「明日は我が身?」 ウクライナ侵攻を受けて台湾のキリスト者は何を祈る? 2022年4月4日

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 台湾の教会で中国関連の政治問題に積極的に発言するところはほとんどなく、香港を離れた信者は驚いている。しかし、指導者たちは皆、平和を希求するよう呼びかけている。ロシアがウクライナに侵攻したことで、台湾のキリスト教指導者の中には中国について考えるようになった人もいる。ウクライナ侵攻の数週間前、台湾連合宣教会会長のレイ・ペン氏は、ウクライナと台湾のために祈る国際宣教師たちと共にアジアに集まっていた。その場にいた唯一の台湾人である彼に、多くの参加者が祖国の状況を心配して声をかけた。「クリスチャニティ・トゥデイ」が報じた。

 しかし、後でFacebookのニュースフィードをスクロールすると、島に戻った友人たちが火鍋の写真をアップしたり、旧正月休みに食べまくって痩せることを誓ったりしている。まるで別の台湾のことを話しているようだった。「本当に不思議でした」とペン氏は言う。「どう説明したらいいのかわからない」

 彼は、台湾人の典型的な無頓着さを、地震の多い台湾東海岸の花蓮市に住む義理の両親になぞらえる。かつてペン氏が訪ねた際に起こった地震で、すぐにその揺れの強さを心配したが、義父母たちは揺れに慣れているのか、まったく動じなかった。同様に、中国大陸の侵略の脅威にさらされて生きてきた台湾人は、あまり深く危機意識を持たずに日常生活を送っている。しかし、2月24日から変化が出始めた。

 ロシアによる侵攻で、ウクライナのニュース映像を見て、多くの台湾人が感情的に共鳴し、いつか自分たちの身にも起こり得るものだと感じた。ネット上では、「今日はウクライナ、明日は台湾だ」と宣言する人もいれば、北京が侵攻した場合、米軍が本当に台北を助けに来るのかどうか議論する識者もいる。テレビのニュース番組では、非常用持ち出し袋に何を入れるべきか(日本の缶パンなど)を推奨している。しかし、日曜日の朝、多くの教会では、ウクライナのことを祈りの項目として挙げる以外、この話題には触れていない。

 中台関係については、台湾の独立を望む人から、中国との統一を望む人まで、さまざまな政治的見解を持つ信徒が教壇に立つ。しかし、キリスト教指導者たちは、現在進行中の地政学的な対立を聖書のレンズを通してとらえ、不確実な時代に信仰に希望を見出そうとしているのである。

分断された島

 台湾はロシアのウクライナ侵攻から5000マイル離れているが、この侵略は人口2360万人の台湾の心を打ち、独自の存亡の危機を迎えている。中国は台湾を自国の領土と主張し、長い間、台湾を武力で取り込むと脅してきた。この70年間、両国の関係は一進一退を繰り返してきたが、近年、中米関係の悪化、習近平国家主席の権力強化と軍備強化、台湾の蔡英文総統の欧米との関係緊密化などの要因が重なり、脅威はますます強まってきている。昨年、米国のある提督が、中国は今後6年以内に台湾への侵攻を開始する可能性があると発言し、大きな話題となった。

 「非民主的な大国の陰に隠れて暮らす民主的な小国という状況に共感する人がいるとすれば、台湾人は非常にユニークな視点を持っている」と、現在の故郷である台北で戦争に抗議してきたウクライナ系アメリカ人のアレックス・ホメンコ氏は言う。

 台湾の多くの教会では、政治と信仰を切り離して考える。牧師は、分裂や論争を防ぐために、説教壇から政治的な話題を論じることを避けている。台湾の政治は非常に分裂しており、北京に友好的な国民党と独立志向の強い民進党の議員が法案をめぐってしばしば殴り合いの喧嘩までする。

 その根底にあるのは、アイデンティティーの問題である。民進党の支持者は、日本の植民地時代を含めて代々台湾に住んでいる家系が多く、国民党の支持者は、1949年の中国内戦終結時に国民党軍とともに中国から台湾に逃れてきた人たちとのつながりがある。このような背景が、台湾、中国、そして両国の関係をどのように見ているかに影響している。

 平和を維持するために、多くの教会は中立の立場を取ろうとする。デービッド・ドゥーン氏は、そのことを身をもって知っている。彼は中国本土以外の教会の連合体である中国世界伝道センター(CCCOWE)の総幹事として、台湾の地位を含む多くの話題について外交的である必要がある。

 その代わり、教会の共通点をも強調する。「私たちは福音によって結ばれているので、神のみ言葉に立ち返る必要がある。福音は私たちのすべての観念論に対する批判を持っている」

 ドゥーン氏は、説教の際に政治的な立場を取らず、与えられたテーマについて聖書が何を言っているかを教えるようにしている。牧師の仕事は、信徒があらゆる問題をキリスト教的世界観から見ることができるようにすることだと考えている。しかし、ある時点で、事態が緊急を要し、牧師が発言する責任が生じるかもしれない。

 「しかし、それはいつなのだろう。それは本当に芸術であり、多くの場合、事後になるまではっきりと見ることができない」と、ドゥーン氏は語る。牧師は独善的になるか、沈黙を守るかのどちらかになる危険性がある、とも加えた。「知恵が必要なのだ」

香港の亡命者たち

 6年前、神学校に通うために故郷の香港から台湾に移住したティモシー・リー氏は、台湾の教会における政治に関する沈黙に驚いたという。台湾は民主主義国家なので、教会は香港よりも時事問題に対してオープンであるだろうと考えていたのだ。しかし、教会では「政治的」なことを議論する場はさらに少なかったという。

 このため、香港から移住してきた人たちの中には、台湾の教会に入ることが難しい人もいる。中国が2020年に国家安全維持法を成立させ、香港での異論を封じた後、何千人もの人々が香港を離れた。しかし、香港のキリスト者が過去2年間に経験したことについて話したいと思った時、台湾のキリスト者はそれを快く思わず、政治について話し合うことは教会では適切ではないと信じていた。

 リー氏は現在、約100人が参加する台湾フェローシップで、香港人のための会堂を見つけるのに苦闘している。教会は、政治的な対立を避けるため、このグループとの関わりを持ちたがらない。現在は、リー氏が勤務する台北の中国福音神学校で月2回、集会を開いている。

 ウクライナ侵攻のニュースは、リー氏ら台湾在住の香港人にとって特に気になる出来事だった。彼らはすでに故郷を離れ、戻れるかどうかも分からない。戦争は、彼らが亡命した時の記憶を呼び起こし、新しい故郷が破壊に直面するかもしれないという恐怖を新たにさせた。「この2年間、中国が香港をどのように扱ってきたかを見てきただけに、台湾の香港人は中国をより恐れていると思う」とリー氏。

 「中国が香港に対してこのようなことをするとは思ってもみなかったが、彼らは国際的な反応や制裁を無視した。だから、もし国際社会がウクライナ侵攻に対して何もできなければ……台湾もこの危機に直面することになるのだろうか」

 この戦争でリー氏は、台湾にいる次世代の香港人(多くは学生)にとって備えることの重要性も痛感したという。香港の自由の消失、2019年の逃亡犯条例改正案に対するデモの精神的負荷、世界的なパンデミックのストレスなど、ここ数年で多くの経験をした彼らは、将来に絶望と不安を感じている。キリスト者として、また亡命した香港人としてのアイデンティティを見出し、台湾で何ができるかを模索し、将来の方向性を定める手助けをしたいとリー氏は考えている。

 リー氏は、地政学的な変化が台湾の玄関口に到達すれば、2019年の抗議デモの際に香港の一部の教会が行ったように、台湾の教会もこれらの問題についてより声を大にすることを余儀なくされると考えている。すでに教会がいくつかのステップを踏み出しているのを目にしている。ウクライナ侵攻後、台湾の主要な神学校はウクライナとロシアの人々のために祈ることを呼びかける声明を発表したが、これは過去の危機でもなかった珍しいことだという。

発言する長老派

 沈黙の傾向に逆行する教派の一つが、台湾最大のプロテスタント教派である台湾長老教会(PCT)だ。PCTは歴史的に台湾の主権を支持し、政治的に積極的であった。1977年の声明では、台湾を独立国として宣言するよう国民党政府に求めている。それでも、教団内では多様で、その発言力もさまざまだ。

 PCT総会事務局の研究開発部長であるン・ティアガン氏は、中国が侵略してこないことを望むが、もし侵略してきたら、台湾のキリスト者は立ち上がり、自分たちの土地を守る必要があると述べた。「私たちは、神がこの土地を与えてくださったことを理解し、神の特別な使命を求める必要がある」

 PCTは、ウクライナのためだけでなく、台湾自身の安全と平和のために祈るよう教会に呼びかける声明を発表。「ウクライナでの戦争を通して、私たちが祖国を守るために忍耐する意志を持つことができるよう、主に助けを求めてください」

 同教団はまた、援助団体と協力したり、フィンランドでウクライナ難民のために教会を開放しているPCT牧師への支援を模索するなど、祈り以外の具体的な支援方法を模索している。ン氏は、プーチン大統領のウクライナ侵攻には特に驚かなかったが、ロシアに対抗して立ち上がったウクライナ人の反応には驚かされたという。

 「台湾とウクライナは状況が違う。しかし、ウクライナの侵略によって、多くの台湾人は、敵の『いじめ』に直面したら立ち上がる必要があることを理解した。誰が助けに来るかではなく――多くの台湾人はアメリカが来ると言っているが、自分たちが自立して立ち上がることで、助けに来てくれる人がいるということが分かるかもしれない」

平和を希求する

 台湾大学で国防を教えるティモシー・リャオ氏は、現在のウクライナ紛争の結果が停戦で終わるか、ウクライナが滅亡するか、ロシアが衰退するかは別として、21世紀後半の地政学は劇的に変化すると考えている。

 それは、すでにコロナ禍によって人生を狂わされた宣教師たちが、どのように福音を伝えていくかに大きな影響を与えるだろう。リャオ氏は、宣教師はこうした世界の潮流を理解して、さまざまな国や人々に福音を伝えるための新しい戦略を見出す必要があると考えている。

 リャオ氏自身は、ウクライナの侵攻によって、台湾は戦争に直面する準備ができているか、中国と不安定な状況に直面したらどうするか、そして平和を維持する方法をどう模索するかを慎重に検討する必要があると考えている。台湾には、将来起こり得る事態を考慮して、現在の行動を慎重に判断することを求めている。

 例えば、台湾は最近、欧米主導の対露制裁に参加し、ロシアから非友好国リストに掲載された。リャオ氏は台湾がさらに孤立し、ロシアの天然ガスへのアクセスを失い、台湾からヨーロッパへの便が通常通過するロシアの領空への立ち入りが禁止されることを懸念している。

 彼は、台湾のキリスト者が紛争中の人々をすぐ悪者にしたり、英雄に仕立てたりしないようにと警告している。また、パウロが言うように、「常に敬虔と気品を保ち、穏やかで静かな生活を送るため」に「願いと祈りと執り成しと感謝とをすべての人のために」「王たちやすべての位の高い人のためにも献げ」(テモテへの手紙一2章1~2節)なければならない。

 彼の教会では、政治的な話題は控えている。しかしリャオ氏は、神学校やキリスト教シンクタンクが台湾の牧師たちに地政学の現実を教え、信徒をよりよく導くことができるようになるべきだと考えている。

 台湾の教会にはさまざまな見解があるが、ドゥーン氏は、ウクライナで起きているような危機が起これば、人々は団結できると考えている。本紙「クリスチャニティ・トゥデイ」が取材した他のキリスト教指導者たちは、台湾の教会に侵攻があった場合、欧米の教会がどのように支援できるかについて、執り成しを始めとするいくつかの提案を行った。

 「もし戦争が起きたら、中国のキリスト者はどのように祈り、台湾の信者のために思いやりを示すことができるだろうか」

 リャオ氏はこの呼びかけに、「この混沌とした環境の中で、キリスト者は高いところからの信仰を堅持する必要がある。どんな困難や戦争の危険に直面しても、私たちは皆、祈りの姿勢を保たなければならない。私たちが他国の教会のためにできることは、彼らのために祈ること、世界の平和のために祈ること」と応じた。

 世界秩序が変化する中で、キリスト者はこれからの困難な時代に備える必要があると、ドゥーン氏はダニエル書やペトロの手紙に記されているバビロン捕囚のパラダイムを引き合いに出した。

 「キリスト者の希望は、決してこの世の王国の栄枯盛衰にあるのではない。結局、神の国が来て、この世で頼っていたものがすべてなくなるということ、これが私たちの希望なのだ」

 ドゥーン氏は、これは平時に言うのは簡単だが、戦時下を生き抜くのははるかに難しいことだと指摘した。だからこそ、ウクライナの教会の苦しみを憐れむのではなく、「真の福音の輝かしい証人」として学ぶことが重要だと考えている。

(翻訳協力=中山信之)

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