【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 ウクライナ情勢にみる「関心の格差」と隣人愛 キョウカイバイオレット 2022年9月22日

関心の格差

 ウクライナ情勢に心を痛めている。

 ロシア軍の侵攻から早くも7カ月が過ぎた。今なお現地から悲惨な報道が続いている。テレビや新聞で関連情報が扱われない日はない。日本もウクライナからの避難民を受け入れている。停戦協議は進まず、先行きは一向に見えない。

 日本に住む私たちに、何ができるだろうか。そう祈りに覚えるキリスト者は少なくないと思う。

 ロシア軍の侵攻を非難する声は、侵攻当日から世界中で上がったと記憶している。そして多くの国が経済制裁に踏み切った。その即時的な関心の高まりには目を見張るものがあった。平和を希求し、暴力に反対する世界の良心はまだまだ健在なのだ、と私は思った。

 けれどそんなウクライナを案ずる声に対して、「中東で長く続く紛争については何も言わないのか」「ミャンマーや香港については何も言わないのか」といった声も上がった。私はこの種の非難にずっと違和感を覚えてきた。なぜなら他人が持つ関心や問題意識に水を差す、嫌がらせに近い行為に思えたからだ。それに一人の人間が、世界中の全ての事柄を把握し、その全てに同じ熱量の関心を持つのは不可能ではないか。その意味で、関心の押し売りのようにも思えたからだ。

 しかし今回のウクライナ情勢を追う中で、私は「関心の格差」に気づいた。

 メディアが大きく取り上げる事柄、大勢が注目して声を上げる事柄、有名人が指摘する事柄に、私たちは関心を持ちやすい。逆にほとんど取り上げられない事柄には、たとえそれがどんなに大きな問題であっても、私たちは関心を向けない。もしかしたら存在を知ることさえない。その点で、私たちの関心は操作されていると言える。関心には格差があるのだ。

 ウクライナの件では「白人ファースト」を指摘する声もある。西欧諸国がウクライナに強力に連帯するのは、同じ白人が窮地に立たされているからだ、という指摘だ。実際、アジアや中東などの国々で同じようなことが起きたら、果たしてこれほど世界的な関心を集めただろうか。現にミャンマーや香港に対して、世界も私たちも、ウクライナに対してと同じだけの関心を向けていないし、行動もしていないのではないだろうか。

 もちろんウクライナ情勢に心を痛めるのはキリスト者として自然なことだと思う。ただ、目の前にポンと置かれた関心事に無造作に飛びつき、それで隣人愛を実践した気になるのも早計だと思うのだ。情報や関心が操作されやすいこと、そこに格差や差別があること、本当は目を向けるべき事態が世界中で、あるいは身近なところで起こっていることに、もっと敏感でなければならない。私はそう考えるようになった。

 関心と隣人愛

 尊敬する友人の言葉を紹介したい。

 「隣人愛とは、隣人を必要とする人の隣人になることだ」

 自分が関心を向けやすい相手、好ましい相手に積極的に手を差し伸べるのは簡単なことだ(もちろんそれも善行だし、犠牲を伴うことかもしれないけれど)。しかしその関心と好意の死角に、ほとんど見向きされない、好意を持たれない、けれど辛い状況に立たされて助けを必要としている人がいるかもしれない。私は彼らを無視してしまっているかもしれない。

 聖書は言う。「自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあろうか」(マタイによる福音書5章46節)

 真の隣人愛とは、自分が愛しやすい相手に寄り添って満足することでなく、今切実に助けを必要としている人に目を留め、その事実に直面することから始まるのではないだろうか。友人の言葉に、私はそう気づかされた。

 私は吃音症のせいで若い頃は葛藤の連続だった。当時、吃音症はまだよく認知されておらず、その実態はほとんど知られていなかったと思う。私自身それを障害だと思わず、「うまく喋れないのは自分に問題があるからだ」と自分自身を責めていた。あの時「あなたは悪くない」と寄り添ってくれる人がいたら、どんなに救われただろう。私は自分で認識していなかったけれど、私の苦しみに気づいてくれる「隣人」を必要としていたのだ。

 さて、私たちが関心を持って積極的に助けたい「隣人」でなく、私たちの関心と助けを今切実に必要としている「隣人」は、誰だろうか。

キョウカイバイオレット
 紫乃森ゲール(しのもり・げーる) 医療現場で傷つき病める人々を支え、代弁者として立つ看護系はぐれキリスト者。あらゆる差別、無理解、誤解と日々戦う。冷静と情熱の中間くらい。ツンデレ。武器:痛くない注射/必殺技:ナイチンゲール型四の字固め/弱点:パクチー

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