賀川豊彦記念松沢資料館 開館40周年 時代反映し展示も刷新 2022年10月21日

 1982年に開館した賀川豊彦記念松沢資料館(東京都世田谷区)が今年10月で開館40周年を迎えることを記念し、10月1日、同館内で関係者を招いて式典が行われた。学校法人雲柱社理事長の今関公雄氏の司式、説教による礼拝の後、理事長の石井マヤコ氏、館長の黒川知文氏によるあいさつに続き、来賓として日本基督教団松沢教会牧師の北紀吉氏、中ノ郷信用組合理事長の吉川洋之氏、鳴門賀川記念館常務理事の藤田進氏、日本生活協同組合連合会渉外広報本部長の松本圭司氏が祝辞を述べた。終了後には、ゴスペル亭パウロ氏による福音落語「賀川豊彦・ハル物語」が披露された=写真上

 館内展示も時代を反映し、大幅にリニューアル。同館ではSDGsなど、現代社会の課題に示唆を与える賀川豊彦像を改めて提示しようと、今後もさまざまな企画を用意している。

館内入口のパネルには賀川の多岐にわたる事業を網羅

史的検証のため「賀川問題」にも言及
阿部志郎氏もビデオメッセージ

 記念式内では、2009年の賀川豊彦献身100年記念事業で実行委員長を務めた阿部志郎氏(横須賀基督教社会館会長)もビデオメッセージを寄せた。

 同氏は、賀川豊彦を「生涯、祈りつつ行動するという姿勢を貫いた人」と評し、「世界のカガワ」として知られるが「出会った人、一人ひとりを祈りに覚えていた」として、ある友人の逸話を紹介。賀川の講演会に行ったペンシルベニア州の友人が1年後に再会した時、名前を覚えていてくれたことに感銘を受けて、町長になってからもその姿勢に学び、行き交う人々に声がけをしているという。

 賀川は「時代の子」として批判も受けたが、人間像全体を見る必要があると訴え、それを知るための松沢資料館の存在意義について強調し、「『古人の跡を求めず古人の求めたるところを求めよ』という先人の言葉に従い、資料館を中心に賀川の求めたところを求めていきたい」と結んだ。

 リニューアルされた館内には、新たに「賀川問題とは?」と題するパネルも設置され、解説には「賀川を語るうえで、負の要因として避けられがちでした。また賀川豊彦を擁護するあまり、その事実を認めない、あるいは問題を認識できない傾向さえみられました。しかし、21世紀の現代においいては人権や戦争に関する厳しい史的検証は避けられません。……時代的な制約があるとは言え、賀川豊彦の問題について真摯に向き合い、過ちがあればそれを認め正してゆく姿勢が、今日の私たちに求められていると考えます」と記されている。

 紹介されているのは、「被差別部落に対する誤った認識 『賀川豊彦全集』問題」「戦争中の国策への協力(満州基督教村、対外放送)」「優性思想と弱者の権利」の3点。『賀川豊彦全集』をめぐっては、『貧民心理の研究』で「被差別部落の人々への差別的表現に加え、賀川は被差別部落の人々を人種起源説で説明」しようとしたこと、賀川の死後、全集がキリスト新聞社から刊行された際、同書の差別表現および人種起源説がそのまま再掲されたことに触れ、「版元と関係者の人権意識に欠けた対応であり、真摯に反省すべきことと受け止めねばならないと考えます」と明示。

 「戦争中の国策への協力」については、太平洋戦争が始まるころ、賀川が初代委員長を務めた「満州基督教村事業」で、キリスト教徒を中国大陸へ移民させたものの、終戦と共に満州開拓が崩壊し、「62世帯、205人のキリスト教徒移民たちは全財産をつぎ込みながらも、ほうほうのていで帰国を余儀なくされ」「意図せずに加害性まで負わされ」たこと、また太平洋戦争末期、賀川が「米国を非難して国威発揚するラジオ放送を行っ」たという史実を紹介している。

【松沢資料館ナイト・ミュージアム】

 同館では入館時間を延長する「松沢資料館ナイト・ミュージアム」を開催。秋の夜長、仕事帰りに、普段とは違った夜の松沢資料館を堪能できる。新たに設置された「賀川豊彦の筆づかい?直筆書画の趣とその愉悦」などの屋外展示もライトアップされる。

■開催日:10月21日(金)、11月4日(金)、11月18日(金)
■入場時間:午後7時閉館(入場は6時半まで)
■入館料:大人300円、小中高生200円、シニア・障がい者200円、団体割20名より

【松沢資料館のあゆみ】

1982年 松沢資料館開館式
  83年 松沢幼稚園と福祉法人事務所が開設
  88年 賀川豊彦・ハル生誕100年記念事業
2001年 杉浦秀典氏が学芸員に着任
  02年 開館20周年記念事業
  04年 賀川純基氏(豊彦の長男)召天
  06年 特別展「満州基督教開拓村と賀川豊彦」
  09年 賀川豊彦献身100年記念事業
  10年 賀川豊彦没後50年記念事業
  12年 公益財団法人賀川事業団雲柱社に認可
  17年 第1回「賀川豊彦賞」授賞式
  20年 新理事長に石井マヤコ氏、新館長に黒川知文氏
  22年 開館40周年記念式典

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