入管法改悪に抗議 キリスト者も連帯の〝シットイン〟 「人道に反する問題」 2021年5月21日

 入管法改定案をめぐって国会内外での攻防が続いている。日本の難民認定率は0.4%(2019年)で、他の先進諸国に比べても格段に低い。長期の無期限収容問題などの入国管理行政に対しては、国連人権機関からこれまで何度も是正勧告を受けてきた。今回、名古屋入管において長期収容による体調不良から助けを求めたスリランカ女性、ウィシュマ・サンダマリさんが死去したことを受け、改めて入国管理行政に厳しい批判の目が向けられた。

 日本キリスト教協議会(NCC)は5月13日、金性済(キム・ソンジェ)総幹事と李明生(り・あきお)在日外国人の人権委員会委員長の連名で声明を発表。声明は改定案の「人道に反する重大な問題点」として、「難民申請者の3回目以降の申請が強制送還の対象とされること」「退去強制を拒否した場合、難民申請者に刑事罰が加えられるようになること」「入管長期収容の代替措置としての『監理措置』と『仮放免逃亡罪』を設置すること」の3点を挙げた。

 緊急で呼びかけられた国会前の〝シットイン(座り込み)〟に、連帯の意思を表明して加わっていたNCC議長の吉髙叶(よしたか・かのう)氏(日本バプテスト連盟市川八幡キリスト教会牧師)、マイノリティ宣教センター共同主事の渡邊さゆり氏に取材した。

外国人政策の根本的な見直しを
「いのちの選別」と分断に抗して

 3月の総会で新たに議長として選出された吉髙氏は、外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)での活動などを通じて30年以上にわたり難民・移民の問題に関わってきた体験から、管理や支配に基づき「弱みにつけ込む」日本の外国人政策を根本的に見直さなければならないと指摘する。外キ協はこれまで、外国人の人権保障と共生社会を目指し、NGOや弁護士団体と共に、外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定を求めてきた。

 同氏は、「いのちの重さを受け止める社会になれるかどうかが問われている。いかに他者と出会って変えられていくかということが、初代教会の大テーマだったはず。エキュメニカルという観点からしても、同時代に生きる諸教会を公約数で統合するのではなく、イエスの名によって生きる者として、この時代からの呼びかけにそれぞれが応えていくことが必要ではないか。寄留者をもてなす『歓待の神学』を学び直し、外国籍の人々といかに生きるかという問題は、キリスト教が今こそ背負わなければならない重要なテーマ」と話す。

国会前〝シットイン〟でスピーチする吉髙叶氏(NCC議長)

 強行採決への懸念が高まる中、国会前の〝シットイン〟に連日参加してきた渡邊さゆり氏もマイクをとり、「『難民』とひと括りにされるような人は本来いないはず。SNSで改悪への抗議を発信するようになってから、数々の差別的なコメントが寄せられた。それらのヘイトを良しとしているのは、この法案を提出している人々」と語気を強めた。同氏が本紙に寄せたコメントの全文は以下の通り。


 日本にある教会、海外のキリスト教関係59団体(5月15日現在)の賛同をもって、「入管法改悪反対教会共同声明」が4月22日に発表された(呼びかけ:マイノリティ宣教センター)。私は4月16日から移住者と連帯するネットワークの呼びかけによる法案審議中の国会前シットイン(座り込み)反対行動に参加している。

マイノリティ宣教センターが入管法改悪に危機感 教会共同声明の賛同に58団体 2021年4月21日

 座っている間、キリスト教の中で何が授受されてきたのかという問いが鋭く心に突き刺さった。「自分は大切にされたい」「満たされたい」「癒やされたい」と願い、教会につながり、メッセージを聴く人は多いと思う。一方、外国から逃れてきた人、日本で定められている規範では不法とされる外国人のいのちが大切にされないことを、私の課題と考える人はいるだろうか。私自身はどうだったかと、心が波立ち国会議事堂を直視して座った。

 キリスト教関係者の中には、収監された人々に差し入れを携え面談し、励まし続ける地道な活動を続けている方々がいる。この実践の中には、やるせなさ、如何ともしがたい歯がゆさが伴う。収監された人々の人生の物語を聴かされる。壮絶な窮状に、ただただ「また来ます」のひと言しか出せない葛藤が湧き出る。その経験は、現行法が変転され、難民を受け入れる社会、在留者の生活保障がなされることへの願いとして堆積していた。しかし、在留者を、まるでモノ化し、掃き捨てる法案を目の当たりにし、憤激の思いを抱く実践者たちもいる。

 私には、たまたま在留ミャンマー、ビルマの人々との出会いがあった。たまたまである。昨年度、コロナ禍のためにこの人々の生活はより厳しくなった。私は、在留資格の課題にもいわば巻き込まれるように共に喘いでいった。人が生きる場所を得るのにライセンスが要るなんておかしいではないか、ただその一点である。今、在留者のいのちが選別され、死を突きつけられそうになっている。この法案を許すと、誰もが「そちら側」にされ得る恐怖がこの世を覆う。入管法改悪案は、自分のいのちの世話だけに専念させる思考を私たちに植え付けてしまう「人間(じんかん)」を破壊する法案である。

 「空の鳥を見なさい」という言葉は、国会前で座している間に私の中で読み直された。人間が引いたボーダーラインを超克し、飛来する空の鳥を見なさい、と。We and Theyの分断を増強する日本社会で、キリスト教会に託されていることは明確である。だからキリスト者も、混ざって座るのである。(わたなべ・さゆり)

連日〝シットイン〟に参加した渡邊さゆり氏(マイノリティ宣教センター共同主事)

*共同通信などの報道によると政府、与党は5月18日、入管法改定案を取り下げる方針を決めた。「採決を強行すれば世論の批判を招きかねない」と判断し、今国会成立を断念したとみられる。取り下げを受けてマイノリティ宣教センターは同日、教会共同声明に賛同した諸団体や関係者に謝意を表明した上で、「現行法は課題があまりにも多く、難民は受け入れず、外国人労働者を使い捨て、移住者を排除し、不当な長期収監という過酷な現実は続いています。外国人との共生社会を阻む思考性を根っこから覆し、当事者の声に敏感に反応しながら、隣人性の高い法改正、政策、入国管理業務の現場を求めて声をあげ続けていきたいと思います」とのコメントをFacebook上に掲載した。

撮影=山名敏郎

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