「被害者救済新法」成立で全国弁連が会見 「防止にも救済にも役に立たず」 2022年12月11日

 旧・統一協会の被害者救済を目的とする新法「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」が成立したことを受け、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が12月10日、声明を発表し、都内で会見を開いた。

 声明は新法の問題点について、未成年者である二世の権利行使が極めて困難な制度のため「家族被害の救済が図られないこと」、配慮義務(第3条)の項目に「十分に」との文言が加えられたものの「禁止行為等の範囲、適用対象が狭いこと」、「個人への寄付が対象から外れていること」、「こどもが抱える問題」の解決に向け、支援体制を構築するとの附帯決議がなされたが、二世問題は「こども」だけに限定されず、成人した二世もさまざまな肉体的・精神的な苦痛や葛藤、生活苦を抱えていることなどを指摘した。

 その上で「法案成立後、できるだけ速やかに、……協議会ないし検討会を設置」し、「新たな実効性のある法制度」が創設されることを求め、統一協会の問題の本質が「正体を隠した違法な伝道活動による信教の自由への侵害という点にある」ことから、「同様の被害が繰り返されることのないよう、かかる伝道活動に対する規制を併せて行うべき」と強調した。

 山口広弁護士は「ないよりはマシ」「被害防止にも被害者救済にも、ほとんど役に立たない」と厳しい評価を下し、不十分な内容に留まった背景については、「明日は我が身」と懸念を示す(与党に近い)宗教団体への忖度があった可能性にも触れ、「新法は(違法な伝道活動をしていない)既成宗教には無関係。自信をもって宗教活動をすればいい。むしろ宗教に限らず、広くはびこっている健康食品、ヨガや整体などで偽装した、カルト的な個人・団体が自粛せざるを得ないような社会環境ができれば、宗教に対する信用は高まるはず。お寺も教会も若者の宗教的ニーズに応えられていない」と断じた。

 また阿部克臣弁護士は、「ヒアリングを繰り返してきた野党に対し、政府与党が被害者の声を聞いた時間、量は圧倒的に少ない。認識の齟齬(そご)を埋め合わせ、この法律を活かしていく上でも、被害者の声を継続的に聞いていく場を設けてほしい」と訴えた。

 全国弁連の声明は「宗教二世」の表記について「いわゆる『二世』」と修正。「宗教団体」としていた箇所も、財産上の深刻な被害や信者の人権侵害を伴う「カルト的団体」と限定し、既成宗教(仏教、キリスト教、イスラム教など)の「二世」問題については別の議論が必要との認識を示した。

 会見には「二世」の当事者として、元エホバの証人三世の夏野ななさんも出席。新法をめぐる評価については「被害実態が拾い切れていない。高額献金を焦点にしたもので、『二世』問題については議論の入り口にすら立てていない」との見解を示した。エホバの証人側は元二世らの訴えに対し、「教えの強制、イベントへの参加の禁止はしていない」と事実を認めておらず、再発防止に努めるつもりもないという。夏野さんは12月7日、統一協会や「エホバの証人」の信者を親に持つ二世10人と弁護士1人で当事者団体「宗教2世問題ネットワーク」を立ち上げ、宗教二世を巡る問題に関し、政府との対話、メディアへの発信などの活動を進めていくとしている。

 全国弁連の声明全文は以下の通り。


「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の成立に対する声明

全国霊感商法対策弁護士連絡会

1  本日、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」(以下「新法」という。)が成立した。

 当会はこれまで、本年11月19日、29日と同法案の不足点、問題点を指摘する声明を発出し、これに対する若干の修正は見られたものの、重大な不足点については最後まで解消されなかった。

2 新法の問題点の内、重要なものは以下の通りである。

(1)家族被害の救済が図られないこと

 新法では、家族被害の救済について、債権者代位権行使の特例(第10条)により行うものとされているが、この制度は要件が狭く、取消の範囲も狭く、家族被害の救済にはならない。特に未成年者である二世が権利行使するのが極めて困難な制度になっており、この点は衆議院の付帯決議でも「親権者が寄附をしている場合には未成年の子が債権者代位権を行使することは困難である」とされているところである。

 消費者庁の霊感商法検討会でも成年後見制度の改正を含めた財産管理制度を設けるべきとの意見が出されているように、家族被害を抜本的に救済し、かつ、被害者本人の保護を図っていくためには、家庭裁判所の監督の下で第三者が本人に代わって寄附を取り消し管理する制度が必要である。このように、家庭裁判所の監督の下で第三者が権利行使をする制度であれば、家族間の対立が生じにくく、家族問題で苦しんでいる二世にとっても利用しやすいものと考えられる。

(2)行政処分による救済可能性が不明なままであること

 新法で現実的に家族被害の救済を図りうるものとしては、行政処分(勧告·命令)しかないが、その内容について新法は「遵守すべき事項を示して、これに従うべき旨」(第6条1項)、「当該行為の停止その他の措置をとるべき旨」(第7条2項)を勧告ないし命令できるとしているに留まり、当該法人へ寄附の返金を求めるところまで含まれるのかが明らかでない。

 この点は所轄庁における今後の運用において、特に深刻な被害の事案については積極的に寄附の返還まで踏み込んでいくことを強く要望したい。

(3)禁止行為等の範囲、適用対象が狭いこと

 新法では、禁止行為や取消権等の対象となる行為の範囲が狭すぎ、統一教会被害について言えば被害救済にほとんど役立たないものとなってしまった。

 特に、寄附の勧誘に関する禁止行為(第4条)の「寄附の勧誘に際し」「困惑」「必要不可欠」といった文言は、裁判において禁止行為の範囲が限定される可能性が高く、統一教会の寄附勧誘手法を捕捉できないため、当会は繰り返しこれらの文言の修正や削除を求めてきたが、受け入れられないままとなった。

 ただし、こうした不足点については、岸田首相をはじめ、政府答弁でかなり広い解釈となる旨が明らかにされた。同法の逐条解説においてはこれらの答弁を基に、少しでも被害防止·救済に有用な解釈を明記して頂きたい。

 配慮義務(第3条)については最後の修正で「十分に」との文言が入り、勧告·公表に結びつけられたものの、被害防止·救済の実効性という観点からは不十分なものに留まったと言わざるを得ない。この点は改めて議論を重ね、被害実態に即した具体的な規定にした上で、見直し(附則第5条)の際には禁止行為に改められるべきである。

(4)個人への寄付が対象から外れていること

 新法の適用対象は法人や代表者若しくは管理者の定めのある社団·財団に対する寄附に限られたままとなった。統一教会は、今後解散命令により法人格を失ったとしても、その幹部信者が個人として、あるいは代表者等を定めないまま宗教団体として違法な寄附勧誘を継続するおそれが高いが、新法ではそうした事態に対処できない。遅くとも見直しの際には対象範囲を個人にまで広げるべきである。

(5)いわゆる「二世」の支援に関して

 新法では家族被害がほとんど救済されないことは前記の通りである

 ただし、衆議院の附帯決議では、二世問題に関し、「こどもが抱える問題」等の解決に向け、法的支援·精神的支援·児童虐待や生活困窮問題の解決に向けた支援などの支援体制を構築する、とされた。

 こうした支援体制の構築には当会としても異論は無い。

 二世問題の本質は、こどもの信教の自由が、父母及び父母を支配するカルト的団体によって侵害されている点にある。父母は、こどもが信教の自由を行使する際には「発達しつつある能力に適合する方法で指示を与える義務」(児童の権利条約第14条2項)を負っている。自らの信仰をこどもに無条件に継承させることは認められていない二世問題に対して支援体制を構築する際にはこの点を明確にしておく必要がある。

 現在、こども政策の推進に係る有識者会議において検討が進められている「こども大綱」では、子ども施策に関する重要事項として「二世問題」を取り上げ、問題解決に向けた施策を講じられたい。

 また、二世問題はカルト宗教に限った問題ではなく、特異な思想、信条、価値観に支配された親を持つこどもも同じ問題を抱えている。

 さらに、二世問題は「こども」だけが抱える問題ではなく、成人した二世でも、かつて受けた虐待などにより、様々な肉体的·精神的な苦痛や葛藤、生活苦を抱えている方も多い。そうした二世への精神的·経済的な支援体制も併せて構築いただきたい。

3 今後行われるべきことについて

 以上のとおり、新法は被害防止という観点からも被害者救済という観点からも、余りに不十分なものとなった。

 この間、特に政府·与党において、被害者の生の声を聞いた時間·量は圧倒的に少なかったと言わざるを得ない。

 前記家族被害、二世問題の様々な被害実態に対処するためにも、法案成立後、できるだけ速やかに、行政府である政府内と立法府である国会内の双方に、協議会ないし検討会を設置した上で、こうした被害者や関係者の声を聞き、それを適切に分析して、法的支援に留まらず様々な角度からの支援や新たな実効性のある法制度の創設が行われるよう、速やかに対処すべきである。

 最後に、統一教会の問題については、その本質が、正体を隠した違法な伝道活動による信教の自由への侵害という点にあることを改めて検証した上で、同様の被害が繰り返されることのないよう、かかる伝道活動に対する規制を併せて行うべきである。

以上

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