新宗連、NCC、政教分離の侵害を監視する全国会議など 首相・閣僚らによる靖国神社参拝を憂慮 2021年8月15日

 76年目の「敗戦記念日」を前に、キリスト教を含む諸団体が閣僚による靖国神社参拝、菅義偉首相による「玉串料」の奉納などについて「政教分離原則」への抵触を憂慮する声明・要請文を相次いで発表した。

 新日本宗教団体連合会信教の自由委員会(鈴木裕治委員長)は7月27日、「靖国神社の政治利用に対する意見書」で「総理による靖国神社への政治的立場に基づく関与は、特定宗教の『援助・助長』にあたり、当該宗教が戦争犠牲者の慰霊・追悼においては他のものよりも価値が高く、より『正式』なものであるとの評価やイメージを政府が国民に示す行為」「政治的立場から特定宗教に関わり、またその事実を殊更喧伝する行為は、宗教の政治利用であり、特定宗教の『援助・助長』となりかね」ないと憂慮。

 靖国神社国営化阻止キリスト者グループ(浦瀨佑司委員長)は7月28日の要請文で、靖国神社について「『大日本帝国憲法』に定められていた天皇大権である統帥権の執行によって、帝国陸軍及び海軍によるアジア諸国への侵略行為の結果戦地において落命した軍人を神として追悼及び顕彰している宗教施設であることは明らか」とし、「このような宗教施設において宗教行為としての参拝等を行うことは、過去の侵略行為を正当化しようとしているものであり、現日本国憲法に基づく76年の日本国の歩みを否定するもの」と非難した。

 日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会(星出卓也委員長)も8月2日、「政党役職者らが、靖国神社に参拝したり『玉串料』を奉納したりして様々な形で関わることは、靖国神社の戦争美化思想を支持していることに他ならず、見過ごすことはできません」、政教分離の侵害を監視する全国会議(木村庸五、古賀正義代表幹事)は8月12日、「靖国神社に玉串料奉納等を行う首相らの行為は、政府と同神社が特別な関係にあることを印象づけ、援助、助長、促進する効果をもたらす公人としての行為と言わざるを得ず、日本国憲法の定める政教分離原則の違反に当たるもの」、日本キリスト教会東京中会ヤスクニ・社会問題委員会(篠塚予奈委員長)も同日「『国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない』と定めている日本国憲法第20条3項の規定に明確に違反する行為」と、それぞれ抗議した。

 声明・要請文は以下の通り。


内閣総理大臣
菅 義 偉 殿

靖国神社の政治利用に対する意見書

 内閣総理大臣をはじめ閣僚の皆様には、新型コロナウイルス感染拡大の防止、社会経済活動の再興等、連日ご尽力を賜り、誠にありがとうございます。

 私どもは多年にわたり、政府を代表する総理はじめ閣僚が、靖国神社に国の役職を表明して「公式参拝」をすることが、憲法に定める「政教分離」原則に違背し、「信教の自由」を侵害するものであることをご確認いただきたく、意見書を提出して参りました。今般あらためて、「公式参拝」に関わらず、総理はじめ閣僚らによる靖国神社への関与に対して今一度熟慮いただきたく、本意見書を提出いたしました。

 菅総理におかれましては、昨年十月、また本年四月に靖国神社の例大祭にあわせ、「内閣総理大臣 菅義偉」名で真榊を奉納されました。菅総理は官房長官時代には真榊を奉納されておられなかったとの報道もあり、総理就任後から突然始められた行為は、信仰心の故ではなく、政治的立場の故に奉納したとも受け取られかねません。

 私どもは、戦争犠牲者の慰霊・追悼は国民それぞれが自身の信仰に基づいてなされるべきと考えております。しかし、総理による靖国神社への政治的立場に基づく関与は、特定宗教の「援助・助長」にあたり、当該宗教が戦争犠牲者の慰霊・追悼においては他のものよりも価値が高く、より「正式」なものであるとの評価やイメージを政府が国民に示す行為となりえます。それは「政教分離」原則に違背し、他の宗教の「信教の自由」を侵害しうると懸念しております。またこれらの行為は純粋に宗教的なものではなく、支持者へのアピールなど、政治的な意図がうかがえ、政治家が宗教団体を政治利用することは当該宗教の宗教性を毀損するものと、深く憂慮いたします。

 また、閣僚を含む国会議員が、自らの政治的立場を掲げ靖国神社に参拝し、真榊等を捧げ、その事実をSNS等で喧伝されておられます。個々の「信教の自由」を否定するものではありませんが、政治的立場から特定宗教に関わり、またその事実を殊更喧伝する行為は、宗教の政治利用であり、特定宗教の「援助・助長」となりかねません。

 菅内閣におかれましては、「政教分離」の原則に関して今一度ご確認いただき、賢明な判断と行動をとられますよう、重ねてお願い申し上げます。

令和三年七月二十七日
新日本宗教団体連合会
信教の自由委員会 委員長 鈴 木 裕 治


菅 義偉内閣総理大臣様
加藤勝信内閣官房長官様

 76回目の敗戦記念日に当たり、菅 義偉内閣総理大臣及び各国務大臣等が靖国神社に対し、参拝あるいは供物の奉納などの行為をしないよう要請する。

 本年(2021年)は、先の15年戦争が敗戦に終わってから76年となった年です。これまで、安倍晋三前内閣総理大臣及び国務大臣等は、8月15日に、宗教法人靖国神社に対して立場を明確にせずに参拝あるいは供物の奉納をしてきました。憲法20条第3項に定めるとおり、「国の機関」である内閣総理大臣や各国務大臣あるいは副大臣などは、「いかなる宗教活動もしてはならない」のであって、その地位にある間は、宗教法人靖国神社の参拝あるいは供物の奉納などの宗教行為を禁じられています。しかも同行為の対象となっている靖国神社は、「大日本帝国憲法」に定められていた天皇大権である統帥権の執行によって、帝国陸軍及び海軍によるアジア諸国への侵略行為の結果戦地において落命した軍人を神として追悼及び顕彰している宗教施設であることは明らかです。このような宗教施設において宗教行為としての参拝等を行うことは、過去の侵略行為を正当化しようとしているものであり、現日本国憲法に基づく76年の日本国の歩みを否定するものと言わざるを得ません。また、このことは、憲法99条に定める「公務員の憲法遵守義務」に反する行為である言うべきです。

 以上の理由から、8月15日の敗戦記念日において、宗教法人靖国神社への参拝あるいは供物の奉納を、内閣総理大臣及び各国務大臣等がする事がないように、要請します。

2021年7月28日
靖国神社国営化阻止キリスト者グループ委員長 浦瀨佑司


首相・閣僚らが靖国神社を参拝し、「玉串料」等奉納しないよう要請します

 私たち日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は毎年、歴代の内閣及び閣僚に対して、憲法第20条の「政教分離原則」を厳格に守り、靖国神社及び伊勢神宮に参拝しないよう申し入れてきました。ここに改めて、憲法遵守の責務を負っている内閣総理大臣であるあなたを始め、閣僚や国会議員である政党役職者らが、靖国神社、伊勢神宮などの特定の宗教団体に、参拝、支援、介入などを行わないよう強く要望します。

 私たちはその都度、あなたや閣僚、国会議員である政党役職者らが靖国神社に参拝し、「玉串料」を奉納することにも抗議してきました。

 靖国神社は明治維新以来、天皇の側に立って死没した者たちを、神道式で「神」として祀る神社です。これまで、時の政府及び関係者らがそこに参拝し、「玉串料」奉納やその他の様々な方法で関わることによって、侵略戦争を美化・正当化し、国民を積極的に侵略戦争に動員する役割を担ってきたことは明白です。また、戦後靖国神社は、一宗教法人となりましたが、侵略・加害への反省はなく、戦前・戦時下と変わらず戦没者を神として祀り、その死を殉国行為として無条件に美化する思想を推し進めています。

 あなたや閣僚、さらに国会議員である政党役職者らが、靖国神社に参拝したり「玉串料」を奉納したりして様々な形で関わることは、靖国神社の戦争美化思想を支持していることに他ならず、見過ごすことはできません。

 私たちは、内閣総理大臣であるあなたや閣僚、さらに国会議員である政党役職者らが、敗戦の日に靖国神社や伊勢神宮へ参拝をしないよう、また「玉串料」奉納等の関わりをしないよう改めて要請します。そして、憲法の定める「政教分離原則」を厳格に遵守するよう、加えてここに要請します。

2021年8月2日
日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会
委員長 星出卓也


首相は靖国神社玉串料奉納及び参拝をしないでください

内閣総理大臣 菅義偉殿

 私たち「政教分離の侵害を監視する全国会議」は、首相や閣僚らが靖国神社に玉串料等を奉納、参拝する毎に抗議を続けています。特に「内閣総理大臣」および「自民党総裁」等の公職の肩書を提示して、靖国神社に玉串料奉納等を行う首相らの行為は、政府と同神社が特別な関係にあることを印象づけ、援助、助長、促進する効果をもたらす公人としての行為と言わざるを得ず、日本国憲法の定める政教分離原則の違反に当たるものです。私費で奉納料を支払ったとしても、公的肩書、政府関係者随行及び代行、更には公的立場を背景とする報道にて宣伝することは「公的」な行為との疑義は免れ得ません。

 また、政教分離原則は、戦前・戦時下における国家神道体制の弊害の深い反省を基に、政府と宗教の厳格な分離を定めたものです。特に靖国神社の参拝を国民に一律に強いることを通して、日本政府は国民全体に皇軍として戦死することの意義を押し広め、戦没者の死を「英霊」として顕彰することにより軍国主義を徹底する思想統制を行いました。そのような役割を担った神社に、首相や閣僚らが、玉串料等の奉納及び参拝を行うことは、戦前の国家神道体制を再び導入しようとする意図を思わせ、国家神道体制の再来を防止するために定められた政教分離原則の趣旨を顧みないことと言わざるを得ません。靖国神社は、戦後も、戦前と同様の教義を広め、推進することを目的としており、首相らが公的な立場をもって行う参拝や奉納行為が、日本国政府が靖国神社と同じ見解に立つことを印象付けるものとなっています。アジア・太平洋戦争にて日本帝国の侵略によって甚大な被害を受けたアジア諸国が日本国政府に抗議するのも、同様の効果を感じ取っていることによるものです。首相個人の価値観はいずれであっても、公的立場での首相らの行為は日本国政府の見解を代表するものとして受け止められるのが当然です。

 国政の長である首相や閣僚は、憲法尊重擁護義務を負う立場にある者として、政教分離原則を厳格に遵守し、8月15日の敗戦を記念する日に公的立場での靖国神社への参拝や玉串料奉納を決して行わないように強く求めます。

2021年8月12日
政教分離の侵害を監視する全国会議
代表幹事 木村庸五、古賀正義
事務局長 星出卓也


首相・閣僚は靖国神社への参拝・真榊奉納をしないでください

内閣総理大臣 菅義偉様

 わたしたち日本キリスト教会東京中会ヤスクニ・社会問題委員会は今年の4月21日、靖国神社春の例大祭に際し、首相、閣僚が真榊を奉納したことに抗議しました。

 間もなく8月15日の敗戦記念日を迎えますが、首相、閣僚は、靖国神社への参拝・真榊奉納をしないでください。

 首相及び閣僚が一宗教法人である靖国神社への参拝・真榊奉納をすることは、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めている日本国憲法第20条3項の規定に明確に違反する行為です。この規定の定めている政教分離原則を厳格に遵守することを求めます。

2021年8月12日
日本キリスト教会東京中会ヤスクニ・社会問題委員会
委員長 篠塚予奈

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