ハイチの米国人宣教師誘拐 ギャングによる暴力・誘拐の多発で治安悪化 2021年10月20日

 米オハイオ州ミラーズバーグにあるキリスト教援助団体「クリスチャン・エイド・ミニストリーズ」は10月17日、首都ポルトープランスからハイチの児童養護施設を訪れていた米国人16人とカナダ人1人の宣教師一行が誘拐されたことを明らかにした。

 内訳は男性5人、女性7人、子ども5人。宣教師らは児童養護施設を訪問した後、バスで空港に向かっている途中で誘拐されたとみられる。カリブ海の島国ハイチでは18日、当局が宣教師の誘拐事件について沈黙を守る中、誘拐多発に抗議する市民のデモが各地で繰り広げられた。ポルトープランスでは運送業界幹部がストライキを呼び掛けたのに応じ、小売り店舗や学校がこの日閉鎖された。

 治安問題の専門家らは、ハイチのギャング「400マオゾ」による犯行だと指摘。4月に同じく首都近郊で発生したフランス人を含む神父と修道女の一団の誘拐事件への関与も疑われている。

 RNS(レリジョン・ニュース・サービス)の報じたところでは、米報道官の一人はすでに事件について把握しているとしながら「海外におけるアメリカ国民の幸せと安全は、米国務省の最優先事項の一つ」とだけ述べ、それ以上の言及は避けた。一方、ある米高官は匿名を条件に、米国はすでにハイチ当局と接触し、事件の解決を図っていると明かした。

 ハイチでは、ギャングによる暴力や誘拐が多発し治安悪化が進んでいる。政情も不安定で、7月にはモイーズ大統領(53)が自宅で暗殺され、後任を決める大統領選は無期限に延期されている状態だ。8月にはマグニチュード(M)7・2の地震で2000人以上が死亡。政治情勢の混乱と治安の悪化を受け、米国などをめざすハイチ出身の移民が急増している。先月には、首都ポルトープランスの教会前で助祭が殺害され、その妻が誘拐されるという事件も発生していた。

 国連ハイチ統合事務所(BINUH)が先月発表した報告書によると、ハイチの国家警察に報告された誘拐被害者は、2020年全体で234人だったのに対し、2021年上半期の8カ月間で少なくとも328人に上っている。

 ギャングは勢力を拡大するにつれ、学童、医師、警察官、バスの乗客などを誘拐していると非難されている。4月には、あるギャングが5人の神父と2人の修道女を誘拐し、3日間にわたる抗議デモが行われた。

 BINUHは報告書で「政治的混乱、ギャングによる暴力の急増、食糧不安や栄養失調などの社会経済状況の悪化は、すべて人道的状況の悪化につながっている」「ハイチの治安悪化は、人員不足の警察組織だけでは解決できない」と指摘する。

 ロイター通信の報道によると、米ホワイトハウスの報道官は18日、現地の外交官チームによる捜索に連邦捜査局(FBI)が協力していると明らかにした。

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