【検証 〝協会〟の実相と教会の課題】 拒絶ではなく救いと慰めを 日本基督教団カルト問題連絡会世話人 豊田通信さん 2022年10月11日

「関係ない」ではなく自己点検を
〝正統〟でもカルト化した教会多数

 統一協会は2000年の岡山高裁判決(翌年に最高裁において確定)で、「〔統一協会〕の信者らによる一連の勧誘、教化行為あるいは経済活動は、〔統一協会〕自らが指示していると推認してもやむを得ない状況があるといえなくもないが、少なくとも、〔統一協会〕の宗教活動ないしはそれと密接に関連する布教活動の一環として行われ、かつ、〔統一協会〕の教義、信仰の実践活動と認められる」と認定されています。また、原告である元信者の精神的損害について、「〔元信者〕は、〔統一協会〕の信者らが有機的一体としてなした不法行為によって、宗教選択の自由を不当に侵害されたうえ、その人格権を侵害され、正常な日常生活を回復した後で回顧すれば、霊感商法等の反社会的経済活動をする集団に心ならずも所属しその一員として活動することとなったことにつき自責の念に苛まれ、〔統一協会〕の信者組織からの勧誘行為に端を発して棄教するまでの間、貴重な人生の日々を〔元信者〕にとっては後悔のみ残る時間としてしか過ごせないことを余儀なくされたものとして、耐え難い悔しさを残している」ことも認定されています。

 経済被害は深刻です。最近スクープされた2011年の統一協会の内部資料によると、警察の摘発後も毎年約600億円が集められています。各地域、各教会に課せられた集金ノルマに基づき、誰にいつ・いくら献げさせるかが決められ、信徒はそこに誘導されていくのです。昨年までに全国霊感商法対策弁護士連絡会に相談された被害額は約1237億円ですが、それは氷山の一角でしかありません。宗教の装いをした巨大な集金装置の中で自らが被害者であることを自覚せず、加害者となっていることを省みず、活動を続けている信徒が多くいるのです。

 また、経済被害のみが統一協会問題なのではありません。勧誘や教化、献金の過程においても、霊感商法におけるものと同質の手法が用いられています。多くの人権侵害や虐待、家庭崩壊や生活破綻の実態があります。活動中に命を失った青年たちがいます。二世・三世たちの呻きが聞こえています。その活動の全範囲において違法性が認定され、被害者を生み出し続けている団体が、自らの「信教の自由」を盾にして社会を攻撃し続けていることは、決して容認されるべきではありません。2009年に統一協会が出したコンプライアンス宣言が何かを反省してのものだったとすれば、現役信者を含むすべての被害者に謝罪と賠償を行うべきではなかったでしょうか。しかし、その宣言以降にも3000件を超える相談が寄せられているという事実から、統一協会の自浄能力に期待することはできません。教義に基づく彼らの信仰の実践が違法性をはらんでおり、深刻な被害をもたらしてきた実態を見てきた私は、統一協会の宗教法人認可の取り消し・解散こそ妥当な判断だと確信しています。

430万円の献金の見返りに「授かる」統一協会の天福函(チョンボッカム)

 けれども、どうか誤解しないでください。統一協会の信徒たちやその家族たちは被害者です。彼らに社会からの憎悪や攻撃が向けられるのは理不尽です。断罪されるべきは統一協会の悪質さであって、神様の憐れみと救いを求めてだまされた一人ひとりではありません。ましてや信者の家庭に生まれたという理由により、若者たちが差別と偏見にさらされることなどあってはなりません。私は統一協会を許しがたいと考えていますが、それは統一協会が一人ひとりの信徒やその家族の思いを踏みにじってきたからです。私が日夜惜しまず相談に携わっているのは、彼らが異端で私が正統だからではなく、彼らの悪に対して正義を振りかざしたいからではなく、ただ彼らの悲しみと苦しみに出会ってしまったからです。皆さんもどうか「私たちの教会は統一協会と関係ありません」などと言わないでください。救われる日を彼らも待っているからです。

 統一協会は、キリストによる啓示の完成・キリストの神性・十字架による贖いを否定する教義を持っていますから、キリスト教ではありません。聖書の権威を利用している他宗教であり「異端」です。けれども、「正統と異端」の問題は教会の中だけの論点であり、教義的には正統に属する教会であっても信徒の虐待や財産の収奪をしているカルト化した教会が多数あります。木はその果実によって判断されるのです。「私の属する教会は異端ではないから安全だ、大丈夫だ」などとは決して考えず、自己点検をしてください。また、最近の被害相談では、スピリチュアル系や自己啓発系のものがとても多いのです。それが現代に生きる人間のニーズなのでしょう。それに対して、教会は何を語っているのかということも問うべきです。正しい福音理解・聖書解釈であっても、人の心に届いていない言葉は自己満足に過ぎません。統一協会の問題を通して教会は、自らのあり方を問いただされているのではないでしょうか。

(とよだ・みちのぶ)

【相談窓口一覧】

■全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)
 reikan@mx7.mesh.ne.jp Tel 070-8975-3553(火)/070-8993-6734(木)午前11時~午後4時

■日本基督教団
 cult@uccj.org Tel 03-3207-8794(月~金)午後1時~午後4時

■統一協会被害者家族の会
 http://e-kazoku.sakura.ne.jp Tel 080-5079-5808(水)/080-5059-5808(金)午後1時~午後4時

■宗教2世ホットライン
 https://www.niseihotline.com/

■子ども人権110番
 Tel 0120-007-110(月~金)午前8時半~午後5時15分

■24時間子供SOSダイヤル
 Tel 0120-0-78310(24時間)

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