G7広島サミットに向け 各首脳宛てに日米4教区が共同宣言文 2023年5月19日

 5月19日から21日まで、広島でG7サミット(主要国首脳会議)が開かれるのに合わせて、日米のカトリック4教区は5月15日、核保有国を含む参加7カ国の首脳宛てに核軍縮と核兵器廃絶に向けた具体的な合意形成が図られることを願う共同宣言文を発表した。ともにカトリックの霊的指導者として名を連ねたのは、米国で核開発製造が行われる研究所がある地域のサンタフェ大司教、米国で最も戦略核兵器を配備する地域のシアトル大司教、被爆地を含む地域を管轄する広島=写真、長崎の大司教。

 宣言文は、岸田首相がサミットの開催地として被爆地の広島市を選んだことを高く評価し、「核兵器による威嚇やその使用を絶対に拒否するという確固たる決意を示す」またとない機会となるとの言葉に賛意を示したうえで、「2022年11月にG20が合意したように、核兵器の使用や使用の威嚇は『許されない』ことを強調すること」「核兵器のない未来の世界を作るという目標を再確認すること」「新たな軍拡競争を防止し、核兵器の使用を警戒し、核軍縮を進めるための具体的な措置を発表し、約束すること」などを求めた。

 さらに、「今こそ、言葉を実際の行動に移す時」として、「G7サミットで世界の指導者たちが、核兵器国と非核兵器国の両方と協力し、核戦争の恐怖に苦しむ国や都市が二度とないようにする準備ができており、その意思があり、またその能力があることを示すこと」を強く求めた。

 サンタフェのウェスター大司教、シアトルのエチエンヌ大司教は8月4日から7日に広島、8月7日から9日に長崎を訪問し、平和行事に参加する予定。 

 カトリック広島教区では、5月13日から31日までを「世界の平和とシノドスのための祈りの期間」として、霊的な支援を呼び掛けている。

 共同宣言文の全文は以下の通り。


米国大統領  ジョー・バイデン
日本国内閣総理大臣  岸田文雄
フランス大統領  エマニュエル・マクロン
イタリア首相 ジョルジャ・メローニ
ドイツ首相 オラフ・ショルツ
英国首相  リシ・スナク
カナダ首相 ジャスティン・トルドー

G7首脳の皆様へ

 私たちカトリック教会の霊的指導者は、来る主要7カ国首脳会議(G7)を機会に、地球規模の検証可能な核軍縮に向けた具体的な措置を講じることを強く求めます。

 岸田文雄首相が、核戦争の最初の被災地である広島市をサミットの開催地に選んだことを私たちは高く評価します。それだけで強力なメッセージとなるでしょう。私たちは、核戦争の長期にわたる惨禍を認識するための一歩として、G7首脳と広島・長崎の原爆被爆者との会談を熱烈に歓迎します。

 私たちは、米国で核兵器に最も資金を費やしている教区であるサンタフェ、米国で最も戦略核兵器を配備している教区であるシアトル、そして世界で唯一の戦争被爆教区である広島と長崎のカトリックの霊的指導者として、摂理によって突き動かされて声を上げます。

 岸田首相は、今回のサミットは、「核兵器のない世界の実現に向けた強いメッセージを発信するために議論を深め」、また、「核兵器による威嚇やその使用を絶対に拒否するという確固たる決意を示す」またとない機会となると述べられました。

 私たちはこの意見に強く同意します。私たちは、サミットを通じて、G7首脳である皆様が、核軍縮・管理の重要性に国際的な関心を向け、核不拡散の努力に対する世界的なコミットメントを示すことを強く求めます。ウクライナ戦争を核軍縮の実質的な進展のための圧倒的な障害とみなすのではなく、核軍縮の絶対的な必要性を明確に示すものとしてとらえます。

 具体的には、G7首脳に以下のことを要請します。

・広島と長崎の原爆投下が被爆者に与えた途方もなく大きく、また、長期的な苦痛を認識すること。

・世界中で行われた核実験がその風下の住民たちに与えた途方もなく大きく、また、長期的な苦痛を認識すること。

・核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない戦争であることを繰り返し強調し、また、2022年11月にG20が合意したように、核兵器の使用や使用の威嚇は「許されない」ことを強調すること。

・核兵器のない未来の世界を作るという目標を再確認すること。

・新たな軍拡競争を防止し、核兵器の使用を警戒し、核軍縮を進めるための具体的な措置を発表し、約束すること。

・新戦略兵器削減条約の完全実施と後続条約の交渉のために、米国とロシアの間で真剣な協議を再開すべきであることを改めて表明すること。

・最後に、今から半世紀以上前、1970年の核不拡散条約で約束された、核軍縮につながる真剣な多国間交渉に入るという国際的な使命を尊重すること。

 長年にわたり、世界の指導者たちは、核兵器の脅威を取り除き、新たな核軍拡競争を防止し、文明を終わらせる可能性のある核戦争という究極の破局を回避する必要性について語ってきました。ミハイル・ゴルバチョフ、ロナルド・レーガン、そして私たちの教皇フランシスコなど、多くの著名な指導者たちによって、このような呼びかけがなされてきました。しかし、今こそ、言葉を実際の行動に移す時です。

 複数の核保有国が存在し、新しいサイバー兵器や極超音速兵器、人工知能が出現している今日、新たな核軍拡競争は最初の軍拡競争よりも危険であると私たちは考えています。ロバート・マクナマラ米国防長官は、人類がキューバ危機を乗り越えたのは運が良かったからにすぎないと断言しました。人類の継続的な生存を保証するためには、運だけでは十分ではありません。

 私たちは、G7サミットで世界の指導者たちが、核兵器国と非核兵器国の両方と協力し、核戦争の恐怖に苦しむ国や都市が二度とないようにする準備ができており、その意思があり、またその能力があることを示すことを強く求めます。

 地球上の恒久的な平和の願いとともに。

2023年5月15日

サンタフェ大司教 ジョン・C・ウェスター
シアトル大司教 ポール・エチエンヌ
長崎大司教 ペトロ中村倫明
広島司教 アレキシオ白浜満

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