関東大震災100周年を前にNCCが朝鮮人虐殺に関する要請 2022年11月28日

 来年9月に関東大震災100周年を迎えるにあたり、日本キリスト教協議会(NCC)の金性済総幹事、飯塚拓也東アジアの和解と平和委員会委員長、星出卓也靖国問題委員会委員長、李明生在日外国人の人権委員会委員長は連名で11月24日、「関東大震災朝鮮人虐殺に関する要請文」を岸田文雄首相宛に提出した。

 要請文では、「あの震災を契機に、震災とは別に根拠なき流言蜚語と、国家政策によって当時東京をはじめ関東地方に在住していた六千人以上の朝鮮人(また多くの中国人も含め)が軍隊と警察、そして自警団の虐殺行為によって命を落としていった歴史的事実を、日本はこの世界において人権と平和を尊重する法治国家として決して隠蔽してはならず、その国家責任を明らかにしなければならない」と強調。三つの根拠により、虐殺に重大な国家責任があることを示し、国家責任としての真相究明、謝罪、犠牲者遺族への補償、歴史教育における言及をめぐり、内閣と国会が誠意ある決議と行動を推し進めていくように求めた。

 要請文の全文は以下の通り。


関東大震災朝鮮人虐殺に関する要請文

内閣総理大臣
岸田文雄 様

 人権と平和を謳う日本国憲法の下に国家行政の最高責任者であられる岸田首相に心から以下のことを要請いたします。

 来年2023年9月は関東大震災100周年となります。あの震災において関東地方で10万人以上の人々が命を落としたことをわたしたちは忘れることができません。しかし、同時に、あの震災を契機に、震災とは別に根拠なき流言蜚語と、国家政策によって当時東京をはじめ関東地方に在住していた六千人以上の朝鮮人(また多くの中国人も含め)が軍隊と警察、そして自警団の虐殺行為によって命を落としていった歴史的事実を、日本はこの世界において人権と平和を尊重する法治国家として決して隠蔽してはならず、その国家責任を明らかにしなければならないのです。

 あの虐殺に重大な国家責任があることを示す三つの根拠を上げます。ひとつは、「東京市学務課編纂『東京市立小学校児童震災記念文集』1924年」に、当時の尋常小学校児童が9月1日夕刻に避難先の場所に警官が来た時のことを、「フテイセンジンガセメテクルカラトオマワリサンガイヒニキマシタ」と証言(琴秉洞編 『関東大震災朝鮮人虐殺問題関係史料I 朝鮮人虐殺関連児童史料』緑蔭書房 1989年 299~300頁)しています。“不逞鮮人の暴徒化”という流言蜚語に官憲の言動による裏付けを得た民衆は自警団を組織し始め、朝鮮人探しと殺害行動を始めることになりました。そのような虐殺行動をさらに拡大させることになった二つの行政的原因があります。その一つは、9月2日に内務省(水野錬太郎内相)が、根拠もない〝不逞鮮人暴動〟を理由に戒厳令を発令し施行したことです。そしてもう一つは、内務省が“不逞鮮人暴動”に対処することを通達する電文を9月3日朝に全国の地方長官に船橋の海軍送信所から発信したことです。この二つの行政措置によって朝鮮人虐殺は、軍隊と警察の殺害行為のみならず、自警団という民間組織によって〝天下晴れての人殺し〟という恐るべき惨状に至らしめることになったのです。

 日本政府は、その後、在日朝鮮人と労働組合による追悼、真相究明抗議運動を徹底的に弾圧していったことが記録に残っています。そして、戦前のみならず、戦後77年が過ぎた今日に至っても、日本政府は、この消しがたい歴史的事実を隠蔽し、その国家責任を回避してきました。果たして、日本政府は、このような歴然とした朝鮮人虐殺の歴史事実に対する国家責任を、その100周年に至るも犠牲者の遺族と世界に対して隠し続けるつもりなのでしょうか。そのような目論見と姿勢と、人権と平和を謳う憲法を掲げ、またウクライナ侵攻における民衆に対する蛮行を国連と共に非難する日本政府の立場とはいったいどのように整合しえるのでしょうか。関東大震災100周年を来年9月に迎えるにあたり、世界の良心と人道を重視するメディアと世論はこの問題にこれからさらに注目を増していくことでしょう。

 来年9月に100周年を迎える前に、国家責任としての真相究明、謝罪、犠牲者遺族への補償、そして歴史教育における言及をめぐり、内閣と国会が誠意ある決議と行動を推し進めていくように英断され対処されますことを、岸田首相に心から要請いたします。

2022年11月24日

日本キリスト教協議会(NCC)
NCC総幹事 金性済
NCC東アジアの和解と平和委員会委員長 飯塚拓也
NCC靖国問題委員会委員長 星出卓也
NCC在日外国人の人権委員会委員長 李明生

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