【となりの異教徒 妻は寺娘】 凸凹夫婦の歩み(2)教会時代~届け!説教題に込めた思い Ministry 2020年6月・第45号

 お寺の娘と神学生がキリスト教系大学で出会い、結婚して子育てに奮闘する――そんなありそうでなさそうな凸凹夫婦の日常から、「共生」を実践する上でのヒントを探る。

 ぼんやりと通りを歩いていると、ふと目にとまる掲示板がある。お寺の掲示板だ。そこには、お寺の紹介や集会の案内などの掲示物と並んで、筆字の短い文章が貼られている。仏教の有名な教えなのか、住職が考えた言葉なのかはわからないが、印刷された活字であふれる我々の視界に突然、手書きのしかも筆で書かれた文字が現れるのであるから、惚けていても、ついそちらに目を向けてしまう。〝静止〟しているただの掲示物のようでそうではない、僅かな息遣い、〝劫〟の如く微かな時間の流れさえ感じさせるその筆字の文章は、道行く人々に直接語りかけ、短く教えを説き、そして、そこにお寺があることを知らせている――。

 私の初任地は、栄という愛知県内最大の繁華街に建つ教会だった。地下鉄の出口の目の前にある教会であるため、教会の玄関の前を、毎日、何千人という人々が行き交っている。着任した当初は、そのような人々の往来に毎朝驚かされたものであったが、慌ただしい日々の中で、いつしか日常的な光景になっていた。

 9カ月が経とうとしていたある日、小さな事件が起こった。金曜日の夜の礼拝説教を準備していた私のもとに信徒の方からこのような一報が届けられた。「先生の説教題、ツイッターでバズってますね」。どういうことかとスマホで検索してみると、教会玄関の掲示板に貼っていたその週の礼拝案内を、あるツイッターユーザーの方が写真に撮ってツイートしたところ、それが拡散されていたのである。

 いま思うと、それほど慌てることではなかったような気もするのだが、当時の私は、大事件が起こった!と周章狼狽し、30人くらいしか入らない小礼拝堂に何百人も押し寄せたらどうしようか、会場を大きい礼拝堂に変更しようか……などとパニックに陥ってしまっていた。とりあえず、礼拝に初めて出席するという人も多いだろうからということで、説教の内容はわかりやすく、プロジェクターを駆使して少しでも興味を持ってもらえるようにしようと心がけた。

 ……迎えた本番、新来会者は3名であった。まあ、そんなもんである。だが、その3名の方は、教会の玄関に掲示されている説教題を見て、来てくださったらしい。説教題を通して与えられた、小さな出会いと気付きであった。

 その事件以来、私は、毎回、説教の準備をするときは、「説教題」にこだわることにした。またバズったら良いなという下心がなかったと言えば嘘になるし、正直に言えば「大いにあった」のだが、それ以上に、教会の玄関に掲げられた「説教題」が、我々人間の代わりにそこに教会があることを道行く人々に知らせてくれているということに気がついたからこそ、多くの非信者の方々の目にとまるような〝ユニークな説教題〟を付けようと考えたのである。無論、その審査員は、妻・明香である。明香にウケなければ、いくら自信作であってもその説教題はお蔵入りだ。

柳川 真太朗
 やながわ・しんたろう 1989年、ノンクリスチャンの家庭に生まれる。2007年4月8日受洗。2014年3月、関西学院大学大学院神学研究科前期博士課程修了。同年4月、日本基督教団 名古屋中央教会担任教師。2017年4月より、名古屋学院大学 キリスト教センター 職員(日本基督教団教務教師)。

柳川 明香
 やながわ・はるか 1990年、曹洞宗の寺の長女として生まれる。2013年3月、関西学院大学神学部卒業。結婚後、夫・真太朗と共に名古屋へ。牧師・司祭用カラーシャツ工房『HARCA』経営。

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【Ministry】 全42ページ総力特集「コロナ禍と向き合う――『新しい教会様式』の模索」 45号(2020年6月)

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