「新天地」が牧師らを勧誘 活発なセミナー展開に広がる警戒感 2021年11月1日

 国内外の異端やカルト教団に関する情報を発信する「異端・カルト110番」の取材で、9月末から10月初めにかけて、オンライン礼拝を実施する教会に韓国人の「宣教師」「留学生」を名乗る人物から不審な勧誘が相次いでいることが明らかになった。

 この事態を受けて日本福音同盟(JEA)総主事の岩上敬人氏は10月9日、注意喚起のメールを同盟理事、専門委員会、会員教団など関係者に発信した。注意喚起の内容は次のとおり。

 「教会のYouTube配信動画を見て関心を持ちました。聖書を学びたい、先生と話したい、という連絡が来る。求道者としてコンタクトをとるのは中国人の女性」「お話がしたいとZoomミーティングのリンクを送ってくる(こちらでZoomミーティングを設定しても、必ず自分たちのZoomミーティングで行うように指定してくる)」「そのZoomミーティングに入ると韓国人宣教師を名乗る男性と通訳の女性がその人と一緒にいる」「求道者らしき人はほとんど話さず、韓国人宣教師が通訳を使って、自己紹介と自分の働きを紹介して、教会を励ましたいから協力したいと言ってくる」「継続してZoomミーティングを持ちたいと連絡してくる」

 岩上氏はこれらの手口が共通しているとして、「素性はまだまったくわかりませんが、役割分担がはっきり分かれていて(求道者役、自称韓国人宣教師、通訳)、組織的に動いている可能性もあります。手口は異端カルト的な教会へのコンタクトの仕方のようにも感じます」と警戒を呼び掛けた。

 その後、10月14、15日の「オンライン御言葉セミナー」に誘われたという牧師らの証言によって、主体は「新天地イエス教証拠(あかしの)幕屋聖殿」であることが判明。当初の案内では、韓国人の牧師が説教をするのでそれを聴いて評価してほしいという内容で、「たくさんの牧師たちが参加する。○○教会の牧師も参加する予定。若い牧師がセミナーに出てくれるとZoomの画面が明るくなるし、みんなも励まされる」「あなたの教会に献金もできる」と勧められたという。

 同セミナーの案内は全国各地の教会、牧師にメールや電話で無差別に行われた。参加者の証言から、その内容も明らかになった。

「異端」イメージの払拭に躍起?
韓国でも広がるマインドコントロール被害

 本紙にも届いたメールの案内文には、「海外で行われた『新天地オンライン御言葉セミナー』では、牧者や信仰人を含めた約3万人の方々が参加し、大変好評でした。世界のクリスチャンが今大きく動きはじめているように、日本でも共に教団・教理の垣根を越えて、同じ信仰の兄弟姉妹として、より深く学ぶ場、そして交流できる場を持ち、一緒に分かち合える場としてセミナーの開催を決定いたしました」と記されている。対象は「日本在住の牧者」としつつ、「御言葉に関心のある信仰人も可能」と付記されており、費用は無料。

 実際のセミナーでは3人の韓国人牧師による説教を日本語で表示しながら音声で聞き比べ、「どの説教がいちばん良かったですか?」と司会者が尋ねると、申し合わせたように参加者が3人目に投票する。その3人目こそが、「新天地」の創始者・李萬煕(イマンヒ)総会長で、「新天地は異端やコロナ拡大の嫌疑を持たれたが、今では何十万人の信徒がおり、韓国の牧師たちも認め始めている」との説明の後、「新天地も今はまだ理解されていなくても、必ず認められる。本日はありがとうございました」とのあいさつで散会した。

 「異端・カルト110番」が3人の説教について分析したところ、明らかに「異端的」とは分からないが、注意深く見ていくと、「新天地」が強調する教えを示唆するような「収穫」「新しい天、新しい地」などの用語が散見されたという。

 「異端・カルト110番」によると、「新天地」は従来、正体を隠した潜入スパイ「収穫の働き人」を教会に送り込み、教会員を自分たちの聖書勉強に誘ってシンパを増やしていき、最終的に教会を乗っ取るという手口を常套手段としてきたが、一方で近年、危険な異端というイメージを払拭しようとするかのように、教えの内容をアピールする動きを見せる。日本では東京、大阪、福岡に支部があり、日本人の教職者も存在。偽装潜入のほか、最近では「新天地イエス教」を名乗って牧師や大学教員宛てに文書を送り、世界平和運動への勧誘や、SNSや出会い系アプリを活用した若者への伝道、キリスト教書店での勧誘など、これまで以上に活動を拡大する様子も確認されている。

 「新天地」の伝道によってマインドコントロールを受けると、「家族をサタン呼ばわりする」「周囲にウソをつき続けなければならない生活に葛藤する」「反対する夫との離婚を指示される」など、カルト特有の家庭崩壊や人間関係の破壊が起こる。韓国では親たちが「新天地」の教会や裁判所の前で、「子どもを返せ」と訴える姿も報じられている。

 これに先立ち、9月25日に催された「ここでしか知れない聖書の秘密」と題するオンラインセミナー=写真上=について、ツイッター上で告知がなされた際、主催団体が明示されていなかったため当該アカウント(クリエイティブ集団「B-Lab.」)に「『新天地』の関係者ですか?」との問い合わせを本紙が行った。すると即日、「広報担当」を名乗る人物から以下のような返事が届いた。

 「当方の所属は、仰る通り新天地イエス教会でございます。当オンラインセミナーは聖書のみことばのみを伝える主旨であり、所属に関わらずご自身で確認してみたい、見て聞いてみたいという方向けに募集しております。今回は特に主催元を明示しておりませんので、DMにて回答とさせていただきます」

 これを受けてキリスト新聞社では、「公に参加者を募る以上は主催者の素性を明示すべきかと思いますが、いかがでしょうか?」と再び問い合わせたものの、今日に至るまで返答はない。

 「新天地」が10月15日に発表したプレスリリースによると、10月18日から12月27日にかけて毎週月曜日と木曜日に、「ヨハネの黙示録」の解説を日本語訳付きでYouTubeから配信する。その内容は「『ヨハネの黙示録』の1~22章すべての秘密について、世界で初めて証拠と共に証しするセミナー」だと予告されており、第1回目のセミナーでは、ヨハネの黙示録1章と要約に加え、李総会長が「イエス・キリストが諸教会に遣わした使者」についても説明する予定だという。「異端・カルト110番」は、「黙示録を『確かな証拠』と共に解説するというキャチコピーにつられ、信徒や求道者が興味本位で視聴して惑わされることがないよう注意が必要だ」と警鐘を鳴らしている。

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