【東アジアのリアル】 イデオロギー的重圧下での中国の教会学校 ヴィクター・リー 2021年5月1日

 中国では、6歳から14歳までのほぼすべての児童が「中国少年先鋒隊」のメンバーになる。この組織は、社会主義思想を受け入れ、中国共産党の指導に賛同するように子どもたちを教育することを主な目標としている。1953年に創立された中国少年先鋒隊は、文化大革命後の1978年に再開されたが、その隊歌には「私たちは共産主義の後継者」と書かれている。

 1980年代、中国経済の改革開放政策に伴い、各地の教会の礼拝も再開し始めると、温州地域の教会は「子どもグループ」を設けるようになった。その後、香港や台湾の教会との接触が増えると、各教会は教会学校の教材や教師訓練を取り入れるようになり、温州は中国の中で特に教会学校が盛んな地域となった。

 ところが97年、温州の教会は当局の取り締まりを受け、教会学校の教師たちが逮捕され、教会学校で使用していた机や椅子が没収されるという事件が起こった。伝え聞くところによると、ある人が同事件のことを全国政治協商会議副主席でもあった丁光訓主教(1915~2012年、当時の公認教会・三自愛国教会の中心的指導者)に伝えると、丁主教は「教会学校は教会の伝統である。私自身もかつて教会学校に参加していた」と弁護してくれたという。それで、この事件は次第に収束していった。

 2014年、都市開発計画に不適切という理由から、温州の多くの教会の十字架が当局により強制撤去される事件が起こり、十字架撤去は全国各省にまで次第に広がっていった。17年には、キリスト者が比較的多い河南省の教会で、「未成年の教会への立ち入りを禁止する」という貼り紙が出されるようになった。

温州の非公認教会で使われている台湾の「中国主日学(教会学校)協会」出版の教材

 また温州では、教育部門が学校の教師たちに対して「宗教を信じない」という誓約に署名するよう要求し、生徒たちにも家庭・個人の宗教状況を報告するように要求した。教師は生徒に対して「宗教信仰なし」と記入するように促し、もしキリスト者の生徒が「キリスト教」と記入した場合には、「キリスト教と記入すると将来の進学や就職に影響する」と圧力を加えた。

 近年、感謝祭やクリスマスなども、「西洋のキリスト教の背景がある」という理由から、実際にはノン・クリスチャンによる宗教色のない娯楽活動にしか過ぎないにもかかわらず、これらの行事を祝うことを禁止する通知が全国各地の学校で出された。

 この2年ほど、政府当局の宗教管理部門は、公認教会に対して、教会学校出席であれ親に同伴しての礼拝参加であれ、子どもの教会への立ち入りは許可しないようにと、教会側に要求してきた。しかも当局のこうした要求には、いかなる法律上の根拠も示されず、単に「上からの命令」ということだけが強調された。

 とはいえ、地方政府は当初は省・中央政府から求められている綿密な調査を実施はするものの、もし問題が発覚すると自分たちの管理責任が問われかねないので、教会側に調査への協力を依頼してくる。ある教会は調査の期間だけは当局に協力し、教会学校を一時休止し、調査後は以前と同様に実施するという対応をとった。大多数の教会の指導者たちは、「子供たちを来させなさい」(マタイによる福音書19:14=新共同訳)というイエス・キリストの教えを大切に守りたいと願っており、重点的監視(政府当局による会堂内への監視カメラの設置)を受けている教会の場合には政府当局の圧力に対して表向きは協力せざるを得ないが、実際には会堂の外の別の場所を見つけて子どものための教会学校を実施している。

 21年、中国共産党中央委員会はすべての児童を「中国少年先鋒隊」に入隊させるという目標を強調した。教会学校をめぐっての中国共産党と教会のせめぎ合いは、次世代に対する教育権の争奪であり、中国の政教関係において緊張をはらむ新事態といえる。双方とも容易に力を抜くことはできないだけに、明暗を分けがたい闘いはこれからも続いていく。

ヴィクター・リー 1980年代生まれ。中国内陸の農村のキリスト教の家庭に生まれ、少年時代に農村家庭教会のリバイバルを見て育つ。中学卒業後、南方の都市部で職に就き、独学で大卒資格を得た後、神学校で学び神学学士を取得。現在、浙江省温州市の家庭教会伝道師。家族は妻と二子。

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