戦争報道で抜け落ちた視点 日記で吐露される福音派女性たちのウクライナ侵攻 2022年4月9日

 食料の準備から火炎瓶の製造まで、クリスチャンの女性たちは抵抗運動に貢献している。一方、戦地に留まる人と逃げる人の間の分断を恐れる人もいる。「クリスチャニティー・トゥデイ」が報じた。

 ウクライナの400万人以上の難民のうち、90%が女性と子どもだ。650万人の国内避難民のうち、54%は女性。18歳から60歳の男性はロシア侵攻に抵抗するために留まることが義務づけられている。そのため、戦争について公に語るのは男性である。女性の声は日記のような私的な場に留まることが多い。

32日間の戦争

スマホでニュースをチェックしながら眠りにつく。

強制収容所、爆撃、死者などの悪夢を見る。

悪夢から目覚め、それが単なる悪い夢ではないことを思い出す。

愛するみんなが生きているといいなと思いながらスマホをチェックする。

眠る夫にキスをして命のはかなさについて考える。

顔を洗い、服を着る。

仕事に行く。仮面のような笑顔を身につけて。痛みから感情を切り離す。頭の中で痛みがホワイトノイズに変わるのを体感する。

仕事中の15分の休憩時間に家族の様子を確認する。休憩時間に泣く。

6秒:息を吸う。8秒:息を吐き出す。

仕事で1日8時間、スマホから離れられることに感謝する。同時に1日8時間、スマホから離れていなければならないことに無力感を覚える。

 3月27日、ワシントンDCのテティアナ・ディアトリク・ダルリンプルさんの日記は、こう始まった。彼女の父、タラスさんは、このような女性の視点が、戦争報道から抜け落ちていることを感じていた。

 オーバーシーズ・カウンシルの東欧・中央アジア地域ディレクターである彼は、自身の物語を語ることができる6人のウクライナ女性リーダーを募集した。東欧神学研究所、「Scholar Leaders International」、提携神学校4校と連携し、2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシの小説家、スヴェトラーナ・アレクシエービチさんの批判的観察に対抗しようとしたのだ。

 アレクシエービチさんは『戦争は女の顔をしていない』の中で、「戦争について知っていることはすべて、『男の声』……『男の言葉』で理解している」と書いている。

 ジェンダーギャップに気づく国際支援者は、あまりにも少ない。神学教育者たちの2回目のウェビナー「ロシア・ウクライナ戦争:女性たちの声」には、昨日約200人の登録しかなく、男性の神学指導者を取り上げた最初のウェビナーの半分以下であった。

 タヴリスキー・キリスト教学院の教育担当副学長マリーナ・アシクミナさんは、この差異は明らかに不公平だと指摘する。戦争に参加する女性には「二重の責任」がある。食事を作り、援助物資を運び、迷彩ネットを編むという裏方の仕事は、社会的にあまり評価されていない。しかし同時に、彼女たちは社会の精神的、感情的な健康を維持することを期待されていると、公認心理学者は言う。ウクライナの子どもたちが最も影響を受けるのは、大多数がPTSDやうつ病を経験する可能性が高いからだという。

 しかし、戦争は男性の人間性を奪うが、女性に関してはそれが不可能であるとアシクミナさんは考える。弱さと気迫のバランスが彼女たちを守り、さらには戦争の真実の声を発信させるのだ。

 「戦争は家父長制の世界観に基づく抑圧であり、蔑視であり、差別である。それでも、もし戦争に声があるとすれば、それは女性の嘆き、子どもの恐怖の叫び、母親の静かな祈りのように聞こえるだろう」

 これこそ、ヴァレリア・チョルノバイさんのような女性たちが必要とし、提供しているサービスだ。「難民は内面が破壊されている。私たちのところに来る時、彼らはしばしば話すことができない」と、社会学とキリスト教倫理学の教授は言った。「話す必要はない。ただ黙って座り、彼らの痛みを分かち合うのだ」

 彼女は夫と一緒にキーウの南東300マイルにあるドニプロに留まった。彼女にとっては、ほとんど毎日が同じことの繰り返し。人道支援物資を積んだトラックが到着する。それを教会の地下室に避難している人たちに配る。可能な限り、避難民の雇用を確保する。

 しかし、精神的な労苦の中にも喜びがある。以前は彼女のオフィスだった場所に6人の女性が寝泊まりし、6人全員がイエスを受け入れた。怪我をした女性の足のために祈った時、神の癒やしを見たこともある。

 聖書を読むことが彼女を支えている。しかし、無用な議論は避ける。なぜこのようなことが起こったのか、クリスチャンの間の分断について議論する人があまりにも多いと彼女は言う。そうすることで彼女はバランスを保っている。

 「人の痛みではなく、神の愛に目を向けること。『善きサマリア人』と共にありたい」とチョルノバイさん。

 ダルリンプルさんの叔母、オルガ・ディアトリクさんもそうだ。彼女は、弟のタラスさんとともにオーバーシーズ・カウンシルの地域副代表として、過去8年間にわたりドンバス地域におけるロシア占領下で苦しむ人々を支援するうちに、燃え尽き症候群を経験した。今は、まず自分自身を大切にしなければならないことを知っている。

 「『助けてください』というメールが何千通も押し寄せてくるのに、どうしたらいいのだろう」と彼女は言った。彼女の痛みの多くは、ロシアと関係している。この8年間は、福音派の仲間たちと国境を越えた関係を強化するために努力もした。しかし、彼女が受け取ったメールの中には、謝罪のメッセージは一つもなかった。

 「その時、私にはロシアの友人がいないのだと理解した」とディアトリクさんは言った。「私たちは8年間、ウクライナからロシアへ橋を架けていた。今度は彼らの番だ」

 平和は今もなお必要だ。たとえそう言って非難されるとしても、とテティアナ・カレニチェンコさんは言う。「対話の行動(ダイアログ・イン・アクション)」のファシリテーターとして、イスラム教徒、ユダヤ教徒、福音主義神学校と協力し、宗教間の平和構築に取り組んできた。

 ロシア人の同僚と連絡を取り合いながら、「橋」はすべての人と平和になることはできないと認めている。しかし、その役割を果たすためには、橋はそれ自身と神との間において平和でなければならない。

 彼女は、ウクライナの教会がトラウマを抱えた人々の来訪を歓迎し、彼らが静かに座って神の声を聞くことができるようになることを夢見ている。しかし、効果的な活動を行うには、沈黙だけでは十分ではない。「砲撃の中、叫ぶ準備はできているが、勇気を持って自分自身に正直でなければならない。特に祈りにおいて。怒りや悲しみの中でも、神の愛を感じられるように心を柔らかに保つのだ」

 しかし、ロシアのプロパガンダに対抗できるような強固な心も保つのだと、ウクライナ福音主義神学校のコミュニケーション学部長であるオルガ・コンデュクさんは語る。キーウのキャンパスから避難した後、彼女はネット上で通常業務を維持するために最善を尽くしている。「生き残るために戦うだけでなく、私たちが築き上げたものを守るために戦わなければならない」

 これは神学校教育だけでなく、ウクライナの価値観、経済、独立性をも指している。ロシアがそれらを全力で壊そうとする中、コンデュクさんはその誤った根拠を暴く。よく言われるのが、スラブ民族の二つの国が「兄弟」であるという考え方だ。コンセプトとしては立派なものだが、それを悪用して一つの国にしてしまい、ウクライナに主権がないかのように描いているのだ。

 また、プーチン大統領の「ロシア世界」思想が西欧のモラル低下に対抗しているという考え方も、多くのクリスチャンに支持されている。しかし、単純に比較すると、ロシアでは離婚、中絶、アルコール依存症、犯罪の割合が西欧より高い。「『ロシア世界』とは異なり、キリストは関係性と愛によって人々を救う。神学の仕事は、このような異端を根絶し、断罪することだ」とコンデュクさん。

 オデッサ神学校の広報アシスタントであるターニャ・ゲラシムチュクさんは、連行された人たちのことを思い心を痛める。「私が尊敬していた知的で教養のある人たちは、ロシアがやっていることは正しいと心から信じている。神が彼らの目を開いてくださるよう祈っている」

 彼女は、避難した義母の家のあるモルドバからコメントしている。しかし、日が経つにつれて、ゲストから難民へとステータスが変わっていくことを心に留めている。

 ゲラシムチュクさんは、「どれだけ好意的で親切な人に出会っても、どんなに居心地がよくても、『離人症』になってしまう。それは、心を掴んで決して離れない」と語る。それでも彼女たちは、戦争から逃れてきた無力な犠牲者という典型的な型にははまらない。彼女たちは積極的なボランティアであり、人を助け、聖書を教えている。

 それでも、マタイによる福音書24章は、現実を痛烈に思い出させる。「それらの日には、身重の女と乳飲み子を持つ女に災いがある」(19節)。そのような女性は、ウクライナの国内避難民の10世帯のうち1世帯に存在する。

 ゲラシムチュクさんは少なくとも安全だ。しかし、それは冷たい慰めでもある。「自分は元気で快適なのに、他の人はものすごく苦しんでいる。無力さを感じるし、罪悪感も抱く」。それは、ウクライナの女性たちを引き裂きかねない溝だ。

 ダリンプルさんの叔母で、ポーランドに避難しているリューバ・パストゥシェンコさんは、「女性同士の立場の根本的な違いから、コミュニケーションをとることはますます難しくなっている。戦争は私たちをパイのように切り刻んだ」と話す。しかし、それは単に逃げた人と留まった人との違いではない。

 リュックサックを持っていた人と、何も持たずに旅立った人との間にも差が生まれている。家族とともにいる人もいれば、見知らぬ人に頼っている人もいる。また、ウクライナに留まっている人の中にも、残ることを選択した人がいる一方で、帰る機会のない人もいる。緊張に耐えかねて、お互いのコミュニケーションを絶つ人もいる。しかし、彼女は理解を求めている。

 パストゥシェンコさんは、「私たち一人ひとりが、パニックや恐怖、変化の中で生きていくための、それぞれの感受性の閾値を持っている。自分の心に導かれて正しいことをしたのだ」と話す。

 恐怖が蔓延する中、冷静さを保つことも必要だとコンデュクさんは言う。ジャーナリストや弁護士に相談することも必要だ。火炎瓶を作ることも含まれるとアシクミナさん。

 しかし、女性が戦争でどんな声を上げようとも、その心はまず私的に表現する必要があることが多い。そのプレッシャーはすさまじく、日記を書くことが助けになる。ダリンプルさんの場合もそうだった。

食べるのを忘れる。水を飲むのを忘れる。ウクライナで食べ物も水もない人たちのために祈る。

死体の写真に慣れる。ロシアの殺戮を憎む。ロシアにもいい人はいるんだと言い聞かせる。友人の家がロシアのミサイルにやられたと連絡を受ける。憎しみが無力感に変わるのを感じる。

家に帰る。

難民のための書類を翻訳する。寄付者に近況報告を送る。

家族に電話する。家族のために強くなる。家族が私のために強くなっているのを知る。弟に愛していると伝える。パパとママに「おやすみ」を言う。空襲警報のため、現地時間午前4時30分にオンラインで見る。メールを送る。「どうか確実に隠れて」

故郷にミサイルが落ちないように祈る。ミサイルが私の町に落ちたというニュースを読む。怖いと思う。怒りを感じる。無感覚になる。

祈る。

祈る。

祈る。

スマホでニュースをチェックしながら眠りにつく。

(翻訳協力=中山信之)

ELG21によるPixabayからの画像

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