【書評】 『イブン・タイミーヤ政治論集』 イブン・タイミーヤ

 テロや紛争などにより、イスラーム過激派への関心が高まっている。だがそもそもイスラーム「過激」派という呼称において、我々はイスラームの何を理解していると言えるだろうか。

 キリスト教に膨大な神学の系譜があるように、当然のことながら、イスラームにも神学があり、また法学がある。というのも、本来イスラームには政教分離という欧米で培われた概念が存在しないからである。ムスリムにおいて、アッラーに信仰で応えることは、カリフによる統治において実際に政治的な営みを行う/従うことと一つであった。

 本書は、ハンバル派の法学者イブン・タイミーヤ(1328年没)による政治論のうち代表的なものを、彼を長年研究してきた著者が翻訳・解説したものである。巻末にある「何故、今、イブン・タイミーヤなのか?」は必読。そもそも法や政治の前提とされる「国家」という概念すら、イスラーム世界では通用しないものであることがわかる。

 キリスト教から派生していった世俗政治とイスラームから生まれた歴史的な政治形態との、巨大な文化衝突に直面する現代において、その背景を理解するためにイスラーム神学や法学が翻訳され、広く読まれる必要があるだろう。

【本体3,800円+税】
【作品社】978-4-8618-2674-0

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