伝いなどを、教会からいらっしゃるボランティアやキリスト教主義学校の学生ボランティアと一緒に行っていました。2016年の夏までは日本基督教団と宣教協約のある台湾基督長老教会(PCT)のボランティアも多く訪れてワークに参加していきました。

 仙台市は人口100万人を超える東北一の都市ですが、津波被害の大きかった沿岸部の主な産業は農業で、交通の便も悪く、津波被害の影響もあり若い世代は中心市街地への移住が進みました。年齢的、経済的な面から笹屋敷での住宅再建を断念した方もおられます。高額な農作業用機械は津波によって壊され、離農を余儀なくされた方も多くいました。現在笹屋敷地区において稲作を行っているのは二つの農業法人と1軒の兼業農家だけです。

「善意」がぶつかり合う支援の場
行動を起こす「勇気」を

 東北地方沿岸部の課題は10年より前から存在しました。価格の安い輸入農水産物。補助金なしでは成立しない農業経営。将来に希望が持てないゆえの後継者不足。それらが津波被害によって加速し、目で見えるようになりました。新しい農業経営を目指し、笹屋敷地区でも若手農家が奮闘しておりますが、決して楽観視できる現実ではありません。

 私は2017年3月に「エマオ」の活動規模縮小に伴いスタッフとしての役目を終えましたが、現在も笹屋敷地区の方たちや、「エマオ」に関わった仲間たちとの交流を続けています。

 現在、私の属している日本キリスト教会仙台黒松教会では、笹屋敷地区の農家から月2回、直接野菜を購入する活動を行っています。昨年からは有志で10坪の畑を借りて野菜作りも始めました。仙台黒松教会は住宅地にある教会です。私の知る限り農業を生業にする会員はいません。旧約聖書の時代から人間の行ってきた農作業と、それに従事する農家さんと農村地域が身近に感じられ、教会が交わりを持てるようになったことは大きな恵みだと思っています。

 昨年はコロナ禍により中止を余儀なくされましたが、笹屋敷地区の夏祭りにも積極的に参加しています。地域の青年部の皆さんと焼きそばやかき氷などの出店を行います。「エマオ」に関わった仲間たちも、この日を目指して県内外からやってきます。許されるならば、今後も笹屋敷地区の方たちと関わっていきたいと願っています。

 (自戒を込めて)スタッフ、ボランティアはそれぞれに「思い」を持って「エマオ」に集いました。支援活動の現場は「善意」がぶつかり合う場所でした。支援に対する「思い」は人それぞれです。強い「思い」は大きなパワーを持っていますが、同時に周囲を見えなくし、他人の意見が聞こえなくなる危険性も持ち合わせています。その「思い」「善意」は仲間の意見を否定し、排除する独善的な行動にもつながりました。週に1度行われていたスタッフミーティングは、いま思い出しても決して良い思い出ではありません。日本基督教団救援対策本部はそのようなスタッフの心理ケアとして臨床心理士でもある川浦弥生さん(日本基督教団林間つきみ野教会牧師)を派遣しカウンセリングをするなどの対策をとりましたが、傷つき、去っていったスタッフもいました。

 このことは決して忘れてはならない「事実」だと認識しています。この「事実」を皆さんにも覚えていただき、「思い」や「善意」によって傷つけられ、排除される人が一人でも少なくなるように努力し、同時に傷つけられる「覚悟」を持って現場に飛び込んでいただければ幸いです。

 資金面ではスタッフの人件費、活動資金として億単位のお金が使われました。全国、全世界からの献金で運営がなされました(詳しくは日本基督教団東日本大震災救援対策本部発行の全活動記録を参照)。祈りに覚えて献金してくださった方々には感謝以外ありません。献金集めに奔走してくださった日本基督教団東北教区役員の先生方や日本基督教団東日本大震災救援対策本部の先生方、アメリカの教会をまわり被害の実情を語り、献金を呼び掛けてくださったジェフリー・メンセンディークさん(現・桜美林大学准教授)など、多くの人が活動の下支えをなさいました。

 これらの金銭的・人的下支えと、現地で直接被災者に接し、ボランティアとの間を橋渡しするスタッフ。一人でも、一つでも欠けていたら2019年3月までの「エマオ」の活動は全うできなかったと思います。

 今後も自然災害は起こると思います。自然災害の被害にあわれた方々を見て見ないふりをせず、向き合う「勇気」と「覚悟」を教会という組織として持ち続けてほしいと祈るばかりです。

 被災地ボランティアに限った話ではありませんが、行動を起こす際には必ず不安が先に立ちます。情報を集め、計画を立てて一つひとつ不安を消していくことは当然ですが、最後は現地へ一歩踏み出す「勇気」が必要になります。「勇気」は自身の内から湧いてくるものではなく、真剣に祈った末に主から与えられるものだと思っています。

 世界中で紛争も起こるでしょう。そのことから目をそらさず、向き合い、自分に何ができるのか、自分は何がしたいのかを真剣に考え、祈り、一歩踏み出す勇気が私自身にも、皆さんにも与えられることを祈ります。

 ちば・まさひこ 1978年宮城県仙台市生まれ。両親ともクリスチャンの家庭で育つ。一度は教会と距離をとるものの、母方の祖父の死を機に教会へ戻り2001年受洗。14年2月から17年3月まで日本基督教団東北教区被災者支援センター「エマオ」の現場スタッフとして従事。日本キリスト教会仙台黒松教会員。

写真=被災直後の仙台市若林区荒井笹屋敷地区(日本基督教団東北教区提供)

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