トランプ大統領以降、キリスト教ナショナリストの思想が主流に 2022年8月14日

 キリスト教原理主義の歪みと混ざり合った政府への不信感が、暴力的な「キリスト教ナショナリズム」を生み出すことがあると、ある学者が分析している。「レリジョン・ニュース・サービス」が報じた。

 ジョージア州出身でドナルド・トランプ前大統領を信奉するマージョリー・テイラー・グリーン共和党下院議員は7月23日、取材に対し、共和党は「ナショナリズムの党になる必要がある。私はキリスト教徒であり、私たちは誇り高いキリスト教のナショナリストであるべきだ」と述べた。コロラド州の共和党議員であるローレン・ボーバート氏は最近、「教会が政府を支持することになっているのであって、政府が教会を支持することはないはずだ」と言い、政教分離を「ガラクタ」と呼んだ。

 多くのキリスト教国粋主義者は、「建国の父たちは政府から宗教を締め出すことを意図していなかった」とする保守活動家デビッド・バートンの議論を繰り返している。

 トランプ大統領時代の白人ナショナリズムについて指摘してきた人種差別とコミュニケーションの研究者として、私はキリスト教ナショナリズムの増幅は当然だと思う。宗教学者のアンドリュー・ホワイトヘッド氏とサミュエル・L・ペリー氏がその著書 “Taking Back America for God” で主張しているように、トランプ支持者の間ではキリスト教ナショナリズムが蔓延している。

 ペリー氏とホワイトヘッド氏は、キリスト教ナショナリストの運動を「宗教的であると同時に民族的で政治的である」と表現し、白人至上主義という前提に依拠していることを指摘。キリスト教ナショナリズムは、特定のキリスト教への信仰と、民族主義的・民衆主義的な政治的基盤とを結合したものである。アメリカのキリスト教ナショナリズムは、アメリカが他国より優れており、その優位性は神によって確立されているという信念に基づく世界観である。この考え方では、クリスチャンだけが真のアメリカ人なのだ。

 この運動の一部は、過去数十年にわたって増加傾向にあり、特に2021年1月6日の国会議事堂襲撃事件で顕在化した、より幅広い右派過激派の暴力の歴史に適合している。キリスト教国粋主義者の大多数は、決して暴力に手を染めることはない。にもかかわらず、キリスト教国粋主義者の考え方は、キリスト教徒が国家を支配しない限り、国家がキリスト教を抑圧することになると示唆している。

包囲から民兵増強へ

 キリスト教国粋主義者による暴力は、ここ数十年、主に二つの形で現れている。一つは民兵組織への参加であり、もう一つは人工妊娠中絶者への攻撃である。現代のキリスト教民族主義者の間で民兵活動が拡大するきっかけとなったのは、1992年のルビーリッジ事件と1993年のウェイコでの包囲という二つの出来事であった。

 ルビーリッジでは、元陸軍グリーンベレーのランディ・ウィーバーが、アーリア人国家白人至上主義民兵集会を調査するATF情報提供者にのこぎり付きショットガンを販売した容疑に関して、アイダホ州の田舎の小屋で11日間連邦法執行機関とにらみ合いとなった。ウィーバーは、旧約聖書の律法の遵守と白人至上主義を強調する「クリスチャン・アイデンティティ」運動に賛同していた。クリスチャン・アイデンティティのメンバーは、聖書のいくつかの箇所の読み方に従って、姦通やLGBTQの関係に死刑を適用することを信奉している。そのにらみ合いの間、ウィーバーの妻と10代の息子は、彼が連邦当局に投降する前に射殺された。

 その1年後のウェイコ事件では、カルト教団の指導者デビッド・コレシュとその信奉者たちが、テキサス州にある同団体の施設で、再び武器使用容疑に関して連邦法執行機関とにらみ合いの状態に陥った。51日間の膠着状態の後、連邦法執行機関が施設を包囲した。争いの末、屋敷で火災が発生し、コレッシュを含む76人が死亡した。

 この二つの出来事は、全国的な民兵の増強に拍車をかけた。社会学者のエリン・カニアは次のように論じている。「ルビーリッジとウェイコの対立は、政府がその権限の範囲を越えているという信念を一部の国民に強めさせた。この考え方はアメリカ民兵運動の創設思想の一つであるから、政府と不適合者のにらみ合いの後、この運動への関心と会員数が急激に増加したのは理にかなっている」

 キリスト教原理主義の歪みと政府に対する不信感が混ざり合い、以前は異なる目標を持った二つのグループが一緒になったのだ。

キリスト教ナショナリズムと暴力

 キリスト教原理主義者と白人至上主義の民兵集団は、ルビーリッジとウェイコでのにらみ合いの後、どちらも政府の標的となったことがわかる。宗教学者のアン・バーレインが論じているように、「キリスト教右派と右翼の白人至上主義グループはともに、白人の中流階級、家族、異性愛を敵視する文化を克服しようと熱望している」のである。

 重要なのは、1995年にオクラホマシティの爆弾魔ティモシー・マクベイと共犯者テリー・ニコルズが、アルフレッド・ムラー連邦ビル爆破の動機として、ウェイコ包囲事件への復讐を挙げていることである。このテロ行為により168人が死亡、数百人が負傷した。

 1993年以来、全米の都市の中絶クリニックへの攻撃で少なくとも11人が殺害され、その他にも多数の計画があった。

 これらの計画には、複数の中絶クリニックを攻撃したマイケル・ブレイ牧師のような人々が関与している。ブレイは、1994年にフロリダの中絶クリニックの外で医師のジョン・ブリットンとそのボディーガードのジェームズ・バレットを殺害したキリスト教同一性信奉者ポール・ヒルのスポークスマンだった。

 さらに別の事件では、エリック・ルドルフが1996年のアトランタ・オリンピックを爆破した。彼は自白の中で、オリンピック広場を爆破する動機として、中絶反対と反LGBTQの見解を挙げている。これらの男たちは、裁判において、暴力を振るう動機として、キリスト教同一性運動との関わりを挙げている。

主流化するキリスト教民族主義思想

 暴力や白人至上主義との結びつきを考えると、最近の政治運動におけるキリスト教民族主義思想の存在は懸念すべきものである。トランプ氏とそのアドバイザーは、デモ参加者が暴力的に解散した後、ワシントンのラファイエット広場で聖書を手に記念撮影をしたり、牧師が彼に手を合わせる姿を見せたりといった出来事で、そうしたレトリックを主流化することに貢献した。しかし、この遺産は彼の政権を超えて続いている。

 2021年1月6日の集会に参加したペンシルベニア州の共和党知事候補、ダグ・マストリアーノのような候補者が、同じメッセージを使うようになったのだ。テキサス州やモンタナ州など一部の州では、極右のキリスト教徒候補に多額の資金が提供され、キリスト教民族主義的な考えが主流になるのに役立っている。政治と宗教の融合は、必ずしもキリスト教ナショナリズムの方法ではないし、キリスト教ナショナリズムは政治的暴力の手段でもない。しかし、時として、キリスト教ナショナリズムの思想は、その前段階として機能することがある。

*ベイラー大学准教授、サミュエル・ペリー。この時事解説で示された見解は、必ずしも「レリジョン・ニュース・サービス」の見解を反映したものではない。

(翻訳協力=中山信之)

Alexandre Cerqueira usina3によるPixabayからの画像

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