【東アジアのリアル】 宗教統制の進む中国 香港への影響は 倉田明子 2022年1月21日

 2021年12月20日、中国で「インターネット宗教情報サービス管理法」が公布された。22年3月から施行されるこの法律は、宗教団体によるネット上での宗教関連情報の発信を規制するものだ。宗教関連情報を発信するためには省レベルの政府に申請して許可を得ねばならず、発信の対象は信徒や宗教学校の学生らに限られている。ネット上での布教活動は禁じられ、宗教関連のネット情報のシェアやリンク送信、ネット上で宗教組織や学校を運営すること、献金を募ることなども禁止された。

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 このニュースに接して、しばらくチェックしていなかった中国東北部の某市の公認カトリック教会のWeChat(中国のメッセンジャーアプリ)を見てみた。2019年に現地を訪れた際、門外の看板についていたQRコードを読み取って以来フォローしていたもので、ほぼ毎日聖書の言葉や賛美歌、説教などが配信されていた。それが、2021年7月にはそれらの配信が止まり、以後はミサに関する事務的な通知が数回、それも12月18日で止まっていた。ネット上での宗教情報の発信に対しては、すでに何らかの圧力がかかっていたのかもしれない。

某市天主教会のWeChat(一部を加工)。右側は最後に配信された聖書の文言。

 宗教統制ということでは、中国では2021年の間に三つの法律が制定された。残り二つの法律は、1月公布の「宗教教職人員管理法」と、5月公布の「宗教院校管理法」である。前者は教職者の登録制度を厳格化し、教職者が所属する宗教施設や学校を基本的に一つとする内容だ。後者は教職者を養成する宗教学校について規定したもので、国レベルか省レベルの宗教団体しか宗教学校を設立できないとされ、学校では「宗教の中国化」の方針に従うこと、また「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想教育」や「愛国主義教育」などを教えることも義務づけられている。また外国籍の教員を雇っても良いが、「反中国的活動」や「反中国的言論」に与したことがある者は雇ってはならないと明記されている。なお香港、マカオ、台湾から教員を雇う場合もこの外国籍教員の規定に準じるとされる。

 このように中国での宗教統制は厳格さを増しており、宗教の活動空間はますます狭められている。こうした状況は、香港の宗教界にも影響を及ぼすだろうか。

 年の瀬に気になるニュースを目にした。21年10月、中国公認カトリック教会の重職にある神父とカトリック香港教区の上層の教職者が、中国政府の香港の出先機関の主催によるオンライン会議に出席し、中国側の神父が香港の神父たちに習近平総書記が唱える「中国の特色ある」宗教のあるべき姿について説明した、というものだ。これは両地の教職者が公式的に初めて顔を合わせたものであり、しかもそれを中国の官僚が取り持ったということになる。このことが短期的直接的に香港のカトリック教会に何かをもたらすことはなさそうだが、今後の展開には注意しておく必要があるだろう。

 こうした中、21年12月4日、香港教区の新たな教区長に周守仁神父が叙任された。21年7月1日の本欄でも紹介したように、周神父は親中派と民主派の架け橋となることを期待されている人物である。叙任式にはカトリック信徒である林鄭月娥行政長官や曽蔭権元行政長官夫妻らも出席した。

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 叙任式で周神父は広東語と英語の両方で着任の辞を述べた。広東語では「変化が急激で大きい今の香港の状況の中では、我々が一緒になって物事に接し、判断し、計画し、実行し、検討する、という作業を繰り返していくことが必要だ」と述べ、また、若い世代への働きかけにも力を注ぐとした。英語では自らが「政府と香港の教会の架け橋になりたい」と述べる一方、グローバルなカトリック教会の一員としての香港教区、という点も強調していた。香港内部に対して、世界に対して、そして中国に対して、香港教区の現在の立ち位置を明示する発言だったように思う。

 香港の宗教的自由の空間は、今後、どうなっていくだろうか。

倉田明子
 くらた・あきこ 1976年、埼玉生まれ。東京外国語大学総合国際学研究院准教授。東京大学教養学部教養学科卒、同大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了、博士(学術)。学生時代に北京で1年、香港で3年を過ごす。愛猫家。専門は中国近代史(太平天国史、プロテスタント史、香港・華南地域研究)。

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