NCC、矯風会 安倍晋三元首相の「国葬」に抗議の声明 2022年7月25日 

 政府が7月22日、安倍元首相の「国葬」を9月27日に東京の日本武道館で行うと閣議決定したことを受けて、日本キリスト教協議会(=NCC、吉髙叶議長)と日本キリスト教婦人矯風会(飯田瑞穂、鏡清美理事長)はそれぞれ声明を発表し、反対の意思を明らかにした。

 NCCは25日、「安倍晋三元首相の『国葬』は人間の自由と平等を葬ります」と題する声明で、今回決定した「国葬」が、国の財政権限を国会決議に基づかせる憲法第83条と、人間の思想・良心の自由を保障する憲法第19条に違反すると指摘。国葬が強行されようとすることは、安倍政治の内実の批判的検証と、カルト団体と政治の癒着関係の真相を究明する言論を、政治権力で封殺することにつながりかねないと訴えた。

 さらに、特定の人間の国葬化は、聖書が警告する「人間の神格化」を意味し、明治憲法下の日本を敗戦まで支配した国家主義と権威主義による国民的思考停止状態への誘導ともなり得ると警告。国葬の政治的利用を懸念し、「平等なる人間の自由と尊厳に対する冒とく」であり、「暴力から民主主義の根幹を守ると発言した岸田首相の言葉とは裏腹に、むしろこの国の民主主義の根幹を揺るがすことになると言うほかありません」と、反対の意思を表明した。

 これに先立ち日本キリスト教婦人矯風会は22日、平和憲法の理念に立ち、平和と核廃絶を訴え、女性と子どもが安心して生きられる社会の実現を目指して活動している団体であることを明言した上で、「国家が一個人の死に特別な意味付けをすることで、私たちの内心の自由が侵されることを危惧」すると指摘。

 安倍元首相が「民主主義を空洞化し、日本を戦争ができる国へと転換し、立憲政治に危機を招」いたことなどを例に、岸田文雄首相が「民主主義を断固として守り抜く」とした決意表明への違和感を示し、森友学園、加計学園、桜を見る会を巡る問題で「最後まで説明責任を果たして」おらず、「数々の政治の私物化が人々に記憶されている」中で、「国葬」に多額の税金が支出されることは容認できないと抗議した。

 声明の全文は以下の通り。


安倍晋三元首相の「国葬」は人間の自由と平等を葬りま

 凶弾に倒れた安倍元首相の「国葬」を、去る7月22日、岸田内閣が閣議決定したことに、わたしたちは抗議します。明治憲法下の勅令としての「国葬令」(1926年)は、1947年12月31日をもって失効させられました。なぜならそれは人間の自由と平等の保障を謳う日本国憲法の精神に矛盾するものであったからです。にもかかわらず、岸田内閣の閣議の恣意的判断によって国葬とされる葬儀に国費を支出することは、国の財政権限を国会決議に基づかせる憲法第83条の違反です。

 国葬となれば、全国の都道府県と教育機関への弔旗・記帳台設置などを指示する通達が発出されます。それによって国民の弔意が事実上、権力によって強いられることを意味します。人の死を悼む弔いという人間の内面における精神的営みに国家権力は介入してはならないのです。それは様々な理由から弔意を表すことを拒む立場や言論を封じることにつながり、人間の思想・良心の自由を保障する憲法第19条の重大な違反となります。

 安倍元首相が首相として在任した8年8カ月の間に、憲法第9条を逸脱して集団自衛権の承認が閣議決定されました。それは戦争への道を開く安保法制(2015年9月)の制定につながりました。また、人権と民主主義の危機として多くの批判を受けた特定秘密保護法(2013年12月)、そして共謀罪法(2017年6月)が制定されました。さらに、赤木俊夫さんの無念の自死を引き起こす結果となった森友学園問題をはじめ、加計学園、そして「桜を見る会」問題など、権力の私物化として厳しく問いかけられた事件の真相は未だ不問に付されたままです。

 また、この度の銃撃事件を契機に、岸信介元首相以来、安倍元首相に至るまで、自民党をはじめとする政界が、霊感商法などで人生と家族の破産や崩壊をもたらしてきた旧統一協会と根深い関係を築いてきたことが明らかになりつつあります。今こそ政治とカルト集団との癒着の真相が徹底して究明されなければなりません。

 このようなときに安倍元首相の国葬が強行されようとすることは、安倍政治の内実の批判的検証と、特定の宗教団体、とりわけカルト団体と政治の癒着関係の真相を究明する言論を、政治権力で封殺することにつながりかねません。

 思想・良心の自由を保障する憲法第19条に違反する特定の人間の国葬化は、聖書が警告する“人間の神格化”を意味するものでもあります。そのように死者の神格化にもつながる国葬を計画する権力の企てとは、自らの政治路線で国民を上から統合しようとする権力の絶対化であります。それは、明治憲法下の日本を敗戦まで支配した国家主義と権威主義の亡霊による国民的思考停止状態への誘導とさえ懸念されます。あたかも故人の遺志を国家的に継承するかのような「国葬」の政治利用によって、憲法改定の国民的気運の形成につなげられることは決してあってはなりません。またそれは、平等なる人間の自由と尊厳に対する冒とくです。そして暴力から民主主義の根幹を守ると発言した岸田首相の言葉とは裏腹に、むしろこの国の民主主義の根幹を揺るがすことになると言うほかありません。

 以上の理由により、わたしたちはここに、安倍元首相の国葬に断固反対の意思を表明いたします。

2022年7月25日

日本キリスト教協議会
議長 吉髙 叶
総幹事 金 性済


内閣総理大臣 岸田 文雄 殿   

安倍晋三元首相の「国葬」の決定に強く抗議し反対します

 日本キリスト教婦人矯風会は、平和憲法の理念に立ち、平和と核廃絶を訴え、女性と子どもが安心して生きられる社会の実現を目指して活動している団体です。

 私達は、安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に襲撃されたことに大きな衝撃を受け不慮の死をこころから悼みます。岸田文雄首相は、直ちに「国葬」を閣議決定すると公表しましたが国会を経ずして閣議決定することは全ての国民の納得を得るものではありません。国家が一個人の死に特別な意味付けをすることで、私たちの内心の自由が侵されることを危惧します。 

 岸田文雄首相は「わが国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」と強調していますが、安倍晋三元首相の葬儀を「国葬」にすることによって民主主義を守りぬく決意表明には違和感を覚えます。むしろ、安倍晋三元首相は、民主主義を空洞化し、日本を戦争ができる国へと転換し、立憲政治に危機を招きました。

 安倍政権下で国民を重要な情報から遠ざける特定秘密保護法や集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法が強行採決され、防衛装備移転三原則が閣議決定されました。森友学園、加計学園、桜を見る会を巡る問題で国会での嘘の答弁は118回。最後まで説明責任を果たしていません。数々の政治の私物化が人々に記憶されているのです。

 安倍晋三元首相の「国葬」に多額の税金が支出されることも容認できません。

 日本キリスト教婦人矯風会は、安倍晋三元首相の「国葬」決定に強く抗議し反対します。

2022年7月22日

公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会

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