「バチカンと日本100年プロジェクト」 アンバサダーの加藤一二三氏が支援訴え「聖書は人生に有益な知恵の宝庫」 2022年1月30日

 1942年10月21日にバチカンと日本の国交が樹立されてから今年で80周年を迎える。角川文化振興財団(角川歴彦理事長)が2019年11月の教皇来日を契機に、バチカンと日本の文化交流の歴史を包括的に解き明かしていくことを目指して立ち上げた「バチカンと日本 100年プロジェクト」は、今後100年のさらなる友好に寄与することを願い、教皇庁文化評議会の後援のもと、バチカン使徒図書館やバチカン使徒文書館などに存在する日本関係文書の調査研究活動を中心に企画された。

 同プロジェクトでは昨年9月からクラウドファンディングを介し、過去の歴史をひも解くだけでなく、その成果を分かち合い、後世に残し、発展させていくために、「文化交流パートナー」としての参画と支援を呼び掛けている。寄せられた寄付は、同プロジェクトの調査研究や発表の費用に加え、バチカン図書館やバチカン文書館での調査研究(天正遣欧少年使節、伊達政宗の使節団、織田信長時代に贈られた文物、昭和天皇・皇室とバチカンとの深い関係など)にも使用される予定だという。

 このクラウドファンディングの応援プログラムとして1月14日、プロジェクトのアンバサダーに就任した加藤一二三氏(将棋棋士・九段、仙台白百合女子大学客員教授)による特別講演会(角川文化振興財団主催、朝日新聞社共催)が朝日新聞東京本社(東京都中央区)から生配信された。「バチカンと将棋を語る――より良い人生を歩むために」と題して語った加藤氏は、バチカンで教皇と接見した際の思い出や、30歳で洗礼を受けてから、カトリック信徒として勝負の世界にどう臨んできたかなどについて語った。

 同氏の信仰については一昨年に上梓された『だから私は、神を信じる』(日本キリスト教団出版局)に詳しいが、77歳で現役を引退する直前、「キリスト教を伝える使命がある」と励まされていると確信したとの逸話を披露。「将棋に勝たせてほしい」とは祈らない理由について、「勝たせてほしいと祈るとプレッシャーになって力が出ない。『力を尽くして戦わせてください』と祈ると勝てることが多い。将棋に限らず、仕事というのは時間の使い方が重要」と話した。

 また、「もし洗礼を受けていなかったら?」との問いには、「40歳ぐらいで行き詰まって60歳で引退していただろう」と答え、キリスト教の信仰が棋士人生に与えた影響の大きさをうかがわせた。最後に信者以外の聴衆に向け、同プロジェクトを通じて「バチカンに親しみを持ってほしい。人生に有益な知恵や格言、戒めが詰め込まれた聖書もぜひ読んでほしい」と勧めた。

 すでに国内の第一線の研究者がバチカンに派遣され、かつてない規模でバチカン図書館やバチカン文書館、布教民族博物館において調査が始められている。そこでは、天正遣欧少年使節、伊達政宗の使節団、織田信長時代に贈られた文物、昭和天皇・皇室とバチカンとの深い関係などさまざまなテーマで探索を行い、450年の歴史の見識を覆す、数々の成果が期待される。

 研究者には、バチカン・イタリア文化研究の第一人者である青柳正規氏(東京大学名誉教授)を筆頭に、イエズス会司祭の川村信三氏(上智大学教授)、シルヴィオ・ヴィータ 氏(京都外国語大学教授)、山田由香里氏(長崎総合科学大学教授)、フォントーヘンバック 氏(現地研究員)らが名を連ねる。バチカン図書館と文書館の全面的な協力のもとで、前例のない精密な調査に取り組むという。

 今回のクラウドファンディングで支援者へのリターンとして用意されたのは、ここでしか手に入らない貴重な品の数々。「La Civiltà Cattolica(ラ・チビルタ・カットリカ)」の日本版、特別セミナー聴講、公式サイトやバチカンへ献上する「報告書」への記名、文化交流パートナー限定絵葉書など。プロジェクトを担う角川文化振興財団は、「一人でも多く、この歴史ロマンの旅を一緒に続けるパートナーになっていただけたら、プロジェクトはさらに充実したものになる」と期待を込める。

 クラウドファンディングの詳細はこちらから。プロジェクト事務局は受付期間を2月22日(火)まで延長し、さらなる支援を呼び掛けている。

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